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        第8話 

 映画「サイダーハウス・ルール」         

   

 「M:I2」「グラディエーター」などの話題作が上映され、行列を作っているなか、ひっそりと上映されている。しかし、助演男優賞・脚本賞を受賞した、れっきとした2000年第72回アカデミー賞受賞作品である。映画批評家からの賛辞もあり、それなりの期待を持って見に行きました。原作者自身が脚色していて、次々に広がっていく展開に、思わず引き込まれていきます。人それぞれの「役割」「運命」のようなものを、また、孤児院が舞台でありながら、家族愛・人間愛について考えさせられる秀作で、ラスト・シーンでは、思わず目頭が熱くなったのは私だけではなかったでしょう。
 映画のタイトルの「サイダーハウス・ルール」とは、りんご農園の宿舎に貼られたどこか現実離れした内容の規則のことである。人は誰でも「サイダーハウス・ルール」のようなものに縛られて生きている。社会によって決められた基準は、現実の人生にはそぐわないこともあるし、絶対に破ってはならない決まりがあり、逆に破らなくてはいけないルールもあることを、主人公ホーマーは、そして観客である私達も、徐々に自覚していくのだった。人生の道のりの中で、自分のルールを見つけたとき、人は本当の意味での「大人」になるのかもしれない。この夏、お薦めの1本です。

      

<INTRODUCTION> 旅立ち、家族の絆と愛情、人々との出会い、初恋、そして生きていくこと…『サイダーハウス・ルール』は、大人になる過程で誰もが経験する道のりを優しく爽やかに描く感動作である。「ガープの世界」「ホテル・ニューハンプシャー」など独特の作品世界で知られる米現代文学の巨匠ジョン・アーヴィングが自身の同名ベストセラーを脚色、『ギルバート・グレイプ』『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』のラッセ・ハルストレムが、みずみずしい映像と視点で描き出した。ナショナル・ボード・オブ・レビュー脚本賞受賞をはじめ、本年度アカデミー賞では主要7部門にノミネートされ、助演男優賞、脚色賞を受賞するという快挙を成し遂げた。
 メイン州ニュー・イングランド。ホーマー・ウェルズはセント・クラウズの孤児院で生まれ育った。ラーチ院長の「人の役に立つ存在になれ」という言い付けを守りつづけて成長した彼は、院長の仕事―助産と当時禁止されていた堕胎―を手伝うようになる。成長するにつれ自分の未来に疑問を持ち始めた彼は、ある日手術に訪れたキャンディ・ケンドールとその恋人ウォリー・ワージントンと共に孤児院を飛び出した。初めて見た海、ドライヴイン・シアター、ロブスター、そして初めての恋。セント・クラウズ以外の場所を訪れたことのなかったホーマーは驚きの目で新しい世界を発見して行く。ウォリーの誘いで、彼の母が経営するリンゴ農園で働き、収穫人たちの宿舎“サイダーハウス”で暮すことになったホーマー。新しい生活と人々との出会いの中で彼は何を見出していくのか…。

   

 主演は「カラー・オブ・ハート」のトビー・マグワイア、本作で見事アカデミー賞助演男優賞を受賞したマイケル・ケイン、「ノイズ」のシャーリーズ・セロン、「身代金」のデルロイ・リンド、「ロミオ&ジュリエット」のポール・ラッド、「マイ・フレンド・メモリー」のキーラン・カルキン、そして人気ミュージシャンのエリカ・バドゥとヘヴィ・Dが俳優顔負けの存在感と演技力を見せている。また、アーヴィング自身セント・クラウズの駅長役で特別出演。加えて孤児院の子供たちの笑顔をその裏に宿る寂しげな表情はいつまでも心に残るに違いない。 2000/7/12)