「ラビ君が本が好きって‥ブックマンを継ぐ勉強をしてるって‥でも、、、わたしが選ぶような本はもう読んでる気がして」
目の前に差し出された包みから現れたシンプルなそれは
「だから、、、物語をこれからラビ君が書いたらどうかなって‥」
ミランダの白い指が表紙を捲ると目に眩しいまっさらな頁が現れて、ラビはミランダの手の中の物をただただ見つめた。
「‥ヘン‥‥。ヘンよね。ごめんなさい。サンジョルディに日記帳を送るなんて‥」
手にも取らず、ただ黙っているラビに最後の方は泣きそうな顔になって、ミランダは急いで日記帳を胸元に抱き込んで俯いた。
「ちょっと失礼するさ。」
明るい声にミランダが顔を上げると、ラビは笑ってミランダの手から日記帳を取った。
「俺んでしょ。いただきます。」
「あの、、、ラビ君?無理に」
「すっげぇ嬉しいさ。ありがと。使わせてもらうさ。」
「でも、、、ラビ君?」
明るいけれどいつもの天真さではないようで、ミランダがうかがうように尋ねると
「ゴメン、ちょっと待って。すぐ、、、すぐ戻るから。」
ラビは日記を持って走り出した。
目的もなく、ただ我武者羅に
『だって』

日本のバレンタインの話から、ブーブー言われながらもコムイのごり押しで、2月は女性から男性にチョコが送られた。日本語で書かれた義理≠フ文字は、読めない言語でも悲しい事に意味が伝わってきた。

『そう、、、チョコは皆に配られたけど 本は俺だけ‥』
サンジョルディは大切な人に本を贈る 大切な人に赤いバラを贈る 日。
大切な人に
『あっ、俺ってバカ。バラ‥赤いバラ贈らなきゃ‥』
庭に出てようとして、ラビは別れ際のミランダの顔を思い出した。
『違うっ、バラよりしなくちゃいけない事があるさ!』
ミランダを笑わせる事。嬉しいと伝える事。
ラビは回れ右をすると、ミランダを探しに教団内へ戻る。
『ゴメン、ミランダ。だけど、、、、だけどさ』
これ、俺にくれたんだよね。俺だけにさ
「それで変らない態度なんてできないさ。」
泣きたいほど嬉しいのに、、、心臓バクバクで、世界が目の前にある日記だけみたいな
「なっさけないよな、手の震えが止まらないさ‥」
ラビは泣きそうな、でもミランダとは全く逆の表情で、日記帳に口付けた。
「何です?ラビ。良い本でも見つかったんですか?」
「‥ブックフェチ。」
キスの現場居合わせたアレンと神田を気にも留めず、ラビはミランダの部屋を目指した。
その手前で、かの人の声が聞こえる。リナリーと談笑しているようだった。
『笑ってる‥さ‥』
心配したよりミランダが落ち込んでいないようで、ラビは一息ついた。
急に孤独が押し寄せてくる。
ただサンジョルディに気付いて、本好きで有名なのはラビだけで。
そんな軽いものだったのかもしれない。
『それでも!俺にくれたさ。俺を‥思い出してくれたさ』
ラビは通りがかったクロウリーがタイムリーに持っていた切花から1本失敬すると、深呼吸してミランダに声をかけるべく歩き出した。

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ラビ。本。サンジョルディ。丁度バレンタインは、げーこくモノには使い辛いイベントだし。つまりはラビを書いてみたかっただけです。しかも早すぎ(笑)。色々でスンマセン。2008/01/19

「大丈夫?ミランダ。」
「心配かけてごめんなさい。でも本当になんとも無いのよ!?わたしったらまた悪い癖で、自分だけで満足してただけなの。ラビ君にも悪い事しちゃったわ。」
「そんな事無いわ、ミランダ。ラビが」
「お〜い、ミランダ。リナリ〜。」
赤い食人花を握り締め、手を振りながら走ってくるラビは、この後どうなるか知る由も無かった。