ダーダネルス海峡
再び顔を合わせることとなったシンは、カガリに一撃放つと叫んだ。
あんたは!そんなふうに綺麗事を並べるばかりで、なんにも出来やしないんだ!
二弾目はキラの砲撃に相殺される。
それでもっ。何も出来なくても、見過ごすわけにはいかない!
庇うキラの前に出ようとするストライクルージュを、フリーダムは遮る。
無駄な事して、戦渦を広げてっ‥そんなんだから、アスランだってザフトに復帰したんだ!
シンの科白は、カガリから言葉を奪う。
「‥私‥‥は‥」
「カガリ、下がって。」
「キラ、あの、アスラ‥」
「今は戦場だよ。カガリ、下がって。この戦い、止めるんでしょ。」
「あ、うん。うん‥そうだ。止める、、、、こんな意味の無い」
「大丈夫。僕が付いてるから。」
フリーダムとストライクルージュの間を、グフイグナイテッドが割って入る。
アスラン、好き勝手させてる場合じゃないぞ!
「そういう訳じゃ‥」
戸惑うセイバーをハイネが揶揄する。
なんだよ。知り合いか?彼女とか!?
「そんなんじゃ‥幼馴染と、その双子の、、、」
焦るアスランはハイネが音声をオープンにしている事に気付かない。
幼馴染は王道だぞ!?
「違いますっ。幼馴染は、男の方で‥」
ハイネはノリが良かった。
なんだよ〜、危ないぞ!?
「危ないって、何がです!?」
双子の彼女が好きなわけ?それとも
意味深にハイネは言葉を切った。
幼馴染と同じ顔だから彼女が好きなわけ!?
「「「「」」」」
キラが、シンが。
カガリが、アスランが。
それぞれの機体の動きがピタリと止まる。
「ななな、何を言うんだ、ハイネっ」
へぇ〜(トリビア調)
「そう‥だったのか?アスラン‥‥!?」
あんた‥
「お前達も!そんな戯言信じるんじゃない!」
アスランは未だ通信を切り替えておらず、その叫びはカガリには届かない。
ゴメンよ、アスラン。気付かなくて‥
業とらしくフリーダムは、セイバーの前にその身を曝す。
アスランの気持ちは嬉しい。けど、そんな気持ちでカガリに近付いて欲しくない!
お前まで何言っとんじゃーっ
怒鳴っても、アスランの声は機体の外へ、肝心のカガリには聞こえない。
カガリは僕の大事な〔俺が護る。〕
途中で遮られてむっとするキラをよそに、シンは更に叫んだ。
〔そんないい加減な気持ちなら、俺がその人を護る!俺は、誰かの代わりになんてしない。俺は絶対裏切ったりしないっ〕
「お前、十分妹の替え玉にしてないか?」
挫けるアスランに、最後の審判が届く。
ごめん、アスラン。私、全然気付かなくて‥そっか、そうだよな。顔、同じだし‥
ちがっ、カガリっ
カガリ、君には僕が付いてるから‥ね!?
いいんだ、キラ。お前はラクスを全身全霊で護れよ!?ラクスは、絶対悲しませるな。
泣きそうな声に、キラがストライクルージュへと近寄ろうとするのを、今度はインパルスが立ち塞がる。
〔あんたも!彼女が居んなら、下がってろっ。カガリっ、あんたとは覚悟も考え方が違うけど、でも!護ってやっから、俺の手を取れ!〕
〔なっ〕
お前‥
野郎どもの怒声に隠れて存在するカガリの想いを、シンは聞き逃さなかった。
〔たとえ敵で、戦場でも!護ってやる。忘れるな!〕
言い置くと海上への艦隊へ身を翻す。
〔ちょっとカガリっ、あんなヤツの言う事を信じちゃダメだ!!〕
〔そうだ!カガリ。アイツは妹の代わりに思ってるだけだっ〕
悲壮なキラの制止も、やっと音声を切り替えたアスランの声も今のカガリには答えられない。
シン・アス‥カ‥‥、お前‥私、を?護ってくれるって、言うのか‥!?‥ありがと‥‥
〔〔カガリーっ〕〕
『面白い展開だな、これは。』
やり取りに気を取られて、守備が遅れた地球連邦・オーブ合同艦隊がシンに沈められていくのを、ハイネはタナボタと頷いた。

white impulse

あんなに毎回”キラ”って呼ばれると、本当にカガリが好きなのかって、叫びたくなったり‥。ええ、心、狭いです(笑) 2005/9/12