arcana 2

7月竜

2004/8/8 猫に鈴・狗に鎖

リゼンブールへ逃走する。
砂の海を走る中、偶然触れた、お互いの‥
「!」
現れた光。あるいは、導かれた‥
「‥‥、今のなに?前にも見た事ある‥、あれが真理?」
アルの声に、エドは現実へ引き戻される。恐怖と、諦観とともに
「師匠は違うって言ってたけどな」
「ただ触っただけなのに、なんで」
「錬金術師である俺は、無意識に反応させたらしい‥賢者の石を」
「兄さんは信じてるの?僕が賢者の石になったなんて。だいたい賢者の石ってこんな‥」
「誰も見た事が無いんだ。どんな形をしていても不思議じゃない。」
エドはアルから顔を背けると、低く呟いた。
「それより、あまり俺に近付くな‥」
「兄さん‥」
「うかつに触れるとまた錬成反応が起こる。お前の体をとり戻す前に、お前自身が消えちまっちゃ意味が無い‥」
言い聞かせるように紡いだ言葉は、アルにか。それともエド自身にか‥
「うん‥‥、じゃ僕はもう錬金術師じゃないんだ‥」
寂しそうなアルの声に、エドが振りかえる。
「今、賢者の石は無意識の兄さんの錬金術に反応しただけで僕には反応しなかったんだよね!?」
「ああ‥そうだ、な‥だがそれは、お前が錬成陣を書いてないからだけだ。」
「そうかなぁ。でもラッセルは赤い石で錬成陣無しの錬金術を使ってた」
「ラッセルぅ?あんなヤツとお前を比較するな!(俺のアルをラッセルなんかと、比較するのも)勿体無い。」
「そうだね。ラッセルは兄さんに近い才能があるし」
「確かにヤツには才能があるが、お前ほどじゃないぞ!?あ〜ラッセルなんかこの際どうでもいいだろ」
「‥そうか、そうだね。それより僕、人間でもないんだ‥」
「お願いですアルフォンス君、お兄ちゃんの話も聞いてください。」
「だって僕、石でしょ!?そりゃ今までも鎧で人ではなかったけど、でも、兄さんが命懸けで僕を呼び戻してくれたから、兄さんの血印のおかげで魂だけの存在でも錬成できてた」
先ほどまでとうってかわったエドの声がアルを遮る。力強く。絶対の自信を伴って。
「賢者の石である鎧にお前の魂が定着しているだけであって、お前が人で、アルである事に変わりは絶対無い!」
「‥錬成も、できるかな」
「今はやるなよ。安全を確認してからだ!」
小首を傾げるアルに可愛いとかイッテる事を考えながら、エドは釘をさす。
「‥‥‥‥、と言う事は僕の実力ってリオールのコーネル教主、ううん、ゼノタイムのマグワールさん以下って事!?」
ガ〜ンガ〜ンガ〜ンという音まで聞こえてきそうなアルの落ち込みに、エドは額に手を当てた。
「だから、どうしてそうなるんだよ。」
「だってあの人達、赤い石を使えてたじゃない!?僕は使う事すらできないんだよ!?」
「そうくるか。だからそれはだな〜〜〜っあ〜(アルを助ける為とはいえ)面倒くせぇ事しやがってぇ、スカーのヤロー。どうせなら元に戻すとかだな‥、いや!アルを戻すのは俺だから、それはいい!って事は余計な事をしなかったと誉めるべきか?」
腕を組んで悩めるエドに、今度はアルが溜息をつく。
「面倒だとすぐ切れるんだから‥まぁでも、僕はなにかが問題じゃなく、僕が賢者の石になったんならどうやれば兄さんが元に戻れるのか考えなきゃ!他力本願で辛いけど、使い方、聞ければ良かった。他にも、もっと話をしたかったです。スカーさん‥あ、そういえばスカーさん」
ブツブツ独りごちるアルのスカーと言う言葉だけ耳聡く聞き取ったエドが、素早く反応する。
「スカーがなんだって!?」
「あ、うん。記憶が薄れる前にたしか<これでお前は邪な錬金術師からは守られる>とかなんとか言ってたような」

   うかつに触ると錬成反応が起こる⇒アルに近付けない邪な錬金術師からアルの貞操は守られる

瞬時にチャートが組みたてられ、エドはスカーの勝ち誇った笑いを聞いた気がした。
っ殺す!
「兄さん?どうしたの?」
リオールへと向きを変えたエドにアルは慌てた。
「スカーの野郎、ぜってぇぶっ殺す!
「ぶっ殺すって、スカーさん、生きてるの?」
明るくなったアルの声に、エドは更にスカーの陰謀を疑った。
『アル〜〜〜、兄ちゃんトコ戻ってきてくれ〜』
半泣きになるのを辛うじて抑え、エドは再びリゼンブールへ足を向けた。
『しかし今は、追って来るホムンクルスから、俺の造った罪からアルを守るのが先だ‥、だが、スカー。覚悟しとけ。居場所があの世だって絶対ぶん殴ってやるからな!』

リゼンブールまで、あと僅か
(アルが明るくなったのはスカーが生きてるかもという希望もありますが、兄ちゃんを戻せるかも、という光に気付いたからです。ええ、エドアルですから[笑]。しかしエドさん随分慎重になったもんだ。成長したと言うべきなんだろうか。アルには自分が見えなかったんですよね!?[読み取れよ、自分;苦笑]。
もっと短く簡単に触れない理由を書こうかと思ったんですが、エドの気持ちを配慮し[笑]、アルのフォローを入れてみました。でもこれじゃオチない〜つまんない〜〜。それはそうとパパがいるんい墓暴くのかな?パパ、別の方法知ってそうだ




