あたしのたいせつなたいせつな しろいねこ

どこかあの人と似ていた




サラサラした毛並みだとか

ビー玉のような瞳だとか


いつも私の傍に居てくれたとこだとか














白いともだち
















今日は雨。

それも大粒で重くのしかかるような。



降り注ぐ雨は、止むことを知らないようで。

容赦なく私の身体を打ち付ける。






くしゅん。

思わずくしゃみが零れた。




ぽろり。

思わず涙も零れた。






でも、大丈夫。

今日は雨だもの。

私の涙を隠してくれるわ、きっと。








「・・牧野?」

雨と一緒に降ってきたのは、聞き覚えのある声。



手の甲で涙を拭った。

まぁごもっとも、雨が降っているのだから意味はないのだけれど。



振り向いたのと同時に、視界が少し良くなったことに気付く。

上を見上げると、白いねこが。

いや、違った。

抽象化された一匹の白いねこの模様をした傘が、私を雨から守っていた。




***

これは先月買った物。

ふと立ち寄った店で見つけた。



店の片隅にぽつん、と居たその傘は、何だか懐かしいようで放っておけなくて。

今では、雨の日になるといつも一緒にいる。

***




はい、と彼からその傘を渡された。

ありがと、そう小さくお礼を言い、じっと傘を見つめた。




私、いつの間に傘を地面に落としていたのだろう。



よく見ると、模様であるねこのしっぽの部分が泥を被っていた。

きっと、落とした時に汚したんだ。

帰ったら拭いておこう。










「どうしたの。傘も持たずに。」

彼は、ぼんやりしている私を不安そうに見つめる。




ごめんなさい。心配かけて。

「・・ねこが、死んだの。」

それが悲しくって、辛くって。



だって私、大好きだったの。

だから、失いたくなくて。


消えてしまった、なんて事実。

受け止めたくなかったの。


死んだ、なんて簡単な言葉で、片付けてしまいたくなかった。





「白い白い、私の、ともだちが。」

いつも一緒に居たから。

傍に居ないのが、寂しくて。

もう一度会いたくて、会えなくて。








ぽそりと答えた私を見て、どう思ったのだろうか。

彼は差していた傘を投げだし、そっと私を抱きしめてくれた。

その反動で私の白いねこの傘は、また地面へ真っ逆さま。




雨を防ぐ物が無くなった私達は、ざあざあと雨に打ち付けられる。

雨は、それはそれは冷たくて。








それでも



彼の胸の中で感じる、温もりと。

私の頬に触れるサラサラの彼の髪が。


なんだか、いなくなってしまったともだちのように感じて。





また少し涙を流した。





06/4/2



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プチシリアス?・・・微妙すぎる死にネタ?

飼っていたペットがいなくなってしまうのは、すごく寂しいですよね。

ちなみに現在管理人はわんこを飼っています。


類くんには、つくしちゃんの涙が止まるまで傍に居てあげて欲しいです。

まぁ、きっと彼のことだから、私が心配なんてしなくても大丈夫でしょうけど(笑)