merry-andrew

誰でもひとりなのだと自覚してる人・してない人。それは嫌だと駄々をこねる人。
愛してるから淋しい。愛されたいから寂しい‥そんなお話。そんな7月竜のアレンくんの話し。2008/11/19

「良いんですか?ミランダさん、、、クリスマス、、、、」
「アレン君は、、、、嫌かしら?」
「いえ!僕は全然!パーティなら教団主宰のが明日ありますし、、、」

祝い事はしよう。明日の命は分らないから。
教団は‥というよりコムイは事あるごとに行われるお祝いを決して不謹慎と取り締まりはしなかった。

クリスマスパーティが開催される。
その張り紙にアレンはちょっと思案すると、にかっと笑ってミランダに言った。

仕事が入らなければ、その前の日にもパーティしませんか?ふたりだけで

ちょっと困ったように笑って、でもミランダはアレンに頷いた。

その日から。
アレンはいそいそと時間があると準備を始めた。
その姿を、微笑ましくミランダは見ていた。
嬉しそうに。優しげに。
今日がその日。
運良くふたりともフリーで、ミランダの部屋の小さな丸テーブルにろうそくを立て、ターキーのサンドイッチとブッシュドノエル、赤ワインがロウソクの灯に揺れている。
なのに
突然の命令。
「クリスマスだから、、、いいでしょ。」
ミランダはベッドに座るとアレンに膝枕で眠るように言ったのだ。
乾杯も、食事も、歓談も、キスも無く
「あの、、、・ミランダさん?」
強い口調で言ったミランダは、アレンが大人しく頭をミランダの膝に乗せると、黙り込んでアレンの頭を撫でるだけだった。
「ミランダさん‥」
「ごめんなさい。わたし、勘違いしてるのかも、、、」
心細げに呟いたミランダに、アレンは体を捻って顔の向きを変えた。まっすぐにミランダを見上げる。
「何をです?」
顔を上に向けたアレンの頭を撫でられなくて、ミランダはその手をアレンの額に置いた。
「アレン君が、、、、寂しいと思ったの‥一生懸命準備してくれてて、、、でも、、、、寂しいと思ったの‥」
アレンは驚いて目を瞠った。
「ミランダさんと居て、寂しいなんて無い‥」
アレンの口をミランダの細い指が塞ぐ。
「わたしと居ても、アレン君は寂しい‥」
「ミランダさん‥!」
「だから、、、膝枕したかったの。頭、、、撫でたかったの。そんなので埋まりはしないって分ってるけど、、、分ってるから‥」


寂しい?
アレンは目を閉じた。
淋しい 淋しい 淋しい!

親から捨てられたから?
マナをアクマにし、殺してしまったから?そして呪われてるから?
アクマを助けたいから?アクマに魅入られてるから?


ちがう
エクソシストじゃなくても、どんなにあがいても、僕は他人と相容れない。
誰かと笑っていても「自分は一人なんだ!」と突きつける僕が居る。
誰だってひとりで、そうやって生きていくのに!
無理を承知で寂しいと駄々をこねる僕が居る。


そんな僕を見つけてくれたの?

今度はアレンが、だんだんと自己嫌悪になっていくミランダの口を塞いだ。自分の唇で。
そのままアレンは起き上がるとミランダを抱き締める。
「そうです。寂しいです、ミランダさん。」
ミランダの手もおずおずとアレンの背に廻る。
「この寂しさは誰にも埋められない。だから‥」
アレンはミランダとゆっくりとベッドに沈んだ。
「だからミランダさんが居てくれて嬉しい。嬉しいんです‥」

ふたりでいても埋まらない寂しさは、ふたりでいるほど淋しいのかもしれないけど
それを肯定して、抱きとめてくれる人が居るのは、なんて幸せな事だろう


髪を梳く手に身も心も委ねて、アレンは安らかな眠りに落ちていった。