2004/8/4 教育の定着 DVD第7巻

「ずっと。恐くて聴けなかった‥アル、俺の事、恨んでないか?」
錬成した壁を背に弾丸を受けながら問われた瞬間、アルは動きを止めエドを見やった。
「兄さんが恐くて聞けなかった事って、それ?」
「恨んで、ないか‥?」
「そんな事なの?も〜」
「へ?」
アルの意外な反応に、エドは逸らしていた視線をアルへと向けた。
「僕なんか自分が本当に人間だったのか作り物なのか悩んでたのに。」
「バカヤローッ。そんな事とは何だ!俺には大問題なんだぞ!?お前の悩みこそ!かりに俺が作ったんだとしたら‥あ‥俺が作ったんなら俺のもんだよな!?」
「ひどっやっぱり僕は作り物なの!?」
ムンク状態のアルにエドは満面の笑みを向けた。
「だったら俺はお前の母さんだよな!うんうん。足の裏から髪の毛の先まで全部俺の‥v」
お父さんと言わないあたり、ファザコン度が強いエド。そんな、頬を両手で包み込み自分の世界に浸るエド達の元へ砲弾が打ち込まれる。つんのめりながらもエドは自分の生死をも左右する悩みを思い出した。
「それよか、アル。お前はどうなんだよ。俺を、恨んでるのか?」
一転して死にそうな顔で自分を伺うエドの耳をアルは引っ張った。
「兄さんを恨む事なんかありっこないよ!」
パァっとエドに光が射す。
「ホントか!?」
「でも、僕が作り物ならその気持ちも兄さんが作った事になるけど。」
「うっ‥それは、嫌だな。アル自身が俺を好きじゃないとな」
「いー加減にしなさいよ!」
エドの頭にウィンリィのローヒールがめり込む。
「そーだぜ!早く肉を切らせてくれよ。」
66の言葉にウィンリィに踏み潰されていたエドが真顔になる。
「お前だけは絶対許さん!俺がっ」
ぐしゃ
右腕を斬鉄剣に変え、構えるエドの目前で、無言のスカーに踏み潰される66。
「あ〜てめぇ!そいつは俺が!だいたい美味いトコ盗り過ぎ」
「‥‥‥」
憤るエドにスカーは冷たい視線を突き刺すと、とっととその場を立ち去った。
一方
「アル、あんたは作り物じゃないわ。もし作り物だというなら、わたしが貰ってあげる。大丈夫!メンテは万全だから。」
「あ〜ウィンリィ、お前までなに言ってんだよ!」
「お母さん、アルを下さい。」
胸に手をあてエドに頭を下げるウィンリィ。
「誰がお母さんだーっアルは誰にもやらん!!」
『本物の人間で、こんな環境で育った過去よりも、いっそ作り物でこれから新しい記憶を定着させていく方が建設的かも』

《エド、母さんの名を語るのは許さないわよ〜》
後日、天に召されたヒューズは、エリシアの惚気をする間も無く、トリシャからエルリック兄弟の情操教育が悪い・監視が甘い・死ぬんじゃなかった等、猛烈なPTA会議を聞く事になる。
(やっと見ました、第24話。鋼の心から続く兄弟の葛藤は期待が長かった分、それだけ?な感想に[自分のせいじゃん;汗]。アルの反応にワクワクしてたのですが、そんな簡単で良いの?エドに憤ってられ無いやん、とか[笑]。7月竜にはお兄ちゃんが主役の話に見えました。改めて主人公で、他はツマなんだなぁと[涙]納得です。)



2004/8/1 暴走代理人(恐竜バット現る)※アニメ第41話(聖母)・第42話(彼の名を知らず)を見てないと分りません。

「大佐はいったいどこに?」
「分らりません。とにかく見つけてアーチャー中佐‥あぁ、今は大佐でしたね。ヤツの命令違反を報告しないと。」
「中尉も居ないぜ?一緒かな。」
「こんな時、ブラックハヤテ号が居てくれたら‥」
くるっ
「役に立つか!!」
急に向きを変え向き合ったハボック、ファルマン、ブレダに、後をついていたフュリーは思いっきり鼻をぶつけた。

