キラとラクスが暮らす孤児院。そのリビングで珍しくラクスとアスランが頭をつき合わせて、難しい顔をしている。
「どうしたんだ?ふたりとも」
お邪魔かとも思ったが、放っておくには険悪なムードで。カガリは控えめに声をかけた。
「カガリさん!丁度良いところにおいでになりましたわ。11月2日に発売されたCOMPLETE BESTをご覧になられて?」
「え?いや、、でもあれって観るんじゃなくて聞くものなんじゃ、、、?」
珍しいラクスの憤りに、カガリは困ったようにアスランへと視線を向けた。だがアスランもラクスに負けずむっつりと腕を組んでいる。
「CDとDVD2枚組なんだ。DVDには全てのオープニングとエンディング映像を完全収録してあるんだが、そこにこれが」
アスランが指差したものは第4期のオープニングの一場面で
「‥キラと私だな。これが何か?」
そこにはパイロットスーツのキラとグリーンのドレスを纏ったカガリが背中合わせに座っている。
「分ってるのか?カガリッ。こんな、む、胸の開いた、肩紐だけの、、」
「ドレスのことか?ラクスのようにビスチェが着れると良いらしいんだが、私は胸が小さくてな。アクセサリーで誤魔化し」
「ドレスの事ではありませんわ。」
ラクスがカガリの腕を引く。
「この体勢が問題なんです。」
「体勢って‥キラと背中合わせの事?」
「背中を預けあって、カガリさんもキラも安心してるところですわ。」
「いや、それは、、、そりゃキラだし、私は安心してるが、、、キラはどう見ても不機嫌そうだぞ?」
ラクスは首を振る。
「不機嫌キラはずっと恐い。」
ボソっとアスランも答える。
「こんな素のままのキラなんて、他の組み合わせでは見られませんわ。」
「そう、、というよりラクスと向き合ってる時は、キラ、幸せそうに笑ってるし。アスランやシンにだって、不機嫌な顔なんてしてないぞ。むしろ優しげに」
「そう!全部そういった表情で、真に素なのはこのスナップだけですわ。」
「えっと、それは全然気を使ってないって事で、むしろ微笑んでいられるラクスとのツーショットが嬉しいんじゃ、、」
「そこが問題なのです。」
「え?」
「こんな羨ましいシチュエーションにも関わらず、それを当然と流しているキラの贅沢が問題なのです。」
「そうだよな、、言われてみれば私も腹が立ってきた。キラもたまには私に対して気を使って、、、」
「いつでも気を使ってます。」
噂のキラが腕を組んでドアにも垂れている。
「キラ、帰ってきたら挨拶しろよ。」
口を尖らせるカガリの元へキラは寄るとその頬へ唇を落とす。
「いらっしゃい、カガリ。」
思わず立ち上がるアスランと厳しい視線を向けるラクスに笑うと、キラはカガリをソファに座らせその横にちゃっかり座った。
「問題のショットね‥僕にはよほどアスランとカガリの構成の方が問題だと思うけど。」
「こ、これはべつに、、俺が頼んだわけじゃ」
慌ててアスランが隠すスナップ。
「それじゃないよ。それはスレンダーなカガリが、しかも守ってあげたくなる格好で立ってるのが素敵な一枚で、あとは君がキサカさんに気力負けで立ち去るとしか思えない背景の」
「ちょっと待て!なぜ俺がキサカさんに負けた事になる、、」
「確かにそういうふうに見えますわね。」
「俺はキサカさんに負けたわけじゃない!お前達の邪魔にもっ」
「そうだよな、この時アスランは自分の意志でオーブを出て行った‥」
訂正のはずが墓穴を掘り、アスランは慌てて顔を伏せるカガリの肩に手を伸ばそうと
パシッ
乾いた音でキラがアスランの手を弾く。
≪どうしてそういう事、思い出させるわけ?≫
≪お前がヘンな事言うからだろう≫
視線の攻防。
「そういえばアスランも、見逃せない構成が多いですわね。」
「ラクス、、?」
仲間だったはずのラクスもアスランの失言にお灸をすえる。
「ミーアと一緒が多いね。」
すかさずキラも追い討ちを掛ける。
「でもアスランは問題ないですわ。どの場面も結局カガリさんの手を握るどころか、視線を合わせる事さえ出来ていませんもの。」
グサッ
「シンですらルナマリアと向き合ったりステラと触れ合ったりしてるんだ、アスラン」
グササッ
「言われてみるとマリューさんもバルトフェルトも、デュランダル議長までそういうシーンがあるんだな。」
カガリにまで止めを刺され、アスランは撃沈する。
「とにかく!このスナップは納得いきませんわ、キラ。」
「ご、ごめん、ラクス。私が気付かなくて。キラとはもう写真を撮らないから」
「カガリが気にする事はないよ。これは僕とラクスの問題だ。」
珍しく強気のキラに、せっかく約束を取り付けたと浮上したラクスの気持ちもまた降下する。
「何言ってるんだ、キラ。ラクスが気分を悪くするのは当然だろう。お前達は」
「わたくし達は、良きライバルですわ。」
間に入ったカガリの手を、キラとラクスそれぞれが握る。
「待て!俺も参加、、」
「「アスランは黙ってて!」」
鼻白むアスランをカガリは振り返って苦笑いを浮かべた。
「ごめん、アスラン。手、二本しかないから」
三竦みにはいささか物足りない一匹がいるが、COMPLETE BESTの波紋はまだまだ続きそうである。














真剣に観てしまいました、DVD。そして解説書。カガリ、少ない(泣)。でも、あのキラとのツーショットは、すっごく7月竜には美味しいものでした。キラカガ再考(見直)してくだされ!(爆) 2005/11/6

COMPLETE BEST

7月竜