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第22話 映画「マジェスティック」

       

 「グリーンマイル」「ショーシャンクの空に」で世界中を感動の渦に巻き込んだフランク・ダラボン監督が、「トゥルーマン・ショー」「マン・オン・ザ・ムーン」のジム・キャリーを主演に迎えて贈る奇跡と感動の物語。ある日、海岸に打ち上げられたひとりの男。街の人々はその姿を見て狂喜する。彼の存在は、朽ちかけた街に戻ってきた希望そのものだった。しかし、男はすべての記憶を失ってしまっていたのだ…。デビュー作でアカデミー7部門にノミネートされ、一躍ハリウッドの寵児となったにもかかわらず、第2作「グリーンマイル」まで5年間もの沈黙を守ったダラボン監督。その彼が、全身全霊をかけて取り組んだ本作は、前2作に並ぶ奇跡と感動の物語の完結編といえる。 

 ごく普通の人間が、ひとつのきっかけで、勇気を奮い起こし、いままで従っていたものに抵抗するというところは、黒澤明監督の「生きる」を、クライマックスの非米査問委員会のシーンでピーターが憲法をもとにした基本的人権の自由を主張したところは、ジェームス・スチュワート主演の「スミス都へ行く」(39)を、ラストでピーターがローソンへ帰るシーンは、高倉健主演の「しあわせの黄色いハンカチ」を思い起こさせる。今までの映画の心地よいプロットをすべて詰め込んだような感じの映画である。また映画の背景として、ピーターが濡れ衣を着せられることになったハリウッドの”赤狩り”について理解しておく必要がある。第2次大戦終結2ヶ月前、ハリウッドでは撮影所組合が撮影所国際同盟と対立し、大規模なストライキを行った。各撮影所は同盟側の人間を動員してなんとか映画撮影を続けていたが、10月ワーナー・ブラザース撮影所に警官隊が催涙弾を使いスト派を排除するという事件が起きている。この事件をきっかけにしてハリウッドには共産主義者がはびこっていると主張する政治家が台頭し、映画同様の”赤狩り”が行われていくことになる。そして映画の舞台となる1951年には非米活動委員会の聴聞会が開かれ、エリア・カザンらが委員会に忠誠を誓い、共産主義者の名前を挙げさせられている。1954年までに映画人のブラックリストに載せられた者は324人にも上る。そして彼らは映画界を追放されてしまう。この映画は、そういう映画の不幸な時代を批判し、不遇な目にあった映画人に捧げられた映画といえる。

      

<スタッフ>
監督・製作/フランク・ダラボン
脚本・共同製作/マイケル・スローン
製作総指揮/ジム・ベンケ
<キャスト>
ピート/ジム・キャリー
アデル/ローリー・ホールデン
マーティン/ハリー・トリンブル
アーニー/ジェフリー・デマン