【ケンカしないで‥下さい。】
「やはりアルフォンス君は良い事を言う。」
うが〜〜っ放せ!少佐〜。今すぐこの色ボケ大佐をあの世に送らなければ〜っ
「”アル”と呼んで頭を小突いただけではないか。その前に我輩にもされておる。心配する事はあるまい。」
「”アル”って呼んだんだぞ!”アル”ってっ」
「先週はエドワード君の事もエドって呼んだでしょ!?お揃いじゃない。」
タッカーの煎れた紅茶に口を付けながら、ホークアイは涙目のエドに言い切った。
お揃い〜〜?
「落ち着いて、兄さん(汗)。ほら、兄さんだって大佐に手紙を送ってるじゃない。信頼してるんでしょ。」
アルが指差すTV画面では、大佐がエドの手紙を説明していた。
【アルはリオールへ向かへ。彼と一緒ならエドに会えるだろう。】
「わ〜〜〜兄さんっ、こんなトコで金槌なんて錬成しないで。」
また”アル”って言った‥アルって
「兄さんの事も”エド”って呼んでただじゃない!?一緒でしょ。」
目が行っちゃってるエドに他の事柄は見えていない。
「エドワード君、TVを壊すとこの後問題のスカーとアルフォンス君のやり取りが分ら無くなるわよ」
ホークアイの言葉にエドが理性を取り戻す。
「”は‥ちっ、ここが1週遅れの放映で助かったぜ。」
「まったくだ。予告だけではキンブリーがアルフォンス君に何をしたのか分らんからな。」
「って、それよりあんた。手紙、アルに見せてないのかよ!?」
「私宛の手紙を何故アルフォンス君に見せねばならん?仮にも軍事関係の事柄だろう!?」
それは最初の2行で!後は俺のアルへの愛と心配してる事、どこに居ても見守ってる事が書かれてただろう!」
「さあな」
てめっ
エドがロイの胸倉を掴んでいる側らでは
「アルフォンス君、銀時計はどこに仕舞ったの?足のところにポケットがあるけど、使わなかったわよね!?」
「”あ、兄さんの物は僕の体の中に入れとけって兄さんが‥」
形成逆転。今度はロイがエドの首根っこを掴み上げる。
「貴様、何を考えてる!」
「静かに!アルフォンス君の心打つセリフが聞き取れませんし、少尉達に見つかりますよ。」
【人殺しはもう、たくさんです。もうこんな事は終わりにしませんか、スカーさん。】
わ・分ったから、中尉(汗)いちいち銃を構えるのは止めてくれないか!?
こんな時ばかりは一緒に愛想笑いをするロイとエド。
「おや、キンブリーはアルフォンス・エルリックがどこに銀時計を仕舞ったか、知っていたようですな。」
そこにアームストロングの爆弾発言が投下される。
なに!?
いっせいに3対の目が画面に注がれて
ぶっっっ殺す!
人体錬成でキンブリーを生きかえさせろ!私が灰も残らぬよう焼いてやる!
国家錬金術師2人の暴走は国家錬金術師に任せて
「アルフォンス君、大丈夫だったの!?」
ホークアイに詰め寄られ、アルはたじたじと後ずさる。
「あの(汗)、銀時計盗られただけですから。」
「でも!手が。」
そうだ!手がっ!!
「アルフォンス君、今すぐ加熱消毒しよう!」
ホークアイの後から現れたエドとロイもがぶり寄り、アルは縮こまって壁に懐いた。
【あ〜イイ感触だ。】
とどめのキンブリーの声が流れる。
TVを振り向いた3人の目に映ったものは
あーーーーっアルの足〜〜〜っ
エドは頭を抱えて絶叫し、ロイは色が抜け落ち
ガンッガンッガンッ
「これホークアイ中尉。このTVは軍のもの」
アームストロングの錬成で破壊は免れたものの、3人の憤りは収まらない。
「教育上良くありません!」
「殺す‥殺す殺す殺すーーーっ
「ヤツの存在は痕跡も全て、跡形も無く燃やすべし!」
「しかしですな。この続きにはスカーとのやり取り等が収録されて入るかと」
押し黙った3人の前でスカーの告白が続く。
【エルリック兄弟は互いが互いの為に生きている。兄は弟を、弟は兄を愛している。】
「あ、コイツ良い事言ーじゃん。」
途端にエドの機嫌が跳ねあがる。
な!アル。」
壁際で丸まっていたアルの肩を抱くとエドは画面を指差した。
「兄さん‥アーチャー中佐に片手で吹き飛ばされたんだね。」
!!!!
「本当ね。」
「鍛え方が足らんぞ、エドワード・エルリック。なんなら我輩が‥」
魂の抜けたエドを他所にホークアイは尋ねた。
「スカーは錬成できないんですよね!?確かエドワード君が言ってましたが、腕に描かれた錬成陣が無意識に対象物を理解し破壊すると。そうだとすると、以前マルコー博士と一緒のエドワード君達を襲った時、何故鎧のアルフォンス君やエドワード君の機械鎧を1度で破壊しなかったんでしょう?無意識かで行っているなら最初の時に2人とも殺せたでしょうに‥。あの時はいかにも、生身を想定して破壊をしたような事を言ってましたが」
「今となっては謎だな。なんにせよ、アルフォンス君が無事ならそれでいいさ。」
「まぁ、そうですね。」
そんなんで納得して良いのか?の軍人を尻目にアルフォンスは再会場面を見つめながら抜け殻の兄に呟いた。
「兄さん‥本当に僕を心配してたの?」
ぐはっ
エドワード、吐血。
エドワードが来週までに復活できるかは定かではなかった。
(何故あそこに銀時計を仕舞う?どうして銀時計の在りかを知ってたの?プライド、声の割りに存在薄いよ。もっと活躍しないと;笑)



2004/7/29 バリーと秘密の小部屋(スウィングフィギュアっていったい‥)

「何よ?ここ‥」
ウィンリィは忍びこんだ軍研究施設の1室を呆然と見まわした。
懐中電灯に照らし出されたそこには所狭しと奇妙な物体が並んでいる。
「‥、塩ビニ製!?これはいったい‥」
手に取った1体を観察していたウィンリィは背後から伸びてきた手に、驚いて手の中の物を取り落とした。
「危ねぇ!」
白い手袋をした手が慌てて、でも優しく物体を掬い上げた。
「ここで何してる?ウィンリィ!?」
低い声。
「それ、何よ?」
忍びこみが露見し、それを咎める声にも関らず、ウィンは平然と聞き返した。いや、むしろ憮然とした声で。
「まさか、〃アル〃とか言わないでしょうね!?ソレ。」
腰に手を当て指差すウィンリィに一瞬エドが怯む。
「こ・これはだな〜」
「電気、点けてよ。どこ?スイッチ。」
エドの返事も待たず、エインは部屋を調べると、隠しスイッチを見つけ押した。
流れ出すラブソングと天井から幾筋ものスポットライトが様々な色を伴い、部屋の各所に注がれた。
「‥‥‥、へたくそ。」
どうやら鎧らしいが、アルとは言えない代物がゴロゴロ。
「っせー!」
「どうしてアルの人バージョンは造らないの?」
目を逸らすエドにウィンは含み笑った。
「不細工の自覚はあるんだ!?」
「っ、それよりお前こそ、ヘンな部屋作ってるらしいな。」
「あんたに変って言われたくないわね。」
「どうせ機械鎧ばっかなんだろが。」
「アルもあるわよ。」
「!」
「欲しい?」
「〜〜〜ぅ」
「要らないなら良いのよ。わたしがその気になるなんて、滅多無い事なんだけどさ。」
「ぅ〜〜〜〜〜っ、くれ!」
「泣くほどの事?」
「お前に頭を下げるなんて‥」
ゴスッ
振り下ろされた懐中電灯の下でエドが蹲る。
「これぐらいで勘弁しておいてあげるわ。」
確かに。ウィンリィにしては可愛らしい殴り方で、更にアル模型までくれるという事は!
「お前、何を企んでる?」
「ふふ〜、わたしも秘密部屋欲しいのv」
「それが俺とどういう‥!、お前まさか。俺の研究室に!?」
関係者以外立ち入り禁止のはずの軍研究所のエドの部屋に、ウィンリィの秘密部屋をつくる‥重大な軍規違反。
「馬鹿言う‥」
エドの前につきつけられたのは、全関節稼動の1/10スケールアルフォンスモデル。
「ノープロブレムだ!」
エドはウィンの手を取った。

