包もう
                手で、
                           声で、
      包み込こもう
                                   抱き締めよう






「、、、、っあんたさぁ、なに溜息ついてるわけ?」
「シン?‥溜息、ついていたか?」
重症を過ぎてんじゃねぇの、それ
シンはカガリの横にどかっと音を立てて座った。
カガリはオーブ代表としてここ、プラントを訪れていた。その護衛として名指しされたのはシンで、
「どうして俺がっ」
彼らしい第一声に、カガリは笑ったのだが
「‥‥‥」
シンはカガリを盗み見る。
『目の下には‥隈は無いな。目も‥赤くないし‥飯も残してなかった。朝も寝坊しないし』
お前じゃあるまいし、というヴィーノ声が聞こえた気がしてシンは口をへの字に曲げた。
『だけど』
シンは頭をガシガシかいた。
『表面じゃなくて、なんていうか』
シンは手を止めると、荒々しく立ち上がった。
「あ〜、もう、やってらんねぇっ」
「シン?」
驚くカガリの手を取ると、シンは勢い良く引っ張った。
「あんた、バカ正直なんだから」
『違うっそんな事が言いたいんじゃなくて、、、あぁ、なんで良いセリフが浮かばないんだ〜』
内心泣きながら、シンはカガリに腕を回した。
「シン?」
「黙ってろ」
「?‥‥‥あ、抱き締められたいのか?」
シンの腕の中で突っ立っていたカガリは、クスリと笑うと反対にシンを抱き締める。
「ちがっ、俺、、、あんたがっ‥」
驚いて万歳した姿勢のシンの背を、カガリはトントンと優しく叩く。
「よしよし。」
「”よしよし”じゃねぇーっ」
「‥落ち着かないか?」
「落ち着けるかっ」
「キラは落ち着いたぞ!?」
「え?キラ・ヤマトが??」
キラが誰かに抱かれている姿は、フリーダムと戦ったシンには、にわかに信じられず
『あぁ、でもラクス・クラインが‥』
思い当たったが、それは今の自分のように抱き締められているというより、抱き付かれているというような‥。それをカガリで思い当ててみる。
『いや』
シンは小さく首を振った。
『カガリになら‥抱き締められたのかもしれない』
         体温の高い、君の腕。心地よくて
シンは上げていた両手をそろそろと、カガリの体に回そうとして‥
「わっ?」
いきなり引き剥がされた。
「何す‥ジュール議長補佐!」
シンの後ろに立っていたのはプラント最高評議会議長補佐を務めるイザーク・ジュールで、彼はずいとシンを押し退けカガリの前に立つと、カガリを抱き込んだ。
「イザーク?」
「たまには抱き締められるのも悪くはないだろう。お前は、いつもオーブや仲間達を抱き締めているんだからな。」
「私は‥」
「抱き締められたくなったらいつでも来い。それぐらいは、してやる。だから、シャキっとしろ!貴様はオーブ代表なのだろう。」
「イザーク‥」
「護衛ごときに心配をかけるな。抱えきれないなら、引き受けてやるから。」
「悪かった。」
「詫びならシンに言え。」
「うん。ごめん、シン。心配かけた。」
「俺は、、、べつに‥」
言いたかった事をイザークに言われ、シンは思いっきりイザークを睨む。
「何を睨む、貴様。」
「何って、あんたがっ」
「俺が何だ!?」
「だからっ、、、あんた‥」
自覚が無いらしいイザークに、シンは唇を噛んだ。
『無意識の奴に負けるなんて‥』
そんなシンの様子を訝しげに眺めた後、イザークは鼻を鳴らして背を向けた。
「2時間後に会食だ。遅れるなよ。」
「会食は‥1時間後じゃなかったか?」
カガリが時計を確かめる間にも、イザークは遠ざかっていく。
『あ』
イザークの心遣いにカガリは小さく笑った。
「イザーク」
カガリの叫びに足を止め、イザークは頭だけを向ける。
「ありがと。」
「礼ならいつでも受け取ってやる。」
気が弱くなったらいつでも来いと
イザークはそう暗に言うと片手を上げ、そのまま去っていった。
『気障。』
シンはイザークの消えた廊下に向かって、心の中で舌を出した。
「シンも、ありがとな。」
「、、、手間かけんじゃねーよ」
「済まない。気を付ける。」
照れ隠しで背けた顔に、また詫びの言葉がかけられて、イザークの勝ち誇った顔が思い出される。
『違うって‥あーもー、分れよ。』
拳をぎゅっと握ると、シンは意を決してカガリを振り返った。
「さっき、、、、ジュール補佐が言ってたけど‥あんた、仲間を抱いてんだろ‥」
「そういう意味ではないと思うが!?」
「とにかく!」
シンはひとつ咳払いをして、言葉を継いだ。
「相手を落ち着かせるような抱き方が出来るように、俺で練習しろ!」
カガリは瞬きすると、首を捻った。
「‥確かに。どうせ抱き締めるなら、相手を落ち着ける方が良い。キラにでも相手してもらって」
「それはダメだ!」
自分の両手を眺めていたカガリは、シンの語気に顔を上げた。
「キラ・ヤマトはっ、、、、キラさんは、その、、、あんたに甘いから、、、、練習にならないっ」
「そうかな?‥‥‥、そうかも‥ううん、そうだな。」
「俺なら、、、ちゃんと叱ってやる。」
一瞬きょとんとした後
「ああ‥そうだな。よろしく頼む。」
カガリは晴れやかに笑った。






