抱きしめる躯は何時になく冷たい。頬も手のひらも、触れられる所すべてが。

「類・・・る、い。」

腕の中で自分を覗き込むその虚ろな瞳は、一体何を映し出しているのか。目の前の自分か、或いは遠い過去か。どちらにせよ、踏み込んではいけないのだ。踏み込む権利も覚悟も無い自分。

「大丈夫だよ。」

何の根拠も無い、ただの気休めの言葉でしかないと分かっていながら、そんな言葉を呟くことしか出来ない自分はなんと情けない。そんな自分に出来ることといえば、少し離れたところで見守り、優しい言葉をかけ、抱きしめることだけ。叶わないのだから仕方がない。期待は破滅を招くと分かっているから。いくら望んだとしても、それはただの幻。

だから、もう、解放して欲しい。この苦しみから、彼女を想う苦痛から、逃れたい。手に入らないことが分かっていながら傍にいるなんて。出来るはずがない。きっと傍に居れば居るほど望んでしまう。

だから、もう。








ああ、なんてことだ。
やはり自分は気づいてしまったのだ。
震える彼女の手が自分の背中のシャツを弱々しく掴んでいることに。

「・・・俺が、傍に居るよ。」
思わず零れる言葉は、ぽつりと。
分かってる。彼女から離れる事なんて出来ない、と。



                     
依存I depend you.



07/4/14

◇ ◇ ◇

傷ついたつくしをどうしても放っておけない類くん。
触れたいのに触れられない。そんなもどかしさと愛しさと。

memoに書いたものに少し手を加えました。