命をふき込まれた 小さなシャボン玉


大きく 丸く 膨らんで

大空へと 遠く 高く飛んでいく



でも それはほんの一瞬の一時のことで

儚く 消えてしまう



まるで 最初から存在しなかったかのように...
































「ほら、見てよ。見てよ。」

つくしに呼ばれ、俺は振り返った。

「ねぇ、キレイでしょう?」



つくしの指さす方には、大空に向かって飛んでいく無数のシャボン玉。


「懐かしくなっちゃって、この前買ってきたんだ。」

そう言って、ふぅ と輪っかに息を吹きかけ、たくさんのシャボン玉を飛ばす。






ふわふわと風に乗って飛んでいくシャボン玉。

太陽の光を浴びて、キラキラと輝いて

その姿は、まるで宝石のよう。



でも、そんなシャボン玉の栄光は一瞬の間だけ。

パチン、と音も無く弾けて、美しい宝石は姿を消してしまう。






「あぁ〜、また消えちゃった。」

つくしは、そう言って、また新しい命を送り込む。


新しい命は大空へと飛んでいった。






「ねぇ。類もやってみる?」

「・・・・うん。」


俺は、つくしから輪っかを受け取った。



ふぅ



俺から、シャボン玉へと命を吹き込む。

無数の命は、大空の彼方へと飛んでいく。





あぁ。

俺も、あのシャボン玉のように飛んでいけたらいいのに。


きっと、気持ちが良いんだろうな。

あんなに空高く飛べるんだから。



俺は、空を飛ぶ事は出来ない。

たとえ、天地がひっくり返ったとしても、飛ぶ事なんて出来ないだろう。







「つくし。」

「なに?」

「なんでシャボン玉は、消えちゃうんだろう?」





ふわふわ

シャボン玉は、ゆっくりと空へと昇っていく。







「きっとシャボン玉だって、大空を飛んで行き続けたいはずなのに。」




パチン


シャボン玉の小さな命が、消えた。






シャボン玉は まるでつくしのよう

近づいて触れてしまえば、消えてしまう


だからといって

遠ざかりすぎてしまえば、何処かへと姿を消してしまう


追いかけようとしても

俺はつくしのように空を飛ぶ事が出来ない





ただ

地上に這い蹲って


つくしの名前を ひたすら

叫んで 叫んで 叫んで



やっと 君が気が付いた頃には やっぱり俺の目の前から姿を消してしまう



あぁ なんて儚い


俺の想いは 君へと届きはしないのだから









「・・・なのに、なんでシャボン玉は...」

「・・・・そうね。確かにそうなのかも知れない。でも・・・・・」


つくしは、さっきのシャボン玉が消えた辺りを見つめる。






「喩え一瞬でも、誰よりも輝く事が出来る。」

確かに。あの一瞬は、シャボン玉よりも輝いているものは無いだろうな。

「私は、シャボン玉みたいに輝く事が出来ないから・・・・」




・・待てよ??つくしが輝く事が出来ないって??


つくし本人は気付いていないのだろうか?

自分自身が、周りにいる誰よりも輝いているという事を。





「シャボン玉が、ちょっと羨ましい。」





俺は、つくしが羨ましいよ。

シャボン玉のように一瞬だけではなく、永遠に輝き続ける事が出来るのだから。




「それに、消えてしまうのなら、私達が命を繋ぎ続けてあげればいいじゃない??」




ちょっと貸して、と俺の手から輪っかを奪う。

つくしは、思いっきり空気を吸い込んだ。





ふぅぅぅぅぅ





消えた仲間達の後を追うように、倍の量のシャボン玉が飛んでいく。





「ね??そう思わない?」

「ああ。」




そうだ。

消えてしまうのなら、何度でも何度でも繰り返せばいい。




「どうして“消えちゃうんだろう”だなんて思ったの??」

「・・・・つくしは、シャボン玉みたいだから。」

「シャボン玉??私が??」

「うん。俺の気が付かないうちに、何処かへと飛んでいってしまいそうだから。」







俺は、ゆっくりとつくしを抱きしめる。





「それで、俺はまた独りぼっちになる。」

どうか、俺を置いていかないで。




「ばかね、類は。」


つくしは、類の額にデコピンをした。


ペシッ

乾いた音が,軽い痛みを通じて、耳に入る。





「類を独りにして、何処かに行くはずがないじゃない。」

ニコリとつくしは微笑んだ。


「それに、私のシャボン玉は強いから大丈夫よ。ちょっとや、そっとじゃ割れないんだから!!」



つくしのそういう所、好きだよ。

自分だけでなく、周りの人間までも輝かしてくれるんだから。



「くっくっくっ。ホントつくしは面白いよな。」

意気込んで言うつくしを見て、思わず吹き出してしまう。





「何よ〜??私は、大真面目よ??」

「ごめん、ごめん。」


プンプンと怒るつくしの頭を優しく撫でた。










つくしがシャボン玉のように、飛んでいってしまうのなら、ひたすら追いかければいい。

消えてしまう前に、俺の腕の中に捕まえて、いつまでも抱きしめていればいい。



たった、それだけじゃないか。






「もしも、つくしが何処かに飛んでいってしまっても、俺は何処までも追いかけるからね。」





まだ少しプンプンと怒っているつくしの頬にキスをした。







俺は、諦めが悪い男だからさ。

いつまでも君を追い続けるよ。


そして

いつか、君に追いついてみせる。



「覚悟しておいてよ。」


「・・・・・上等よ!!」











命をふき込まれた 小さなシャボン玉


大きく 丸く 膨らんで


大空へと 遠く 高く飛んでいく















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キリ6000番を踏んでくださった荒木裕也さまへの贈り物です。

「花沢類の想い」というリクエスト・・・・・シャボン玉で表現してみましたが、いかがでしたでしょうか??

類にとって、つくしという存在はシャボン玉のようなカンジかなぁ?と思いまして...


皆さま、6000HIT有り難うございました。