「兄さんやウィンリィの秘密部屋をどうして貴方が知ってるの?」
咎める言うより呆れた口調で、アルはバリーを見た。
「嬢ちゃんを案内したのは俺だし、第5研究所の秘密部屋造りのノウハウを教えたのも俺。」
「‥で、幾ら儲けたの?」
「肉切り包丁を新調できるくらいには。」
かかかと笑うバリーに、アルは溜息をついた。
「で、どうする?案内賃は大まけに負けて5000センズでどうだ!」
背を向けたアルにバリーは慌てる。
「国家錬金術師の秘密部屋だぞ!?お前だって見た事ないだろ!?」
「いいよ、兄さんの秘密部屋じゃ想像がつく。10センズだって高いくらいだ。」
「へ?」
「何を造ったかは知らないけど、兄さんのセンスじゃ、ねぇ‥」
一瞬考えたものの、アルは首を振るとバリーを手招きした。下水道を通ってバリーをセントラルの市場の一角へ案内する。
「ここは?」
「僕とスカーさんの秘密部屋。しゃべったら分解されちゃうから気をつけてね。」
マンホールの蓋を持ち上げて覗いた先には、イシュバールの国家錬金術師殺しがせっせとぬいぐるみを作成していた。
「我にも、創造はできる!」
(くっだら無いからupしてなかったけど、次の載せるのに面倒だった為残してみました。ええ!マジ下らない;爆)



2004/7/18

「エドッここで何をしている!
壁にコップを当てていたファルマンは、その声色に壁から飛びのくと思わず姿勢を正した。
「大丈夫ですか?ファルマン准尉。」
その様子に心配げにフュリーは声をかける。
<フュリー曹長、声がでかい!小声で話せ。>
同様に聞き耳を当てていた壁からコップを離し、ハボックは屈んでいた体を起こした。
<す、済みません、ハボック少尉。>
辺りを見まわすフュリーにファルマンは笑うと、コップを手渡した。
<大佐の真実怒りを含んだ声を聞くのはあまり無いからな。自分が怒鳴られたかのようで心臓が飛び出るかと思ったよ。>
一方、コップから耳を離さずブレダはハボックと視線を交した。
<エドだとさ。>
<いつからそんなふうに呼ぶようになったんだ?>
<エドのヤツ、アルフォンスを置いていくらしいぜ!?>
<う〜ん、波乱の予感。>
<いい加減ここから引き上げましょうよ。バレたら‥>
<お前なぁ、ここからがイイトコかも>
<いや、フュリー曹長の言い分も一理ある。今回はこの爆弾発言だけで充分だろう。エド不在間の身の安全の確保もある。引き上げようぜ。>
廊下へ脱出し離れようとしたところで勢い良く後方の扉が開き、4人は慌てて手近にあったトイレへかけ込んだ。扉を閉ざしてなお時折聞こえてくる、途切れ途切れの国家錬金術師二人のやり取り。
《何故、私が言わなければ?お前が言い出したのだろう!?》
リオールの事で混乱してたんだ。アルをひとり置いていくなんてッ》
《べつにひとりではないだろう!?》
だから問題なんだろッ、あんたが俺を〃エド〃と呼ぶのは寒気はするが我慢してやるさ。だけどな、もしアルを〃アル〃なんて呼びやがったら》
《はっはっはっ、お前は早々にリオールへ行って頭を冷やして来い。〃大切な弟〃は責任持って私が預かろう。》
アーチャ−の口調を真似たロイの言葉の後、破壊音が響き渡る。
《そうだな、〃マスタング大佐、いつも不甲斐無い私をご指導ご鞭撻頂きありがとうございます〃》
《は?》
《〃それなのに何時もご迷惑をかけて大変申し訳ありません〃》
《‥‥‥、そう言ったら、アーチャーの野郎に斥候の件の取り消しを、いやアルを置いていく条件を取り消すよう働きかけてくれるんだな!?》
《〃深く反省し、大佐への感謝の印としてアルフォンスを〃》
誰が言うかッ!!
先程より大きな破壊音が聞こえ、銃声とホークアイの声を最後に足音は消えていった。
「なるほど!そう言う理由」
ポンとブレダが手を打つ。
「ひとり斥候の許可を取った後での大佐の爆弾発言。裏目に出たな。」
ハボックは煙草を取り出すと、やっと一息ついた。
「今更取り消せないですしね。」
「大佐も口聞いてやる気、さらさら無い返事だったしなぁ。」

「兄さん本気なの?ひとりでリオールに‥」
「お置いてってのが、条件だからなぁ
「兄さん?声震えてるけど‥」
「エドワード・エルリック。」
「少佐?来てたのか!?」
パァッとエドの顔に光が差す。
「どうしてここへ来たのだ。」
「運命ってヤツかな‥」
アーチャーとロイとのやり取りが頭の中に思い出され、エドは明後日に視線を流した。
『運命じゃなくて墓穴だろう』
草葉の陰で出立の様子を伺っていたハボックはこっそり突っ込んだ。
「兄さん、本当に気をつけてね。」
お前の方こそ、な。兄ちゃん絶対、大急ぎで帰ってくるから。」
エドはアルの手を取ると、名残惜しげに指を撫でリオールへと向かっていったのだった。
(エド?エドですか!?マスタング大佐。いったい何時から?ヒューズ中佐がそう呼んでたからですか?えぇ、そんな混乱した頭で思ったことです;笑)




2004/7/17
「グリードを俺は、殺した。」
「兄さん、今更そんな事言っても。いや、それより妙に好戦的な感じが‥」
アルはエドとマーテルの間に身を乗り出した。それを押し退けエドはぐっと、マーテルを睨みつけた。
「マーテル。あんたがどう思ってたか知らねーが、俺に取っちゃあんたもグリードも弟を攫った悪党だ。」
言葉を切ったエドの視線を受け止めていたマーテルは、やがて何かに思い当たると、フフンと意味ありげに笑った。
「なんだよっ!?」
「べ〜つに!?何でも無いわよ?」
流れるような動作でナイフを取り出し放ったマーテルから、アルは咄嗟にエドを庇った。
「危ない!」
「むぐv」
アルに潰されたエドの語尾につけられたハートマークを確認し、マーテルはエドの背後に迫っていた蛇をナイフで二つにおろした。
「あんたはこれでも食べて体力つけなさい!?」
目の前に投げられた蛇に、エドは口端を上げてみせた。
「あんたこそ、食べれば?」
「あら、アタシはいいのよ。今晩はここで暖を取って眠るから。」
そういうとマーテルは素早くアルの冑を取り、中に潜り込んだ。
「あぁ!?またッ。てめっ
「いいわよねぇ!?アル。アタシの復讐、止めてくれるんでしょ。」
エドがアルに飛びつくより1歩早く、マーテルはアルの冑で蓋をした。
「うん!マーテルさんは僕が必ず止めるから。復讐なんて、させないから。」
ガッツポーズで言うアルの言葉はまるで、マーテルさんは僕が護る! のように聞こえて、エドはいきり立った。
「俺が中で寝るから!あんたは蛇食べてろよっ」
「や〜よ。共食いになるもの。」
「アル〜〜〜」
「兄さんはこれから大変なんだから、キチンと食事をしないと、ね。マーテルさんの事は僕に任せて。」
「そーじゃなくて〜」
マーテルを鎧の中に入れることをなれた様子のアルに、エドの焦りが募る。
お願い〜代ってくれ〜〜っ
イシュバールへ風が悲鳴を運んでいった。
『む?』
吹き抜けた風に足を止めたスカーの背筋を悪寒が走った。
開戦は間近。
(マーテルさんカッコイイv 原作には無いキャラの活躍が嬉し直にお亡くなりになるのが悲しです。)




