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第25話 映画「戦場のピアニスト」

       

 キャリア40年で遂にカンヌ映画祭の最高賞であるパルムドールを受賞し、感涙に咽んだロマン・ポランスキー監督。監督は幼い頃をクラクフのゲットーで過ごし、母を収容所で亡くした経験をもつ。そんな彼が遂に自らの原点に立ち返り描いた渾身の一本が本作だ。原作は、ポーランドの名ピアニストで国民的作曲家W・シュピルマンが自らの奇跡的生還体験を描いた回想録。眼に焼きつく鮮烈な映像とリアリズム。そして実話の重み。本作はまさに魂を揺さぶる真実の物語である。  

 アカデミー賞7部門ノミネート、カンヌ映画祭最優秀賞受賞の話題作ということで、早速見てきました。舞台は第2次大戦中、ナチスドイツ占領下のポーランド。ユダヤ人がゲットーに押しこめられ、言われなき虐待を受けていく様が淡々と描かれ胸に迫ってくる。しかし、感動とは少し違う。その原因は、まさに記録映画のような描き方にあると思う。実際にゲットーを体験したポランスキー監督だからこそ事実に忠実に描きたいという思いがこのような作品になったのであろう。主人公は、レジスタンス、ユダヤ警察、ドイツ将校の善意に助けられ、また、ピアニストとしての才能ゆえに紙一重で生き残ってゆく。主人公を助けたドイツ将校が言っていた「人の運命は神のみぞ知る」というまさにそのままだ。映画のラストで、主人公が大オーケストラの前でピアノ演奏する場面でテロップが流れるのだが、館内の照明が明るくなるまで誰一人席を立つ人はいなかった。それほど多くの人をのめりこませる力作だ。

      

<スタッフ>
監督/ロマン・ポランスキー
製作/ロマン・ポランスキー、ロバート・ベンムッサ、アラン・サルド
脚本/ロナルド・ハーウッド
<キャスト>
シュピルマン/エイドリアン・ブロディ
ホーゼンフェルト大尉/トーマス・クレッチマン
父/フランク・フィンレイ
母/モーリーン・リップマン
    ドロタ/エミリア・フォックス