意味の解らない文字ばかりが並び


あれこれと理屈を捏ねる



ああ

なんて複雑なのかしら
















方程式
















「あぁ、もう!!何よコレ!?」


悲鳴にも似た声を上げ、机の上に突っ伏す。

ひんやりとした机の感触が、少し気持ちがいい。





「うう・・・・・。」

なんで・・・・なんでこんなにも難しいの、数学って。

Xが何?√が何?

・・・・んなこと、知らないわよー!!!





ポーイ、と右手に握っていたシャーペンをそのへんに投げつける。

壁に当たったシャーペンは、小さく音を立てて落ちた。






「駄目でしょ、牧野。この課題、明日までに提出なんだから。」

「そうだけど・・・・すごく難しくて。」





今日、学校で出された数学の難問の課題。

数学の苦手な私には、到底明日までに説く事何て出来ないような問題なわけで...。


課題とにらめっこしながら、眉間に皺を寄せる。






「ほら、俺がちゃんと教えてあげるから。」

そう言って、貴方は私の頭を優しく撫でる。


「うん・・・・。」

笑顔でそんな事言われたら・・・・・やるっきゃない!!


投げ出したシャーペンをもう一度握り直し、意気込んで机へと向かう。

「いい?ここはね、こうして・・・・。」

「うん、うん。」



















「おぉ!!なるほど。さすが、花沢類!」

「どう?解った??」

「うん。ありがとう。」







花沢類ってすごいなぁ。

いつもボーっとしているようなカンジなのに...。

ちゃんと勉強も運動も何でも出来るんだもの。

・・・・なんだか、近くにいるはずなのに、遠い存在のように感じる。





「・・・どうしたの?ため息なんてついて。」

「え!?・・・・いや、なんかさ、花沢類って何でも持っている人なんだなぁ、って思って。」


私なんか、なんの取り柄もないもの。


「何だか、遠い存在のような気がして...。」

「牧野・・・・・」








「・・・・・いたっ!!!」


急に花沢類が、私の頬を抓った。


「何すんのよ〜!!私のホッペはデリケートなのよ?デリケート!!」




私は抓られた頬を軽くさすった。

ププッ。本当にデリケートなの??と、花沢類は笑った。




「俺は、何も持っていないよ。それに、どうしたの。らしくないじゃん。」


微笑みながら、抓った私の頬をそっと撫でた。





「牧野は、笑っていてよ。落ち込んだ顔よりも絶対に似合ってるから。」

「・・・・うん。そうだね。」


抓られた頬は少し痛かったけど、おかげで目が覚めた。

そうだよね。

私らしくない。











「はい。それじゃ、次いってみようか。」

「・・・へっ!?何が?」

「か・だ・い。」


にこりと微笑み、机の上の問題を指差す。


「もう解き方は、さっきので解ったでしょ?次の問題は自分ひとりで解いて。」








ああ、神様。

さっきの天使の微笑みが、悪魔の微笑みのように見えるのは気のせいでしょうか・・・・。






「そ、そんなぁ〜。」

「はい。早く、解いてください。」


貴方は、トントンと問題をつつく。




「いい?これは牧野のためにやってるんだからね。」

「はい。わかってます。」

「よろしい。じゃぁ、制限時間10分。」

「10分!?せ、せめて15分に・・・。」

「駄目。はい、よーいスタート。」






メソメソしながらも、何とか問題に取りかかる私。


いくら私の為だとはいえ、ちょっと厳しすぎるんじゃないかしら?

もう少し優しく教えてくれればいいのに・・・・。





「・・・何かやる気無いな。」

ノロノロとシャーペンを動かす私をチラリと見ながら貴方は言った。

「そんなこと無いです!!そんなこと無いです!!」

「ふ〜ん。・・・わかった。制限時間内にちゃんと解けたら、俺からご褒美をあげましょう。」

「え!?なになに!?」





課題にかじりついていた顔を上げて、ワクワクしながら尋ねた。

「はい、30秒経過。」

「ひぃ〜!!」


















声にならない悲鳴をあげながらも、何とか時間内に課題を解く事が出来た。


「で・・出来た。」

やっとの事で解けた課題を花沢類に見せる。





渡した課題を見ながら、類の顔が笑顔になった。

えっ!?もしかして正解だったり...



「はい。不正解。」



類は笑顔のまま、課題を私に渡した。

今の笑顔は何だったのよ・・・・!?


「何でぇ・・・。」

力尽きたように、机へと倒れた。






うう・・・・。

結構、頑張ったのにな・・・。






「不正解だから、ご褒美は無しかな。でも、まぁ・・・・・」

がっくりと落ち込んでいる私の腕を引き寄せた。


「頑張ったから、よしとするか。」

一瞬だけど、触れた私の唇はいつまでも熱を帯びていた。









あぁ、神様。


やっぱり彼は、悪魔なんかじゃなくて、天使でした。



でも、そんな貴方は


方程式よりも複雑。



でも、いつか


その解き方を見つけ出してみせるわ。













「はい。じゃぁ、次の問題。」


神様。

やっぱり、悪魔かも知れません。









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こんにちは。ちとベタなネタで退屈した方もいらっしゃるかも・・・。


web拍手、第一弾の小説です。ちょっとドキドキ。

初めてweb拍手を設置してみたのですが、やはり素晴らしいですね、web拍手。

メッセージはやっぱり嬉しいものですね。「読みました」ということだけでとてつもなく幸福です。