「カガリは、、、、本当のお母さんの事とか‥、知りたくは、ない、の?」
「え?、、、、、あぁ‥そうだなぁ、知りたくないって言えば嘘になるけど‥どっちでもいいや。」
防御ガラス越しにエターナルの整備作業現場を眺めていたカガリは、キラを振り返るといたずらっ子のように微笑んで、手すりに頬を乗せた。
「キラは知りたいんだ!?」
「‥‥‥ 」
口籠って視線を逸らせたキラの腕を、慌ててカガリは掴んだ。
「ごめん。」
「え?」
謝られるとは思ってなかったキラが、今度は慌ててカガリを見直した。
「ごめん‥」
俯いて、もう一度カガリは謝った。
何を謝っているのか。意味をつかめなくても、自分が俯かせてしまった事に、キラは焦る。
「カガリっ、あのっ。」
「私はさ、お父様が‥血は繋がってなくてもウズミ・ナラ:アスハの獅子の娘だと思っている。だから、、、、えっと、違うな、うん。もちろん本当の両親の事も知りたいけど、その前にアスハの名に恥じないように生きたいと思ってる。」
カガリは自分自身に確かめるように言葉を紡ぐと、また手すりに頬をつけてキラを見上げた。
「キラが、、、、っと、違う違う。キラは本当の両親の事調べても、良いと思う。」
『カガリは率直だ。考える前に言ってしまうから頭にもくるし、誤解もされるけど、カガリの言葉には嘘がない。』
キラの事は分かってると言いたげに、子供のようにキラキラ輝くカガリの瞳からいったん視線を外すと、キラも手すりに顎をつけた。
『そういやアスランも嘘はつけないタイプだよな‥‥、僕は、大切なものを守る為なら、嘘をつく。たぶんラクスも‥、いやラクスはもっと嘘を使い分けられる大人だけど』
「本当の両親も」
物思いに沈んでいたキラは、カガリの声に現実へ戻る。
カガリは組んだ腕に顎を乗せて、視線をフリーダムへと移していた。
「キラを育ててくれた両親も、どっちもキラの事が大切で好きだったと思うよ。」
「カガリ‥」
「ほら、馬鹿な子ほど可愛いって言うだろ!?」
「いでっ」
でこピンを決められ、キラがおでこを押さえるのをカガリは笑って見ている。
『カガリは‥知らない。本当の父親のやった事‥‥』
黙ったキラに、カガリは視線を格納庫へと戻した。
「そうだなぁ‥」
沈みかけたキラの意識をカガリが呼び戻す。
「感謝‥する、、、ううん、してる。」
「え?」
「本当の両親にも。」
「しなくていい!ヒビキ博士、、、アイツのやった事、カガリは知らないから‥」
頬を両手で包まれた と思った直後に、キラはぐいっと顔の向きを変えられた。
「痛っ、カガ‥」
「感謝してる。」
顔を顰めたキラが文句を言いつつ薄目を開けると、正面からカガリはキラを見つめていた。
「カガリ‥?」
「だって、キラをくれたもの。感謝するよ。」
「カガ、リ‥」
腕が首に回り、キラはカガリに抱き締められる。
「感謝する。ヒビキにも、ヤマトのご両親にも。キラを生んでくれて、育ててくれた。泣き虫だけど、イイ子にな。」
「泣き虫は余計だよ。」
抱き返しながらキラは目を瞑った。睫が想いの滴に滲む。
「カガリが傍にいてくれるなら、感謝してもいいかな‥」

この温もりを抱き締めていられるなら、運命にさえ感謝してもいいかも

「そうか!?キラがそう思えるなら、私も嬉しいぞ。」

理由や理屈・計算や理論の前に、ただ、自分を。ただのキラとして愛し支えてくれる、人。
『護るから‥』
生きる背を押してくれる存在に頬を寄せて、手を離さないと。手離せないと‥
抱き締めて、抱き締められて
血よりも濃いものがあると、キラは微笑った。

血よりも濃いもの‥深読みしていただけると嬉しいです。ええ、キラxカガリですから;笑。2005/0831

きら  かがり