鏡に映った私。


いつもと、何も変わらない。













ハジメマシテ、













鏡に向かって、私が笑顔になれば、鏡の中の彼女も笑顔になる。

鏡に向かって、私が眉間に皺を寄せれば、鏡の中の彼女も難しい顔をする。

鏡に向かって、私が怒った顔をすれば、鏡の中の彼女もふくれっ面をする。






ほら。

いつもと変わらない。












鏡をジーっと見つめていると、後ろの方で何やら物音。


貴方が起きたのかしら?

鏡から視線を後ろへと移した。


そこには、目をこすりながら歩いてくる貴方の姿。




「んー・・・おはよ。」

「めずらしいわね、こんなに早く起きるなんて。」





寝ぼけ眼の貴方に、優しく答える。


「なんでそんなに鏡にかじりついてるの?何か面白い物でも映ってる?」


鏡なんだから、面白いもなにも、私しか映ってないに決まってるでしょうが!!

そう、内心ツッコミたいところだったが、寝起きの貴方の姿がかわいかったから止めとくわ。





チチチと、人差し指を横に振り、私は貴方を見た。

「分かってないわねぇ。女の子は、いつでも鏡を見てチェックするものなの!!」




女の子は、大変なのよ?

私が言った事を理解しようと、貴方は首をかしげる。




でも、寝起きのため、頭が回っているのか、いないのか。

「ふーん・・・・。よく分かんない。」

数秒考えた後、貴方の口からは、そんな曖昧な答えが返ってきた。





「まぁ、それはいいとして、とりあえず顔洗ってきたらどう?」

「ん。そうする。」

ふぁぁ。と、ひとつ大きな欠伸をして、貴方は洗面所へと向かった。









貴方の姿が見えなくなった後、また私は鏡の中の彼女を見つめる。



いくら見ても

やっぱり、いつもと何にも変わらない。







「ねぇ。アナタもそう思わない?」

鏡の中の彼女にそう尋ねたが、彼女も私と同じように首をかしげるばかりで、何も言ってくれなかった。



いつもと同じ風景。

いつもと変わらない毎日。


・・・・なんだか、ちょっとガッカリだわ。












「あー、サッパリした。」


ため息を漏らしている私の隣に、顔を洗ってきた貴方がやってきた。

私の様子が、さっきと違うのを気が付いたみたい。






「どうしたの?ため息なんかついて。」

「だって、あまりにもいつもと変わらないんだもの。」


口を尖らせて私がいうと、貴方は微笑んで言った。


「変わったじゃないか。」





そうかしら??

何が一体変わったの?






貴方は、私の左手の薬指にある、小さな金属に口づけた。

「ほら、ね?」





ああ、そうだった。

私は、新しい道を歩み出したんだ。





「私は、今日から生まれ変わったんだわ。」

鏡の中の彼女に、私は笑顔で喋りかける。



「はじめまして。これからもよろしくね。」

そう笑顔で言った後、もう一度、私は鏡の中の彼女に ふわりと笑いかけた。

「花沢つくしさん。」





そんな私に応えるように、左手の薬指にある指輪が、キラリと光った。












05/3/24


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結婚した次の日とかって、「私、結婚したのね!」とか実感あるのかなぁ、とか思って書いてみました。

結婚経験のある方、どうでしょう??やっぱり実感のわかないものなんですかね〜?


まだまだオコチャマな管理人には、「結婚」の二文字は、摩訶不思議の世界ですー。