カガリがキラの部屋にくる事は珍しくない。カガリは良い意味で遠慮しない性格で、男女年齢分け隔てなく、真直ぐ相手を見る為、交遊範囲は広いからだ。
だが、今日は少し違う。
部屋にやってきたと思ったら、黙ってキラのベッドに腰掛ける。
キラも、カガリに対してはお客様のようにもてなした事が無い。でもいつもと違う雰囲気に、キラは正面の椅子にではなく、カガリの隣に腰を下ろした。
いつもより少し近くにある体温。
キラは内心ドギマギしながら、膝の上で拳を握った。
『カガリ、、、ユラ:アスハ』
キラはこの気持ちを知っている。
フレイに憧れ、曲がりなりにもそういう行為にまで及んだ。
そして今なら分る。
彼女が自分を利用したように、自分も慰めが欲しかったのだと。同情して欲しかったのだと。
『カガリは違う。カガリには‥カガリは抱締めたい。』
キラがちらっとカガリを伺うと、機を見計らったようにカガリは口を開いた。
「‥あの写真、さ、、、」
「え?」
オーブを、地球を飛び立って見せられた写真。
兄妹 あるいは 姉弟
『そんな実感涌くはずも無い。』
キラは正面を向いた。
「カガリのお父さんは、ウズミ代表でしょ!?」
「当たり前だ!」
顔を上げて正面を向いたままのキラを睨んだが、すぐまたカガリは俯いた。
「‥わたし‥‥」
「僕‥キラ・ヤマトだから。」
「え?」
「キラ・ヤマト!」
「それはっ、、、知ってるよ‥」
少し怒ったように頬を赤らめるかガリに、キラは苦笑した。
「色んな事があり過ぎて、疲れてるんだよ。カガリはいつも真直ぐだから。」
「人を馬鹿みたいに言うなよ。」
「カガリは馬鹿だよ。」
キラはカガリへと向き直ると、そのまま自分のベッドに押し倒した。
「お前には言われたくないぞ!?」
「そりゃ、、僕も鈍いけど。大事な事は知ってるつもりだよ!?」
「そっかぁ?」
「そーだよ。」
「そっか‥」
狭いベッドで向き合いながら、カガリはくすくす笑った。
「今日さ、泊っていっても、いい?」
「僕も一応男なんだけど。」
「でも、弟。」
「だからそれは‥」
キラは自分の腕を掴むかガリの手が小さく振えているのを感じた。
「せめて兄にしてよ。」
「狭く、し‥ごめ‥‥」
「カガリ?」
「‥‥‥」
「もう寝たの?」
安心したように自分の腕の中で眠るかガリを抱締め、キラはその金の髪に鼻を埋めた。
「僕は、アスランのように君を宝物にはしない。カガリは血の通った人間だ。壊さないように仕舞ったりなんてしないから。力尽くだって、抱いちゃうよ?カガリ‥」
キラはカガリの胸元に手を入れると、件の写真を抜き取った。
微笑む母親と二人の赤ん坊
『こんなモノ‥、こんなモノで‥‥』
安心しきって眠るカガリに、キラは複雑に笑うと写真を枕の下に隠した。
「お休み、カガリ。」
カガリが楽な体勢になるよう抱き直すと、キラは電気を消して目を閉じた。



「カガリ、知らないか?」
覗いたブリッジでラクスを見つけ、アスランは遠慮がちに問いかけた。
「その、落ち込んでたみたいだから‥」
「カガリさんは、キラのお部屋ですわ。」
「そうか。なら、いい。」
安心した様子のアスランに、ラクスは頬杖ついた。
「良くありませんですわ。カガリさんは可愛らしいし、キラは男ですもの。」
「え?‥何言って、、、あの二人は兄弟」
「好きな事に兄弟なんて関係ありませんわ。性別もね。」
さらりと爆弾を投げるラクスに、アスランは言葉を失った。そのまま優雅に立ち去るラクスを見送ると、ようやく現状に立ちかえる。
「あ‥?」
アスランはラクスがキラの部屋を盗聴していた事を知った。
「何言ってるんだ、ラクスは‥」
混乱しながらも無意識にアスランは胸のペンダントを触った。
『俺が守る。』
ナチュラルからもコーディネーターからも、このおろかな戦争からも。
だがヘンに不器用なアスランは、敵が間近にいる事に、いまだ気付いていなかった。

たぶんココで一番のオットコ前は、ラクス嬢です(爆) 2005/04/10

戦士 (SEED41話巡ってゆれる世界)

7月竜