2004/7/18
 QP3分銀時計(続7/12
「結局その後どうなったんっすか?」
ハボックの問いかけに、ドアノブに手をかけたホークアイはひっそり溜息をついた。
「どうも勘違いしてるらしいのよ。お弁当がいけない訳じゃなくて」
「ヤッコさんの他人とアルフォンスへの態度の違いが不味いんでしょ!?」
「普段の行動にも問題があると思いますね。派手過ぎるうえ、恐くて注意する者があまり居ない。どんな天才児でも子供に負けるのは愉快ではありませんしねぇ。」
「才能はエドワード君のせいではないわ。でも本当、もう少し大人しくしていてくれればアルフォンス君への風当たりも少なくて済むんだけど。」
「はっきり言ったらどうなんですかい?猫可愛がりするなって。」
ブレダが1つの解決法を口にする。ホークアイ、ハボック、ファルマンはブレダを見、3人視線を合わせ顔を背けた。
「しかとかい!?」
「言うのは簡単だが、実行されなきゃ意味ねーでしょ。お前、犬好きになれって言われて、できるか?」
ブレダはぶんぶん首を振った。
「いろんな事がありすぎて、エドワード君は事アルフォンス君に関して冷静ではいられないのよ。」
無くした体、呼び戻した魂を無くしかけた事も。そしてやっとの思いで取り戻した体は歳相応ではなくて。
「人体錬成は禁忌。軍上層部に知れれば何かしらの咎めがある。だから体を無くした経緯も、取り戻した過程もありのままを報告する訳にはいかなかった。これが一般の錬金術師だったら、隠しようも在ったでしょうけど、エドワード君は国家錬金術師。指折りに数えられる天才。それに、何らかの形で説明をしなければ一生、アルフォンス君は日陰の身になってしまう。鎧と今の体格差は不自然過ぎる。アルフォンス君の人権を確立する為に作成した報告書、エドワード君は弟をモルモットにされないよう時間をかけて作成した。その間アルフォンス君も兄に咎が及ばないよう、悪い評判が多々無いよう奔走して結果、可哀想なほど痩せてしまった。
それを目の当たりにした時、もう一度失う事の恐怖が彼を襲った。
「それが猫可愛がりの理由ですか‥」
しみじみ言うフュリーに、それはありゃただの、ブラコン、だよな、と3人の男は目配せした。
「でも、手作りの弁当なんて。本当にエドワード君はアルフォンス君を大切にしてるんですね。あんなに忙しくあちこちして研究とかやってたのに、どこで習ったんだろ。」
ほのぼのしたフュリーの言葉に、しかし他の4人は耳を立てた。いきなりドアが開いてロイまで入ってくる。
「確かに興味深い質問だ。よし、フュリー、どこで習ったのか、調べて来い!」
「ええ〜?どうしてそう言う話になるんですかぁ?
「何事も経験よ、准尉。そうそう。味は美味しいとアルフォンス君は言ってたわ。」
「ですが、なんで僕になるんですか?」
半泣きのフュリーに5人はビシッと指を付きつけた。
「これは命令だ!」
「言い出しッペが責任を取る。」
「報告書は頼んだわよ。」

「ぁあ〜?料理をどこで覚えたかって〜?」
何でそんな事を聞くとばかり睨まれて、フュリーの額に汗が浮かぶ。
だがエドは、キョロキョロ辺りを見まわして誰もいない事を確認すると、にっこりフュリーに微笑んだ。
「准尉になら教えてやるよ。いろいろ世話になってるし、情報も流してもらわなきゃいけないからな。」
その態度が反感を買うんです、とは言えず、フュリーはこくこく頷いた。
「いろんなトコ旅しただろ!?上手いモンとかあるんだけど、体に良いわけじゃない。体に良い料理でなおかつ美味い物、それは子供を持つ母親とか気遣ってる人に習うのが1番なんだ。たとえばシグさん。師匠の体を考えて料理を作る。ウィンリィの料理は発想が非凡だから、食欲の無い時とかに良い。味は当り外れあるけど。」
「シグさんとウィンリィちゃん‥」
なんだ、全然普通なんだ。フュリーが胸をなでおろした時、エドはぐっと近寄った。
「それと、スカー。」
「スカ‥スカーーぁ?」
「しっ、声が大きい!」
「済みません。でも、スカーって‥」
「ヤツはイシュバールの信仰とかもあって食材は体に良いもの使うんだ。あと、身を潜めてたから自炊で、難民とかには分け与えてもいたから味の方も悪くない。」
「でででで、でも、いったい何時習ったんです?」
「ん〜、1番ゆっくりと聞けたのは東方内戦時の、斥候でひとり先にリオールへ行った時だな。」
「よ・よく教えてくれましたね(汗)。」
「あぁ、ま、戦いと交換は別だからな。本と等価交換でさ。アイツ、見掛けに寄らず文学ならず者なんだ。」
「ぶ・文学ならず者‥」
「リオールの時はたしか‥光源氏の紫上あたりを渡したっけ。」
『光源氏‥』
「結構アイツも料理の時は図解とかしてくれてさ、市場のそばだと食材を選ぶポイントとかも教えてくれんだ。そこそこ役立つぜ!?」
国家錬金術師殺しのスカーと直情爆発型の鋼の錬金術師が、地面にしゃがんで料理の図解を紐解く。そして、それが終ると殺し合う‥
『こ・こわ〜』
「食材と言えば作物作ってる割りにベルシオさんは料理へたくそだったな。ラッセルとフレッチャーもレトルトが多かったし‥そうそう、大きい声じゃ言えないけど、ホークアイ大尉の料理は可も無く不可も無くって感じで使えないんだよな。」
言葉を切るとエドは自分より少し上にあるフュリーの肩に手を置き、口だけで笑った。
絶対内緒だぜ?フュリー准尉!?」
『恐ろしくてそんな事口外出来ません!』
フュリーは声無く頷いた。

