夏
じりじりと照りつける太陽に
涼しげな風鈴の音
ああ
なんて幸せな空間
・・・ただ一つの問題は
背中にある重みだけ
退屈な王子の仕返し
冷房も入り、ひんやりとした空気の中。
部屋に聞こえるのは、本を捲る音と、私のため息。
「ねぇ、類。何やってるの?」
はぁ。とため息混じりの問いかけ。
「何って、抱きついてるだけー。」
そう言って、私を後から もたれ掛かるように抱きついてくる類。
[『抱きついてるだけー』って・・・・・。
甘えてくれるのは、素直に嬉しい。
でも、そのおかげで私は、集中して本も読めやしない。
「・・・・・本が読めないんですけど。」
はぁ。これで、ため息は何回目だろう。
「だって、つくし本ばっかりで俺、退屈。」
コツンと私の頭の上に、類は自分の頭を乗せて、呟く。
きっと類、今すごい拗ねてるんだろうな。
そんな事を考えながら、湧き出てきた笑いをそっと押し殺す。
「だって、この本とっても面白いんだもの。何ていうか、一度読んだら止まらない!!みたいな?」
「そんな事言ってから、もう1時間も経ってる。」
類は、退屈そうに壁に掛かっていた時計を指差す。
いつの間にか、時計の長い針は、ぐるんと一周していた。
「あら。もうそんな時間?」
「もうそんな時間。」
ほんとは、もっと読んでいたかったけれど。
まぁ、しょうがないわね。
私は、読んでいた本を閉じ、ソファーの上に置いた。
「あー、俺お腹減ったな。」
「そうね。それじゃそろそろご飯にしま....」
そう言いかけた瞬間だった。
世界が一転。
私に見えるのは、白い天井と、上から覗き込む類の顔。
いきなりの出来事だったので、私は床へと押し倒された事に気づいたのは、少し後だった。
「あのー・・・・・一体、この状況は何なのでしょうか??」
「んー?お腹が減ったから。」
頭上から返ってきたのは、当たり障りのない答え。
「は?」
「だから、ご飯をいただこうかなぁ、と思いまして。」
類は、にこりと笑顔で言った。
ああ。ご飯ね。
そっかそっか。
・・・・・・・ってハァ!?
「ちょっと、類何言って....」
「俺、つくしが本読んでる1時間の間、すっごい暇で退屈だったんだよねー。」
イタズラっぽい類の瞳が、私を見つめる。
ビー玉のように透き通った類の目は、私に魔法をかけているようで。
捕らえられた目は、逸らすことが出来ない。
「俺のワガママも聞いてくれなきゃ。ね?」
そして、ゆっくりと類の顔が近づき、耳元で囁かれた一言。
「いただきます。」
・・・・・・・・・いただかれます。
05/5/9
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こんなのでも一応、キリ番30000を踏んでくださったharukaさんへのキリリクプレゼントなのです。
リク内容は『強引なわがまま類くんに翻弄されるつくしちゃん』だったのですが、ど・・・どうでしょう??
あ、やっぱダメっすよね!!ですよね!!あは・・・は。。。(素直に涙)
30000HITありがとうございましたー!!