ここからは自己責任の元の閲覧をお願いいたします。

この小説は、つくしが死んでいる設定となっております。

いわゆる、ちょっとした死にネタってやつです。(・・・といっても、かなり緩いですが)

しっかりお考えの上で自己責任の元、閲覧を宜しくお願い致します。




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君を愛しています

いつまでも いつまでも 愛しています






































ヒュゥ  ヒュゥ


窓を打ち付ける風の音で目が覚めた。

ああ。今日もまた一日が始まる。




少し身体が怠かったが、無理矢理起きた。

ボーっとする。

寝起きに意識がふわふわしてしまうのは、昔も今も変わらないようだ。





つくしがこの世を去ってから一体何十年もの月日が流れただろう。

すっかり、顔の皺も増え、身体も思うように動かなくなっていた。



よいしょ、とゆっくりとソファーに座り、何となくテレビをつける。

テレビの中で、天気予報の女の人が笑顔で喋っている。


『今日は、とても冷え込み、今年の初雪が降るでしょう』



雪か。

そうだな。今日は風も強かったし、空気も冷えていたから。


テレビのスイッチを消し、ソファーに座りながら目を閉じてみる。

聞こえてくるのは、風の音だけだった。









今日は、つくしの命日。

もう、治らない病気だって事、知ってた。

それでも、つくしは一生懸命戦った。

最後まで、病気と向き合っていた。





今でも鮮明に蘇る、つくしの笑顔。

どんな時でも笑顔を絶やさなかった。

俺の目の前でこの世から去る時でも...微笑んでいた。




少し目頭が熱くなりいろんな想いが零れそうになったが、なんとかそれを飲み込んだ。

あれから俺は、涙を流す事は無くなった。

流してしまえば、全ての想いが流れてしまいそうで。




だから、俺は泣かない。

何があっても。












俺は、閉じていた目をそっと開け、仏間へと向かった。




「おはよう、つくし。今日は寒いね。」


俺は、仏壇に向かって話しかける。

返事は帰ってこない。


「初雪が降るらしいよ。ほら、つくし雪が好きだろう?」


やっぱり返事は帰ってこない。


「・・・つくし、今日は君の命日だ。そちらでは元気にやってるかい?」


それでも、俺は話し続ける。


「こっちは退屈だよ、つくしが居なくて。」

すごく寂しいよ。




俺は、ゆっくりと立ち上がり、ある部屋へと向かった。












辿り着いた場所は、つくしの部屋のドアの前。




いつからか。

つくしが居なくなってから、近寄らなくなった部屋だった。


部屋に入ってしまったら、つくしとの出来事が本当に思い出になってしまいそうで。

そんな気がして、怖かった。



でも、いつまでもそんな事を言ってはいられない。

自分の気持ちに整理をつけなくては。







ドアのノブに手を掛けると、キシキシと唸った。

きっと、何十年も使われていなかったからだろう。

ゆっくりと、慎重にドアを開ける。











部屋は、あの頃のままだった。

ベッドの上には読みかけの本やぬいぐるみなどが、無動作に置いてあり

今にもつくしが帰ってきそうな、そんな気さえした。





でも、やはり時は残酷にも流れていた。

床や机には、たくさんの埃が積もっていて、つくしが帰ってくる事はない。と語っているようだった。




一歩、部屋に足を踏み入れる。

靴下が白くなるのなんて気にしない。


クローゼットを開けてみる。

つくしの服がたくさん収納されていた。


「あ。この服、あの時に着ていた服だ。」

失いかけていた記憶が蘇る。





本棚の埃の積もった本にも手をのばしてみる。

「この本、よく読んでいたな。」

寝る前に、つくしが毎回読んでいた本だ。






机の方に歩み寄る。

机の上は綺麗に整頓してあって、つくしらしさが感じられた。


順番に引き出しを開けていく。



ひとつ。

ふたつ。

みっつ。・・・・・・・・ん?






おかしいな。

三つ目の引き出しが、開かない。






「あ。」

三つ目の引き出しをよく見てみると、小さな鍵穴があった。

「鍵?」

何処にあるのだろう。







つくしが隠しそうな所。

俺は部屋を見渡す。

・・・・・・!あそこか。



俺の視線の先には、大きなくまのぬいぐるみ。

その大きなくまは、肩からかばんを提げていた。

俺は、くまのかばんの中を覗いてみる。




きらりと銀の鍵が光った。




「あった。」

その小さな鍵を手に取ってみる。

少し黒ずんだ銀の光を放つクローバーの形の鍵だった。


俺は、それを手に持ち、三つ目の引き出しの鍵穴に鍵を差し込む。




カチャリ




小さな音と共に、長い間封印されていた引き出しが開いた。







      数冊のノート







それだけが、ポツンと寂しそうに収まっていた。

ペラペラとノートを捲ってみる。


『○/× 晴れ    今日は....』




どうやら日記のようだ。

知らなかった。

つくしが毎日日記をつけていたなんて。



数冊のノートの内、一番日時が新しいものを手に取ってみる。

すると、ひらりと何かが手の中をすり抜けていった。




「ん?」

拾い上げてみると、それは一通のモノクロの手紙だった。

「手紙・・・・?」

宛先を見てみると、そこには自分の名前があった。

どうやら自分宛てのようだ。






つくしが自分に手紙なんて・・・・一体何だろう。

皺だらけの震える手で、封筒の封を止めてあるシールを剥がす。

そして、手紙を開く。





−−− 類へ

−−− つくしです。元気にしてますかー??



人が決心をして開けたのに、何だよそれは。




−−− 勝手に人の引き出し開けちゃ、ダメでしょ!!

−−− 犯罪よ!犯罪!


・・・・・・・。

犯罪になるのか??




−−− ・・・・なんて、嘘。嘘。

−−− 貴方がこの手紙を見てる頃には、きっと私は貴方の傍にいないでしょうね


あぁ。

結構寂しいもんだよ。


−−− ごめんね

−−− 傍にいてあげられなくて


謝るなよ。

つくしは悪くないんだから。



−−− ねぇ

−−− こんな私だけど、貴方は今でも私の事を愛していてくれてる?


もちろんだよ。

俺には、君しかいないよ。




−−− 私は、いつでも貴方のことを想っているから

−−− どうか忘れないで


「つくし・・・・・」

涙が溢れた。




−−− 大好き

−−− ずっと ずっと 貴方だけを愛してる


溢れる涙は止まらない。


「ごめんよ、つくし。」

今まで君から、逃げてしまって。





どうしても、君の死を受け入れたくなかったんだ。

もっと、早く君と向かい合うべきだった。


長い間待たせてしまって、すまなかった。

もう、大丈夫だから。







一通のモノクロの手紙を抱きしめた後、窓を開け、

つくしのいる空の上の方を見てみる。




白い妖精達が自分の身体に降り注いだ。






「雪・・・・。」




つくし。

君もこの雪を見ているかな。

今年の初雪だってさ。

ほら、つくし雪が好きだろう?







“ありがとう、類”



つくしのいる天から降る雪に混じって、そんな言葉が聞こえたような気がした。











君を愛しています。


いつまでも いつまでも 愛しています。





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これも、一度はやってみたかったネタの一つです。

あんまり死にネタ的なお話しは、書いてる方も辛くなっちゃうので、軽めにしておきました。

でもいつか重ーい死にネタも書いてみたい、と心のどこかで思う私は酷い奴なのかも知れません。笑