「こちら庶務部‥あ、スカーさん?僕がアルフォンスです。こちらこそ、スカーさんも御元気ですか?え?兄さんのコロッケ?あぁ、分量が違ってたんですね、わかりました。兄さんの手帳、書き直しておきます。わざわざ済みません。今度一緒に‥、そんな事無いですよ、兄さんも少しは落ち着いてきたと思うし‥はは、ありがとうございます。じゃ次は僕の料理も食べて下さい。あまり美味しくは無いですけど‥ええ、ではまた。」
兄の知らないところで、結構弟にはバレている。そして、ホークアイの耳に届くのも、そう遠くではないだろう。
(愛情表現は手作り以外にもあるだろう、という下らないオチに、なほ様より美味しいネタを頂いたので味付けしてみました。あぁでもこの体たらく‥済みません;汗)



2004/7/15
 
愛の錬金術(続7/12)
『我が侭を、言ってくれればいい』
もっともっと、したい事、欲しいもの。
そんな事で鎧に封じられた時間を償えはしないけど。
でも、必要と、頼りにしてると、俺を思って言葉を紡げないアルの睦言のようで、津々と心が満たされる。
首を振って緩む頬を引き締めると、俺はマスタング少将がケチ付けた弁当のふたを閉めようとして、改めて見直した。
たとえば肉・卵・農作物は自然飼育を心掛けている農家から、魚貝・海藻類は軍御墨付きの水質を誇る地域から、俺名義で直接取引きをしている。
納品は朝一番。調味料はその食材から俺が作る自家製で、水はウィンリィの作った浄化装置を通したもの。
『アルにバレたら贅沢とか怒られるだろうなぁ、だけどさ。』
俺の取り戻したアルの体、そこには本来重ねたはずの月日が無く。でも経験を積んだ頭は歳相応の事をしようとする。
『いや、それ以上かも‥』
俺のフォローと思ったところで、少将の{尻拭いだろう!?}という言葉が聞こえた気がして、俺は危うく弁当を落しそうになった。
『危なかった‥‥。‥‥‥‥。ああ!そうだよッ、くそっ。』
アルはちっこい体して、俺の尻拭いや、ウィンリィの後始末、師匠への報告・ばっちゃんへのフォローに加えて軍の手伝いまでしてる。
【お前は働かなくてもいいんだ!】
【共同生活だろ!?兄さんだけ働かせるわけにはいかないよ。】
【だったら、家事とかは俺がやるから。】
【等価でなくちゃ共同の意味無い、でしょ。】
結果、アルは痩せた。取り戻した当初の歳相応の平均的な体格から、今では痩せっぽちの分類に入る。
『あの時、ウィンリィが言わなければ‥』
【アル、痩せたね。】
研究所に押入ってきたウィンリィは俺の顔を見るなり、一粒涙をこぼした。てっきり喧嘩と身構えていた俺は、体を取り戻した経過の整理に没頭していた事にやっと気付いた。
急いで家に帰ると、アルは驚いた様子で俺を迎えた。
【今日は早いね、一段落したの?根詰め過ぎると体を壊すよ!?せっかくだから今日はゆっくりしてね】
見ても何時もと変り無い、姿。
【毎日見てるから気付かないのよ。】
不安を取り除きたくて
【そうするよ。アル、今日は疲れてっから背中流してくれよ。】
【え?大丈夫なの?熱は?食欲は?】
【大丈夫、大丈夫‥】
いや、大丈夫じゃなかった。
故意に水をかけアルの服を脱がすと
【兄さん?どうしたの?気分悪いの?】
俺は湯船に潜って涙を隠した。
『神様、神様、神様‥。俺はなんて馬鹿なんだ。アルは子供で!子供の体力しかないのにッ』
1つ下の弟と思っていたなんて
『だけど、どうする!?子供の体をアルは仕方ないと諦めても、能力的にハンデを認めたがらない。』
【兄さんのお荷物になるのは嫌なんだ。今まで無理させた分、お返ししなくちゃ。ううん、お返ししたいんだ!】
ウィンリィが俺に教えてくれたアルの決意。それを諦めさせるのは、体の負担を消しても心に傷を付けてしまう。
『苦肉の策がこの弁当だったんだがな』
朝と夜は一緒に食べる。だけど昼は勤務部署が違うし、いつ何時急用が入って一緒できなくなるかもしれない。
【‥だったら、俺の手料理を食べさせれば良い!アルの体を考えた、栄養満天の食事を。】
「‥‥‥、ま、盛り付けはちょっと少女趣味ではあるかもな?」
「愛妻弁当でもここまではしないよ。」
返された声に俺は扉を振り返った。そこには愛して止まないイトシい弟が苦笑を浮かべて立っている。
「弁当、貰いに来た。」
「え?」
「‥ごめんなさい!兄さんが僕の事を考えて弁当を作ってくれてるのは分ってるんだ。ヤツアタリしてごめん。」
「アル‥」
「ホークアイ少佐に、兄さんの様子見てこいって御説教貰っちゃった。ホント、贅沢だよね、僕。反省しなきゃ。」
アルは俺の側によると、弁当を手に取った。
「あ、マスタングた、少将にも愚痴聞いてもらったお詫びしなきゃ」
「あんなヤツは放っとけ!」
「またそう言う‥たい、じゃない少将はいつも兄さんの事を色々心配してくれてるんだよ。兄さんも感謝しないと。」
「お前は本当に騙されてるっ。アイツが心配してるのは俺の事じゃねぇ、自分の事だ!そして考えてるのは‥‥」
「?考えてるのは?」
出世と女とお前の事だ! なんて言えるかッ!!!
「‥‥、べつに」
言葉を濁した俺をアルは追及しなかった。
「そうだね、僕も自分を省みなきゃ!原因は僕にあるかも、ううん、あるんだよね、きっと。」
それが陰口に対してだとピンときた。アルが痩せた原因。それは羨望、興味本位、悪意も含め様々な視線に晒され、それらとひとりで戦っていたからだ。
『ホント、愚痴でも我が侭でもいいからもっと言ってくれれば良いのに。』
追求しても自分のせいだと言い張り、ますますそう信じこむだろう真面目な弟に、俺は聞かなかった振りをして細い肩に手をまわした。どうやって軽薄な他人どもから、弟を守るか思案しながら。
(エド編。エドの手料理はどんな盛り付けなのか、見た人間誰もコメントしてくれませんでした。アルだけは「ま、兄さんだし」だそうです;爆)



