「よぉ。」
聞こえた声に辺りを見回したアルは、道から外れた1本の木下に一人の少年を見出した。
そこそこの距離があるのに、少年の声ははっきりとアルに聞える。
不思議な空気。
アルはもう一度周りを見て誰もいないのにも怯まず、道を外れ少年へと足を向けた。
鎧の体で過ごしたはずの4年間を持たないアルは、少年が誰か思いもつかない。しかし、相手はアルを知っているらしく笑っている。
「こんにちは。」
10歳に戻ってから、新たに築いた時間。周りが暗に無理だと苦笑する中、アルは兄を探す・エドと必ず逢うという絶望に等しい達成困難な決意を、希望として受け止めてきた。
確信ひとつ無く、ただ逢いたいという気持ちだけの挑戦は幾度も打ち砕かれ、だが、アルはその度に立ち上がった。それは持ち前の強さだけではなく、周りに育まれ自ら培った前向きさ。
その強さで、アルは少年に笑いかけた。
「はっ、<こんにちは>かよ。」
吐き捨てるように言われて、アルは戸惑う。
「ごめんなさい。僕、以前の記憶が無いんだ。あの?」
「そりゃ御都合な事で。俺がどんなにお前達を、、、、、いや、そうだなぁ。」
アルの胸倉を掴み上げた少年は、思いついたようにニヤリと笑った。
「エドの目の前で、エドの格好でお前を犯しちゃうのも面白いかもな。」
アルの眉が上がる。
「兄さんに、何かしたら許さない!」
エドに、では無く、お前にするんだけどなぁ とエンヴィは思ったが、とりあえず目の前の少年のまっすぐな怒りの方が面白くて、訂正はしなかった。
「へぇ〜、どう許さないんだ?」
「兄さんはずっと僕を守ってくれてた。だから、今度は僕が守る!」
「なんだ、向こうから戻ってきて、まぁだぐ〜たらしてんのかよ。頭にくんなっ」
そこでアルは、少年がエドが門の向こうへ行った事を知っていると気付いた。
「あの、君は?門を、兄さんが門の向こうへ行ったのを、知っているの?」
「ああ、俺も行ったからな。」
「え?君も?」
「もともと門の狭間にいたしな。」
少年はアルの肩に両手を回し、抱き込んだ。
「俺の名前はエンヴィ。お前たちの父親、ホーエンハイムに創られた息子の成れの果てさ。」
「父さ、、、、息子?じゃあ‥」
「そう。俺はお前達の兄でもあった人間の‥」
「兄さん!」
抱き込んでいたはずが抱きつかれて、エンヴィは一歩よろめいた。
「ああ?」
理解できない展開に苛立ったエンヴィを、アルが見上げた。
「だって、兄さんでしょ!?」
「いや、だから」
「そっかぁ、誰も教えてくれないから‥。兄さんも兄さんを、あ〜ややこしいな。エンヴィ兄さんもエド兄さんを連れ戻す手伝いをしてくれたんだ!?」
ややこしいのはお前だ
エンヴィは口にする前に、肩から力を抜いた。
自分にすりすりと頭を寄せる子供。
「これはこれで、楽しめるか‥」
エンヴィはため息をついて天を仰いだ。

エンヴィ教室

おおよそ(笑)TV設定に、劇場版のスパイスが少々ふりかかってます。
子供のアルは記憶を取り戻してませんし、エドとアル、ホーエンハイムやイズミ、ロイ達面々の
協力によりエド達はアメストリスに戻ってきてたりします。
ここはそんな、似非世界(爆)