第10話 発泡酒
最近、アサヒビールより発泡酒「本生」が発売され、生産が追いつかないほど大好評になっています。私も飲んでみましたが、キリン「淡麗生」もおいしいと思いましたが、「本生」もよい出来だと思います。その秘密は、使用されている「大麦エキス」と「海洋深層水」にあるようです。「大麦エキス」は、大麦と麦芽を主原料とし、ビールづくりに必要不可欠な成分を抽出したエキスで、ビタミン・ミネラル・アミノ酸・糖分を含む優れた栄養補給源です。「エキス」=「液体」というのが今までなかったタイプです。「海洋深層水」は、ミネラルバランスに優れ、細菌や化学物質などによる汚染もなく、「無尽蔵の新資源」として現在脚光を浴びている深海水です。後発の利点を活かし、研究し尽くされた結果のようです。 1994年10月、サントリーホップスの発売により始まった発泡酒は、現在市場規模136万klに達し、購入世帯において、1999年には、容量ベースで27%、金額ベースで18%で、いずれもビールに次ぐ人気となっています。そこにはメーカーの多大な研究開発、市場育成の努力がありました。たまたま最近アサヒビールの方とご一緒する機会がありました。その方のお話によると、「発泡酒」という新しいカテゴリーを作り、1996年10月の「発泡酒税制改正」(別表参照)もメーカーの企業努力により乗り越えてきたのですが、さらにそれを標的に今後税制改正がおこなわれそうだということで、官庁側の無能を棚に上げて、と憤っていました。また、酒とかたばこなどの嗜好品に課税されるならコーヒーなどの嗜好品にも課税するべきだといわれていました。食後のコーヒーを欠かさないコーヒー党の私としてはちよっと賛同できかねますが一理あるようです。発泡酒の未来ですが、今後の税制改正で価格的に魅力がなくなれば当然「発泡酒にしてはおいしい」というレベルのものは淘汰されていくでしょう。発泡酒としてのほんとうの味を追求した物、発泡酒のもうひとつの特徴である含まれる副材料に特色のあるものが生き残っていくことでしょう。 <平成8年度税制改正の概要(酒税額/KL)>
<発泡酒について> 発泡酒とビールは、どこが違うのでしょうか? 水とホップ以外の原料における麦芽使用比率が66.7%(3分の2)以上のものがビールで、25%未満のものが現在主流の発泡酒となっています。また発泡酒は、副原料の制約もありません。つまり、発泡酒とはビールよりも麦芽の使用量等の制約が少ない発泡性を有する酒類というわけです。 なぜ、発泡酒の価格がお手ごろかといえば、その理由の大きなものとして酒税があげられます。発泡酒とビールは、法律で麦芽比率と使用原料の2つの面から分類されています。ビールは水とホップ以外の原料における麦芽の使用比率が66.7%(3分の2)以上と決められています。さらに、副原料についても使用できるものが限られています。 それに対して現在主流の発泡酒は、麦芽の使用比率が25%未満で、副原料の制限がありません。また、発泡酒は麦芽使用率で酒税が異なり、350ml1缶あたり、麦芽使用率50%以上で約77.7円、50%未満で約53.45円、25%未満で36.75円。これが、発泡酒がビールよりお手ごろ価格である理由のひとつです。 しかし、単に価格だけでは人気を得ることはできません。消費者の心をつかむ味と品質が保証されていなければ、愛飲家には見向きもされなかったでしょう。 各メーカーは企業努力によって、さまざまな味やうまさを追求。「これほどの味で、この価格なら」と愛飲家を納得させる製品を次々と提供してきました。これからも、いろいろなタイプの発泡酒が続々、登場してくることは間違いありません。 人気に応えて、各メーカーも新商品を次々と発表しています。ホップ等素材の味わいを追求したもの、柔らかな飲み口と後味のさっぱり感を実現したもの、無色透明・切れ味爽やかでおしゃれにノドを潤すもの・・・など、種類も豊富になってきました。 しかし、発泡酒の可能性はあらゆる面でこれからといえます。今後ますます様々な味の新製品が登場してくることは間違いありません。なぜなら、酒税法ではビールの副原料は、米、トウモロコシなどに限られていますが、発泡酒にはそうした制限がないからです。 カクテルのようなものから、トロピカルドリンクのようなものまで、発泡酒の可能性は大いに広がっているといっても過言ではありません。発泡酒の今後に期待しましょう。 |