2004/7/13
 幕間の錬成陣(続7/12)
「‥、凝っているらしいな。」
「何の事だよ。」
ロイに声をかけられても顔すら上げず、エドは不機嫌そうに聞き返すのみだった。そんなエドの様子を背後から伺って、ロイは素早くエドの鞄を取り上げると中から弁当を取り出した。
「何しやがるッ。」
飛びかかってきたエドを余裕で躱し、ロイはつんのめったエドを態とらしい溜息吐いて見下ろした。
「お前の気持ちもわからんでもないが、こいつのせいでアルフォンス君が困っている。」
起き上がったエドの鼻先で、ロイは弁当をぶらぶらと揺らせてみせた。
「そんな事あるかッ。それには俺の愛が篭ってるんだ!」
ロイは半眼をつくると弁当のふたを開けた。
「‥‥‥ 」
「?、何だよ!?」
「まさか、コレほどとはな。」
顔を引きつらせるロイにエドは不信の目を向ける。
「アルは俺のものだと主張して何が悪い!ここには手癖の悪い狼どもがわんさか居るからな。」
含みのある言葉をロイは一笑すると、エドの机に手をついた。
「アルフォンス君の魅力を解する者は限られている。庶務部の連中がそれを理解するとは思っていないさ。」
『他のメンバーは安全パイな人選で固めたからな。』
ロイは心の中で呟くと、おくびにも出さず続けた。
「だがな。アルフォンス君の魅力はわからなくても、貴様の悪行・悪名は知っているさ。なにせお前の起こすトラブルは派手だからな。」
エドが反論する隙を与えず、ロイは畳み掛けた。
「物騒で狂暴で、だが天才と謳われるお前を、唯ひとり使っているアルフォンス君へお前の及ぼす迷惑の捌け口として嫌がされが向けられるのだ。そんな事も分らんのか、お前は。」
「ちがっ、アルが俺を使ってんじゃねぇ!そんな事、アルはしない。してくれて、構わないのに‥」
瞬間怒鳴って、最後は口の中で言葉を溶かすと、エドは首を振ってロイを睨みなおした。
「とにかく、アルじゃなく、俺がしたくてやってんだ!」
「だから!わからん連中も居るという事だ。アルフォンス君が超危険印のお前に奉仕させていると下層で誠しやかに陰口をたたかれ、可哀想にアルフォンス君は‥」
「ンなもん、ベッドでは奉仕させてるって噂に書き換えてやるさ。」
「どうしてそうなる!」
ロイはエドの耳を掴むと自分の方へ引っ張った。
「奉仕云々が問題なのではない!貴様の行動が派手で迷惑掛け捲りなのに咎めが少ないのがやっかみの対象なのだ!少しは大人しく!かつ真面目に!控えめな態度で仕事に臨んだらどうだ。」
「そんなの、他の奴等の勉強不足が問題なんじゃないかッ」
「そういう態度がいかんと言っているのだ!だいたいベッドでは奉仕をさせているだと!?」
ロイはまじまじと頭の天辺から足の先までエドを見た後
「‥‥‥、フ。」
ロイは鼻で笑った。
「直ばれる嘘は慎む事も忘れるな。」
ロイはビシッと指をつきつけると、高笑いを発しながらエドの研究室から出ていった。
「二度と来るなっ!」
閉じられたドアに指を立てた後、しばらくしてエドは部屋の備品の鏡に寄った。
「なんで嘘ってばれたんだろ?」
(奉仕という言葉はエドもアルも好きではないので、そう言う展開にはなりそうもありません。7月竜のエドとアルならこう言いそうです。「等価交換」。たとえ他人からは等価に見えなくても(奉仕に見えても)二人には等価になるようです;笑)



