「綺麗な夜景だなぁ‥」
食事が済んで、残ったワインをあけながらカガリは呟いた。
「そうか?」
こんなふうにゆっくり時間が取れるのは久し振りで、アスランはただただ、カガリを見守っていたので、他の景色など気付かなかったのだ。
「なんだよ、眠いの‥あっ、それとも興味無かったか?悪かったな、付き合わせてしまって‥」
違う。カガリを見てたから、気付かなかったんだ
気の抜けた返事をフォローしたいけど、気恥ずかしくて。アスランが顔を赤らめて口をもごもごさせている間に、アスランの左肩に誰かの手が触れた。
「確かに。美しい景色ですわ。‥ですが、わたくしにはカガリさんの方が綺麗に見えます。」
長い髪を風になびかせカガリの示した方をしっかり鑑賞した後、ラクスはカガリに微笑んだ。
カガリの言う事に理解共感を示し、更に決めゼリフまですんなり口にできるのは流石女性らしい洗練さである。
「カガリと一緒だったら、どこでも楽しいよね。」
決めゼリフでは既にラクスには及ばないと理解したキラは、兄弟である立場をフル活用した含みを持たせて笑った。
どういう意味だよ、と口を尖らせながらも
「ふたりとも来てたのか?」
カガリは嬉しそうに笑った。
その笑顔が、アスランに突き刺さる。
俺が誘うのにどれだけ苦労をしているのか‥
肩を落とし項垂れるアスランをはさんで、盛り上がる3人へキツイ声がかかる。
「こんなトコで、何のんびりしてンだよ。」
今度はカガリの後ろから、ルナマリアを引き摺ったシンが現れた。ルナマリアは止めようとしていたらしく、シンの腕にしがみ付きながら肩で息をしていた。
「あぁ、、済まない。夜景が綺麗だったから、ついな。長居してしまった。」
プライベートが有って無いような公人の立場を、カガリは弁えている。
「今日は18時からオフだったんだから、どこで過ごそうといいんじゃないのかな!?」
カガリを庇うキラに、どこからスケジュールを入手したんだとアスランは額を押さえた。
「それじゃ有事の時に困るだろ!」
「今、有事が起きてるとは思えませんが‥」
ラクスが口元を押さえるのに、シンは鼻白む。
「何かあったのか?」
「シン!?」
カガリとアスランに迫られ、シンは恐怖をねじ伏せ微笑むラクスを睨んだ。
「そうじゃないけど、、、だから今の事じゃなくて!」
「久し振りの休息なんだ。ゆっくりさせてよ?」
カガリを、と言わないところがキラのカガリに優しい心遣いで、他の人間には暗に所有を示す事で余裕を誇示している。
「だったらっ」
拳を握ったシンは、キラにではなく、カガリへと視線を戻した。
「だったら代表なんて辞めて、、、俺と、、、その、、、、、、」
「シン?」
だんだんと声が小さくなり聞こえなくなって、カガリは小首を傾げた。
シンの告白に顔を引き攣らせたアスランと反対に、余裕で結果を推察していたラスクとキラは微笑んだまま‥
「そうだ。お前の言うとおりだ、シン。」
なのに予想外のカガリの返答。
「カガリ?」
「余計な心配をかけて済まなかった。」
カガリは拳を作るシンの手を取ると、真っ直ぐ謝った。
「あ、、、そのっ、俺っ」
意を決したシンの呼びかけに頷くと、カガリはアスランを振り返った。
「戻ろう、アスラン。」
いや、そうじゃなく!
「そうだな。カガリ、送ろう。」
何故、ここでアスラン!?
今の今まで出遅れていた、弁達の上がらなかったアスランがぱっと顔を輝かせ、カガリの横へ行こうとして、思いっきりすっ転んだ。
「あ、ごめん。引っ掛けちゃった?」
白々しく笑うキラを睨めつけ、身を起こしながら何度も引っかかった自分にアスランは涙を呑んだ。
そこへ微妙な着歌が流れ、続いて聞き覚えのある声がカガリのバックから響いた。
≪アスハ、話がある。≫
それだけで切れたケータイ。
「「「イザーク?」」」
口をそろえる面々に、カガリはケータイを調べながら答える。
「ああ。以前ジュール補佐がプラント代表となったラクスの行方不明と私の因果関係を提唱してな。その時特別仕様のケータイを持たされたんだ。それ以来ラクスの事じゃなくても隠密時はこれで連絡が来る。直通だから取次ぎの手間が無いって‥」
「「「ラブ定額!?しかも、着歌はラブソング!!」」」
アスラン、キラ、シンが崩れ落ちる中、ラクスだけは冷たく笑った。
『予算削減ですわ。』
「ラブ?‥とにかく私は急ぐから!じゃあな。」
時計を見ながら3人が立ち直るのを待たず、カガリは走っていってしまう。
「誘い出すのが一番上手いのは、イザークさんのようねぇ。」
ルナマリアは、先輩の手腕に思わず頷いた。


誰がラブ定額だー!これは仕事だ!!
後日、プラントでイザークの叫びが木霊した。
ちなみに選曲はディアッカが行っている。

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某番組で美しい夜景をバックにプロポーズするなら何と言うか‥って企画を見て、感性が違うなぁと思いました。
最近‥でもないか、ドイツも日本も(古)性格が崩れて収拾が付きません(笑)済みません(汗)。2006/01/22