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第5話 モルトビール

 ビールがおいしい時期になってきました。今回は、ビール各社出揃った、副材料を使わない麦芽(モルト)100%タイプビールの紹介です。
 これまで同分野は、全体の10%にも満たない市場規模でした。新製品効果が業界活性化の起爆剤となるか注目されている。
   
     

 首都圏・近畿圏の酒販売店204店のアンケート調査によると、売れ行きトップは、キリンビール「キリンオールモルトビール<素材厳選>」(61%)。ヨーロッパ産の麦芽・ホップを使用、酵母の発酵力を高める新技術で引き出したさっぱりしたうまみが残るのが特徴。「味がよい」(28%)、「素材がよい」(31%)など商品評価8項目のうち4項目で1位になった。発売日が調査時期と重なったことも、評価の上で優位に働いた。

 サントリー「モルツ生ビール」は売れ行きで僅差の2位(59%)。4度目のリニューアルのポイントは、素材の92%を占める水を天然水に変えたこと。天然水で味をスッキリと整え、「味がよい」(26%)は上位の評価を得た。「広告・宣伝・販促活動」では1位評価。

   

 売れ行き3位(43%)のアサヒビール「アサヒスーパーモルト」は低アルコール(3.5%)タイプ。「機能として健康志向にこたえるライトビールと、気分として麦芽100%の健康志向に注目した」(営業本部マーケティング部商品開発課の千林紀子プロデューサー)ことで「ターゲット特定が適切」(15%)との評価が高い。酵母に「アサヒスーパードライ」と同じ酵母を採用、「のどごしがよい」(29%)も2位につけた。

 サッポロビール「サッポログランビア」は「のどごしがよい」(30%)で支持を集めた。20−35歳までを今後10年の主役と想定、ライフスタイルや食生活に合う味覚を模索した成果だ。「今までにない力の入れ方」と広告・販促活動を評価する声もあるが、全体的に評価は低めとなった。

 今回、ビール各社の新製品に麦芽100%タイプが集中した背景には、消費者の味や素材に対する本物志向、健康志向を捕らえることが、「次の定番になる」との期待がある。表現や仕様に差はあるものの、方向性はほぼ同じ。「アサヒスーパードライ」で評価されたキレに通じる後味のスッキリ感を持ち、味については21世紀初頭のビールの新しい味覚を予想した新製品が多い。

 「キリンオールモルトビール<素材厳選>」の味の特徴は、「既存ビールユーザーの志向の一つであるスッキリに、様々な味覚のバランスを持つうまみを加えた今までなかったタイプで、分析技術の向上により実現した味」(営業本部営業部の鈴木徹担当部長)。

 「アサヒスーパーモルト」は、「ビール愛飲家の健康への意識の高まりが発想の原点」(小林プロデューサー)。低アルコールで麦芽100%のナチュラル、ヘルシー志向のビールで、飲みきり300ml缶の提案は気軽に飲める飲料水感覚だ。

 「サツポログランビア」は21世紀のビールとして「自然、健康、安全、本格、簡便、万能」をキーワードに掲げ、素早く立ち上がり、消える後味で、「アサヒスーパードライ」からの主役交代を目指す。「キリン1番搾り」以降、約10年間出ていないと言われる「定番商品」が生まれるのか、各社の力量が問われる。

 私も実際に4種類を飲みくらべてみました。最も飲みやすかったのは「キリンオールモルト」でした。しかし、モルトビールを飲みなれていない私にとって、これは、普通のビールとあまり差がないことを意味しています。「アサヒスーパーモルト」はアルコール分3.5%ということで、軽くて少し物足りない感じです。「サントリーモルト生ビール」は、今までは2〜3杯飲むと重たい感じがしたものでしたが、今回改良されて、幾分緩和され、後味スッキリ感がでてきました。「サッポログランビア」は、一種独特の味で、利き酒をすると、一発で判りそうです。みなさんもいろいろ飲み比べてみて、好みのビールを見つけてみてください。

ビールの基礎知識