「あら、雪ですのね。そういえばもうすぐクリスマスでしたわ。」
紅茶を持って入ってきたラクスは、テレビ中継に目を留めた。
「オーブじゃ雪は降らないからなぁ。プラントじゃ雪は降るの?」
テレビから目を離し、カガリが振り返る。
「プラントの天候は制御されているから」
「クリスマスの雪は恒例ではありませんでしたわ。」
「え?制御されてるのに?」
ラクスはそれぞれにティーカップを置くと、頷いてカガリの足元に座った。
「そうだったか?」
首を傾げるアスランに、そういう事はお気づきになりませんでしたものね と笑ってラクスは続けた。
「雪は天からの贈り物。良い子にしているとサンタさんが雪を降らせてくれるんですの。」
「サンタさんて‥単に有り難味が薄いから確率で降らせるか決めていただけだろう」
気まずそうにアスランは紅茶に口を付けた。
「何言ってるんだ、アスラン。サンタクロースはいるぞ。」
「カガリ?」
真面目に言い返したカガリに、アスランはおたつく。
「あ、もしかして僕だったり!?」
カガリはプレゼントを差し出しながら冗談で笑ったキラを、今度は睨んだ。
「まさか、ホントにサンタクロースを信じてるの?」
困ったようなキラを、カガリは寂しげな瞳で見た。
「サンタクロースは、信じる人の心の中に居るんだよ。」
「それって‥」
いないって事なんじゃ と続けようとしたキラの頭をカガリは両手で掴んだ。
「もらえる物はカタチが無いかもしれない。だけど、分ってる人には届く。」
カガリは胸に手を当てた。
「サンタなんて居ないと思ってた頃、サンタから手紙が届いた。私の幸せを祈っていると書いてあった。」
「あぁ‥サンタの手紙‥」
「ヒトだと思うか?」
サンタ発祥の地の人が考案した商品だと?
カガリに先を制され、キラは口籠る。
「でも、私は信じたいんだ。」
いつものまぶしい笑顔ではなく、愛しむような笑み。
「‥‥‥カガリは、ロマンチストだったんだな。」
サンタを信じたいというカガリが可愛らしくて、アスランも嬉しそうに笑った。
「ロマンチストぉ!?」
思わずソファから立ち上がりかけ
「‥‥‥ま、悪くないか。プレゼントはくれる相手の気持ちも届けてくれる。サンタはそれを世界中に配るんだから、サンタを信じるのがロマンチストでも、いいや。」
考えを改めると、ソファにボスッと座った。
「プレゼントをくれる相手の気持ち‥」
キラは自分の差し出したプレゼントに目を留めた。
「ありがたく頂くよ、キラ。」
カガリはキラの手から包みを受け取ると、大切そうに抱き込む。
「カガリ、、それは冗談で、、、ちゃんとしたのは改めてクリスマスに贈るから、、、」
慌てるキラにカガリは笑った。
「なんで?せっかくキラがくれたんだ。私はこれで十分だぞ!?あ、私からのプレゼントはクリスマスイブに部屋の前に置いおくから、、、その、気に入るかは」
「カガリさんの気持ちを届けてくれるものが、気に入らないわけ無いですわ。だってそれを選んでいる間は、贈る相手を思ってくれてるんでしょう!?」
「そうだな。あげる方がプレゼントを貰ってるみたいに楽しい。」


あっという間に団欒の時は過ぎ
「カガリ!」
帰るカガリの手をキラは慌てて引っ張った。
「キラ?」
「さっきの、本当に‥」
ラクスのプレゼントはきっとカガリの一番喜ぶもので。でも、それに負けないものをキラだって用意している
それを渡したくて、冗談のプレゼントを取り戻そうと焦るキラに苦笑すると、カガリは口を寄せた。
「‥‥、サンタを信じるようになってから‥サンタクロースはお父様だって思ってた時より、プレゼントはずっと大切になった。」
「カガリ?」
カガリはキラから離れると、その手を取る。
「弟や友達。信頼できる仲間‥いっぱい貰った!」
「カガ‥」
「居て当たり前なんかじゃないんだ!出会えたって、解り合えない事だってある。手を取り合うそこには、たくさんのプレゼント(偶然)が詰まってるんだ。」
「それはカガリの人力と努力‥」
「努力しようと思える事がプレゼントじゃないかな。」
「‥‥‥」
キラは息をつくと、諦めてやっと笑った。
「そうだね。サンタを信じるのも悪くない。
カガリが信じて待っているサンタが、きっと届けてくれる。
「カガリ〜」
キラとのやり取りに業を煮やしたアスランの呼び声で、走っていく片割れ。
「またな、キラ。ラクス〜。」
「またね、カガリ。アスラン。」


A Merry Christmas to you.

I wish you a merry Christmas

クリスマスの相手を誰にするか、、、、ごめん、今回はキラね(笑) 2005/12/24