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第19話 映画「ビューティフル・マインド」

 「ゲーム理論」の土台を完成させ、その後の経済学に大きな影響を及ぼしたノーベル賞学者、ジョン・フォーブス・ナッシュ・ジュニアの伝記にインスピレーションを受けて作られたこの映画は、2001年度ゴールデングローブ賞・アカデミー賞主要4部門受賞作品である。

 時代は冷戦下のアメリカ。第2次世界大戦で洗練された数学的分析が暗号解読に役立ったことから、今なお張りつめた時代が、若き数学者たちに寄せる期待は大きかった。この作品は、そんな緊迫した時代に生きる天才学者の危うさを描く一方、何かを求め続ける意志の強さがすべてを克服していくさまを力強く物語る。また、幻覚と現実の境を行きつ戻りつする主人公の心を、一種のサスペンスとして、きわめて映画的な手法で見せていく。

 アカデミー賞即名作ではない例が多いのだが、この作品は久しぶりの例外である。感動しました。大抵、エンディングが始まるとすぐ席を立つのですが、涙を流したのを人に見られたくない思いもあったのですが、今日は余韻に浸るようにしばらく席を立てませんでした。いわゆる夫婦愛の物語ですが、それだけでは語れない奥さんアリシアの深い愛が感じられました。映画の中でも語られていますが、ナッシュ博士にとって、彼女が奥さんでほんとうに幸運だったと思います。劇中には心の残る場面(恋人時代、デートで、無数の星が瞬く夜空を見ながら、アリシアが指定する物を無数の星の中から星座のように指で指し示してやるシーン)、印象に残る言葉がいくつもありました。いかにも盛り上げ方がお涙ちょうだい的だ、という人もいるようですが、私は素直に自分の感情のおもむくままの見ていただきたい作品だと思います。

<スタッフ>
監督/ロン・ハワード
製作/ロン・ハワード、ブライアン・グレイザー
脚本/アキバ・ゴールズマン
原作/シルヴィア・ナサー
<キャスト>
ジョン・ナッシュ/ラッセル・クロウ
パーチャー/エド・ハリス
アリシア・ナッシュ/ジェニファー・コネリー
ローゼン医師/クリストファー・プラマー