お酒情報


第13話

ウイスキーブレンダーズセット

             

 この世に1つだけのブレンドウイスキーを作ってみませんかーー。サントリーは製法や原料が異なる6種類のウイスキー原酒をはじめ、試飲用グラス、メジャー(計量器)、空き瓶、ラベルなどをセットし、自分だけのブレンドウイスキーを作って楽しめる「ウイスキーブレンダーズセット」(8000円)を発売した。
 6種類のウイスキー原酒の内訳は、個性的な香味の「モルトウイスキー」4種類と穏やかな飲み口の「グレーンウイスキー」2種類で、いずれも12年もの(各150ml入り)。ブレンドはこれら6種類の原酒の個性を試飲によって確かめることから。その後、メジャーを使い、仕上がりを想像しながらブレンドにとりかかる。最後にオリジナルのラベルをボトルに張れば完成する。東急ハンズ(渋谷店、新宿店、町田店、大阪・江坂店、名古屋店の5店舗)限定で販売されている。
 19世紀の前半まで、ウイスキーは蒸留後すぐ飲むのが当たり前でした。ところが1853年、アンドリュー・アッシャーというウイスキー商が、複数の原酒をブレンドした製品を世に出して、ウイスキー通の間で高い評判となりました。これがブレンドの始まりです。こうして、異なる原酒を混ぜ合わせることで、個々の原酒のどれにもなかった、よりおいしい香り、味を創り出せることが分かってきたのです。ブレンドの妙に魅せられて、多くのブレンダーたちが工夫に工夫を重ね、ブレンドの技術が確立していきました。また、この頃には樽熟成により、ウイスキーの香味もぐんと向上し、またその種類も多彩になってきたので、ブレンドにより、様々な味わいのウイスキーが生まれるようになったのです。
 ウイスキーのおいしさは、ブレンダーの優れた技術によって、はじめて姿を現すことができます。多彩な原酒を混ぜ合わせることで、個々の原酒より優れた風味をもつ製品を新たに創造することができるのです。お酒の中でも、ブレンダーが活躍するのは、ウイスキー以外にはブランデーがあるくらいで、他にはありません。しかし、ブレンドが大事な製品には他のジャンルにもいろいろあります。たとえば、香水であり、タバコであり、紅茶やコーヒーもブレンドの技が重要な働きをしています。ブレンドの創造力が、官能の新しい世界を拓いているのです。このようなブレンドの妙を個人で、家庭で楽しめるこの商品は、愛飲家の夢を実現してくれる待望の商品と言えるでしょう。(2003.1.27)