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第6話  映画「アンドリュー          NDR114」

    

 <解説>そう遠くない未来のある日。郊外に住むマーティン家に届いた荷物は、父親のリチャード・マーティンが家族のために購入した家事全般ロボット"NDR114"だった。最新鋭の機能をもちながらも、礼儀正しく、どこかアナログ感も漂わせるせるこのロボットはアンドリューと名付けられた。
 アンドリューの主な仕事は、彼が"リトル・ミス"と呼ぶ末娘の子守。その仕事を通して、いつしか機械が持つはずのない個性−感受性や創造性を見せるようになっていく。マーティン家の人々の成長と老い、そして死を見守りながら、世代を越えた絆で結ばれていくアンドリューだったが、自分が人間とは決定的に違うがゆえの孤独を感じ、本当の人間になりたいという夢を持つようになるが…。

      

 生まれたての子供のような無垢な心を持ちつづけ、時にはかなわぬ想いに傷つきながら、人間へと"進化"していく彼の姿は、"最初から人間として生まれてきた"私たちの心に不思議な感動を残す。そして彼の切ない願いに涙し、決して他人を傷つけることのない生き方に癒され、意外な結末に胸をしめつけられる。
 200年(Bicentennial) に渡る物語の前半、顔まで隠れる16キロもある"ロボット・スーツ"を着るのは、映画界からの引退も囁かれている名優ロビン・ウィリアムズ。『シザーハンズ』や『オペラ座の怪人』を彷彿とさせる、切ない想いを描いたのは『ミセス・ダウト』でもウィリアムズと絶妙のコンビネーションを見せたクリス・コロンバス監督。SF界の巨星アイザック・アシモフの短編をベースに、ジェームズ・ホーナーとセリーヌ・ディオンの『タイタニック』コンビによる主題歌「ゼン・ユー・ルック・アット・ミー」が、かなわぬ想いに傷つきながら、少しずつ"進化"し、人間とは何か、愛とは何かを問いかけるヒューマン・ドラマのラストシーンを忘れ難いものにしている。

      

 「アメリカン・ビューティー」を見に行ったとき、予告編を見て、近日公開と知り、ロビン・ウィリアムズが主演ということで、これはまちがいないと思い、期待を持って見に行きました。200年に渡り生き続け、どんどん改良され、人間に近づいていくアンドリュー。自由、孤独、そして恋を知り、結婚し、アンドロイドのままなら不死なのに、最後は、人間にとって避けられない「死」を自ら選択。自然(=神)に生かされ、摂理に従っていく人間と同じ道を辿ることにより、アンドリューは、初めて、人間になり切れたと思い、満足して死んでいったのでしょう。人間として生きて行く以上、後悔することなく死を迎えられるよう、人生を意義あるものにしていきたいものです。

 ラストシーンで流れる主題歌が、非常に意味のある内容で、余韻に浸るように、すべて終わるまで、誰も席をたつ人はいませんでした。周りには、すすり泣く人もいました。あえて苦言を呈すれば、いくつかの寓話で構成され、200年に渡り物語が展開するため、ひとつひとつの物語が短く、掘り下げ方が少し、物足りない気がしました。それに、ロビン・ウィリアムズの出演作の特徴ですが、濡れ場とか刺激的なシーンがなくて、ほんとうに健全な映画という感じです。ところで、スタンダップコメディアンとしてキャリアをスタートさせたロビン・ウィリアムズは、このあと2作品に出演後、役者活動を一時休止する予定だそうです。たいへん残念なことです。(2000/5/19)

      

キャスト

アンドリュー ・・・・・ ロビン・ウィリアムズ
リトル・ミス/ポーシャ ・・・・・ エンベス・デイビッツ
サー ・・・・・ サム・ニール
ルパート・バーンズ ・・・・・ オリバー・プラット
ガラテア・ロボティック/人間 ・・・・・ キルスティン・ウォーレン
マム ・・・・・ ウェンデイ・クルーソン
リトル・ミス7歳 ・・・・・ ハリー・ケイト・アイゼンバーグ
ミス9歳 ・・・・・ リンジー・リザーマン
ミス ・・・・・ アンジェラ・ランディス
ビル・ファインゴールド ・・・・・ ジョン・マイケル・ヒギンズ
ロイド ・・・・・ ブラッドリー・ウィットフォード
ロイド10歳 ・・・・・ イゴー・フィラー

スタッフ

監督 ・・・・・ クリス・コロンバス
脚本 ・・・・・ ニコラス・カザン
原作 ・・・・・ 『バイセンテニアル・マン』
アイザック・アシモフ
『聖者の行進』
創元SF文庫内所収短編小説
小説『アンドリューNDR114』
創元SF文庫刊
アイザック・アシモフ
ロバート・シルヴァーバーグ
製作 ・・・・・ ウォルフガング・ペーターゼン
ゲイル・カッツ
ローレンス・マーク
ニール・ミラー
クリス・コロンバス
マーク・ラドクリフ
マイケル・バーナサン
製作総指揮 ・・・・・ ダン・コルスラッド
撮影 ・・・・・ フィル・メヒュー,B.S.C.
美術 ・・・・・ ノーマン・レイノルズ
編集 ・・・・・ ニール・トラビス,A.C.E
衣裳デザイン ・・・・・ ジョゼフ・G・アウリシ
音楽作曲 ・・・・・ ジェームズ・ホーナー
「ゼン・ユー・ルック・アット・ミー」
作曲:ジェームズ・ホーナー
ヴォーカル:セリーヌ・ディオン
サントラ盤:ソニー・クラシカル
シングル:Epic Records

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