も〜めんとに載せるには長過ぎて、しかし1本で上げるには短い‥(涙)。7月竜のイザークはカガリを戦友と無自覚 に捕えてます。だから優しくて厳しい。シンはカガリ
    に認められたくて、キラはカガリに甘えん坊で、ラクスはカガリを守ってあげたいイザークとカガリは天然さんだと思ってる‥えへ(汗笑)。2006/07/14







竜足

外交最終日

「護衛の任務は昨日付けで終わりだよ。ご苦労様。」
「キラ‥さん」
カガリを迎えに来たシンは、キラに捕まった。
「呼び難いなら”さん”を付けなくてもいいよ。」
「いえ、先輩ですから。」
シンは硬く言うと、目でカガリを捜す。
「それより終わりって、聞いてませんけど。カガリは‥?」
「”カガリ”ね。カガリも僕と同い年で先輩だと思うけど。」
「‥っ、カガリは貴方とは違いますから。」
キラは肩を竦める。
「カガリは僕がオーブへ送る事になったから、心配は要らないよ。」
「べつに心配なんかっ‥」
反射でついムキになったシンは、キラが笑うのを見て
「ちがっ」
慌てて首を振った。
「そ〜じゃなくて、なんであんたがカガリを?」
「僕は君と違ってカガリを心配しているからね。それにカガリは、君に無理に護衛をさせたと気にしてたから、僕が代わると言ったら快く承諾したよ。」
「謀ったな。」
シンの前には強大な壁が立ち塞がっていた。

一方

「今回の会談日程では色々とご苦労様でした。」
ラクスの礼にイザークは頭を下げる。
「ですが、オーブ代表をもてなすのはわたくしの務め。これからは、カガリさんの事はわたくしに報告し任せてくださればいいですわ。」
頭を下げていたイザークは、眉を寄せてラクスの言葉をリピートし、理解すると
「なんだ、それはっ」
がばっと頭を上げた。
「なんだもなにも、わたくしとカガリさんは公私で友人ですから、カガリさんの事はわたくしがいたします。」
「公私混同は外交上問題だ!」
「政策上での公私混同は問題ですが、交流では仲良くが目標です。」
「貴様はし過ぎだ!」
「貴方こそ!、カガリさんに構い過ぎですわ。」
「構ってなどいない!」
「構ってます!」
イザークの前を塞ぎたいラクスだが、自覚のない相手に悟らせないよう邪魔するのは、なかなか難しいようだった。

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