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第24話 映画「サイン」

       

 息子モーガンと娘ボー、それに実弟メリルと暮らす農夫グラハムは、ある朝目覚めると犬たちがやたら吠えているのに気づき、農場で何か起きていることを予感する。トウモロコシ畑へ出かけて見ると、巨大なミステリーサークルが出現していた。人間技ではできないそれは、何の“サイン”なのか、そしてなぜグラハムの農場に出現したのか…。グラハムは家族を守るため、ミステリーサークルの謎を究明しようと奮闘する。それは不幸の予兆か、それとも神の啓示か…。そこには恐るべき真実が…。  

 第1作「シックス・センス」では超能力、第2作「アンブレイカブル」では不死身の人間を描き、その着想の斬新さ、ストーリーの構成力にいつも唸らせられるシャマラン監督だが、今回は”ミステリーサークル”という、もはやありふれたものを題材としている。そこから物語を展開させようとすればたいていの人が思いつく方向に話は進んでいく。このまま行けばただのSF映画、ミステリー映画に過ぎなくなるところが、シャマランの手にかかれば巧みに料理され、見ているものをグイグイと引き込んでいく。そして物語にちりばめられていたいろいろな伏線、牧師をやめた兄、ホームラン記録は持つが三振も記録的な元マイナーリーガーの弟、喘息もちの兄の息子、予知能力を持ち、水に異常に神経質な兄の娘、交通事故で奇跡的に虫の息の中、謎の言葉を残し死んだ兄の妻、それらがラストに向けて絡み合い結晶していくところはすばらしい。映画の中で主人公が言った言葉、「危機にあった時、この世の中は2種類の人間だけだ。ひとつは、この世の中は自分だけが絶対のものでどちらに転ぶかヒィフティ・ヒィフティと考える人間。もうひとつは自分以外の誰かの助けを信じる人間。」。現在の日本では前者が多いであろう。そしてそういう人間が多い社会は衰退していく。後者の「誰か」とは、いわゆる神であろうし、「信条」「信念」とも置きかえれる。今の生き方をふと考えさせられる映画だ。

      

<スタッフ>
監督・製作・脚本/M.ナイト・シャマラン
製作/フランク・マーシャル、サム・マ−サー
製作総指揮/キャスリーン・ケネディ
<キャスト>
グラハム/メル・ギブソン
メリル/ホアキン・フェニックス
モーガン/ローリー・カルキン
ポー/アビゲイル・ブレスリン
    レイ/M.ナイト・シャマラン