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第21話 映画「I am Sam/アイ・アム・サム」

       

 7歳の知能しかもっていない父親、サム。コーヒーショップで働きながら、たった一人で娘のルーシーを育てている。楽しい仲間に囲まれて、幸福な日々を送っていたが、ルーシーが7歳を迎えると、サムは父親としての能力に欠けると判断され、ソーシャル・ワーカーによってルーシーを奪われてしまう。かけがえのないルーシーを失ったサムは、敏腕女性弁護士とともに、裁判に出ることを決意する。自分が、父親としての能力を十分持っていることを証明するために、そして、ルーシーとまた楽しく暮らすために―――。 

 最近、幼児虐待のニュースをよく聞くが、その大半は、親の幼児期の育てられ方が影響しているといわれる。それほど重要な幼児期を、知的障害者に育てられるとどうなるのだろうか。育児に知性は関係ない。その愛情の深さであり、親子は一緒に暮らすのが一番大切という、シンプルだが強いメッセージがストレートに伝わってくる。振り返って考えてみると、それほどの愛情を子供にかけてきただろうかと自問自答してしまう。時として、自己中心的に、親の付属品のように子供を扱っていたのではないかと反省しきりである。観客は、男の人でも涙をぬぐっている人が何人もいたが、私は、ぐっとこみ上げるような場面もあったが、落涙するところまではいかなかった。全体的に、ストーリーのわりに淡々と描かれているせいかも知れない。
 主人公役のショーン・ペンをはじめ、「グリーン・マイル」に出ていたダグ・ハッチソンなどが知的障害者を演じているのだが、ほんもののようで、実に見事である。サムを助ける女弁護士はどこかで見たことがあると思ったら、「ストーリー・オブ・ラブ」でブルース・ウイルスの妻役で出ていたミシェル・ファイファーであった。また、子供役のダコタ・ファイニングは、少しいい子すぎて子供らしくないが、その芸達者ぶりは将来が楽しみだ。
 サムはビートルズのことならその私生活から解散した日まで何でも知っているという設定で、子供の名前もビートルズの曲名から命名している。全編豪華アーティストがカバーするビートルズナンバーが流れ、ビートルズファンにもこのうえなく楽しめる映画となっている。

      

<スタッフ>
監督・脚本・製作/ジェシー・ネルソン
製作/エドワード・ズウィック、マーシャル・ハースコヴィッツ、リチャード・ソロモン
共同脚本/クリスティン・ジョンソン
<キャスト>
サム/ショーン・ペン
リタ/ミシェル・ファイファー
ルーシー/ダコタ・ファニング
アニー/ダイアン・ウィースト