2004/7/12
 味の錬成術
体を失って、旅をしていた頃。街に辿り着けなくて野宿なんて事も多々あった。そんな時の食事の調達はもっぱら僕の役目だった。
強がっていても、兄さんは生身の体で。野宿になるって事は強行な日程だったわけで。火を焚くと引かれるように眠りに落ちていこうとする兄に、取敢えず食事をさせ、夜中ずっと火を絶やさないように。兄さんが眩しく感じよう影を作るよう座って、僕は焚き火の番をした。
それは、眠れない僕には、眠る必要の無い僕には当然の事だった。たいした事じゃない。
宿に泊れば兄さんがケットを蹴飛ばさないように、悪い夢に魘されない事を祈りながら夜を過ごしていたのと同じ事。退屈を持て余しはしたけど、夜な夜な抜け出して兄さんに心配かけて、疲れを残したまま無理させて以来、大人しく傍にいる方が僕としても安心だった。
『前置きして出かけても、帰って来ると眼の下に隈があって、兄さん狸寝入りしてたけど、バレバレだんたんだよ!?』
僕が鎧であるという事を、受け入れるのに時間が要ったのはたぶん、兄さんの方
それが
「アル〜〜
お弁当
体が戻って、久しぶりに味わう食事というものに、目を輝かせる僕を嬉しそうに眺めていた兄さんは、いそいそと料理をはじめた。
「旅の間はお前にばっかり食事の用意をさせていたからな。」
だから兄さん、それはさぁ
兄さんの姿が消えると聞こえてくる声。
「あの鋼の錬金術師に弁当つくらせてるぞ。」
「大人しそうな顔しておっかなかったりして。」
「人は見掛けに寄らないからなぁ。」
その声は、今は未だ上には通ってなかったけど。どこから聞きつけたのか、きっとこの部署の女の人からだろうけど、ハボック中尉にまで肩を叩かれてしまった。
「ご主人様だねぇ〜。」
茶目っ気たっぷりのハボック中尉の冗談は兎も角、このままだと噂が飛び火していずれ兄さんにも支障が出かねない。
「兄さん、」
「ん?」
フォークを咥えたままの、くぐもった返事は、御昼を楽しみにしてるのが見て取れる、表情を伴っていた。
「兄さん、僕はただの雑用係だから。」
「?、だから?」
「士官である兄さんが僕のトコまでお弁当を配達してくれるのはちょっと、ううん、ヘンだよ。」
元の体を取り戻した時、少将になっていたマスタング大佐に、兄さん曰く嵌められて、兄さんは軍に残留、僕は庶務部の働き口を紹介してもらえた。庶務っと言っても、軍に所属する庶務課ではなくではなく、軍から委託されて各部署からの消耗品の請求処理、清掃や食堂料理人の依頼、採用等を請け負った民間の便利屋だ。
『少将は庶務課に就職させたかったみたいだけど、兄さんは僕が軍に入る事を毛嫌いしてたからなぁ』
民間の庶務部に就いた僕に、軍の、更に言えば上士官の兄さんが弁当を届に来る図は、かなり目立った。
「じゃあ、昼にお前が来るか?」
「だから!軍人でもない僕が司令部室になんて行けないよ。」
「マスタングのトコには行ってるじゃないか

そんな事でぶぅたれないでよ。
「少将のところへは仕事で出向いてるの!
「それなら俺と昼食うのも仕事と‥」
兄さんとの食事を仕事でするなんて、それはなんか嫌だな、と思ったら兄さん自身もそう思ったようだった。
それはいか〜〜ん!!
「もー兄さんが言い出したんでしょ!?」
「アル〜〜〜」
泣きが入って、結局うやむや
「はぁ〜」
兄さんと別れ、席に戻って溜息を吐いたら外野の声が聞こえてきた。
「おい、みたかよ!?アルフォンスが鋼の錬金術師を泣かせてたぜ。」
「アルフォンス君って呼ばないと何されるか分らんぜ!?」
タイミング良くかかってきた少将の電話に僕は席を立った。

「別にいいんじゃないのか?ご主人様で。実際そんなもんだし。」
「どういう意味ですか、少将。僕は兄さんの主なんてなりたくありません!僕はただ!‥ただ兄さんの手伝いがしたくて‥‥」
人に戻ったのだし、就職したのだ。
声にならない思いはとっくに分っているようで、少将はニヒルに笑った。
「君を軍の請負会社に就職させたのは他でもない。鋼のに仕事をさせる為だ。君がいれば鋼とて通勤せざるおえんからな。鋼に仕事をさせる事、それが君の仕事だ。」
「兄さんに仕事をさせるなら、僕じゃなくても‥」
「鋼がいったい他の誰の為に弁当を作って持ってくるというのかね?」
仕事?手作り弁当!?
「それはどういう」
「まぁ、君をここへ呼ぶのはそればかりの理由じゃないがね。」
少将は笑って教えてはくれなかった。
(今日はアルフォンス編までぇ。お粗末;爆)



2004/7/4
ヴ○ーサスNEO 鋼version
「あれ?」
無造作にテーブルにばら撒かれたカード。それは‥
「トレーディングカード?カンカンバーサスMEOって‥」
ただいま〜アルぅ。」
朝食を終えて部屋に戻ってきたエドは、テーブルの前に立ち尽すアルに背後から抱きつき、アルが眺めているだろう物へ目をやった。
「兄さん?これ‥」
「ああ、トレカ。軍が手配書代わりに作ってんだ。リーダーカードが軍上官で、キャラカードには下士官。アイテムがゲットすべき犯人ども。スカーも居るぜ。んで、エネルギーガードが国家錬金術師ではないけど高名な錬金術師で、あとブレイクカードとかあるけど。すげェだろ。これなんか見ろよ。」
エドが拾い上げたカード。そこには
「兄さんのトレカ?へぇ〜、じゃマスタング大佐とかアームストロング少佐とかもあるんだね。」
「奴等の事なんかどうだっていいから、よく読んでくれよ。」
「12歳にして国家錬金術師の資格を取得した、”鋼”の二つ名を持つ天才錬金術師。」
「そっちじゃなく、あ〜、集めるつもりじゃなかったカードだから‥ちょっと待ってろ。」
エドはアルの手からカードを取ると、バサバサテーブルの上をかき混ぜ始めた。
「もしかして、兄さん、錬金したの?コレ。」
「ンな事したら有り難味が薄れるだろ。ゲームで勝ち取ったんだよ。」
乱暴な探し方にアルの足元には幾枚ものカードが降って来る。
「ラッセル・トリンガム。エドワードと同じ年齢だが背が高い。」
1枚を拾い上げ棒読みするアルが身長に触れると、素早くエドが反応する。
なんだとッ!?
「ラッセルって僕と同い年じゃなくて、兄さんと同い年だったんだ。良かったね、年下じゃなくて。」
「お前それ、本気で言ってる?」
口端を引きつらせながらエドはアルからカードを取り上げると、散々足蹴にした後跡形も無くに破り捨てた。
「もう。頑張って勝ち取ったんじゃないの?」
粉になった紙をティッシュで拭取り片付けると、アルは腰に手を当てた。
「欲しかったのはこんなカードじゃねぇ。」
エドはテーブルの下からダンボールを取り出すと中身をばら撒いた。這い付くばって探す兄にアルは溜息をこぼすと、ダンボールにエドが見終わったカードを仕舞おうと手を伸ばした。
「知識を誇る冷静な青年」
「何だってぇ?」
「ヴァトー・ファルマン准尉。」
ピタっとエドの手が止る。
「青年って歳だったのか‥」
しみじみ呟かれた言葉に、アルも頷きかけて、慌ててごめんなさいと小声でファルマンに謝った。
「おお!?ブレダ少尉はハイマンスって名前らしいぜ。知略に長ける頭脳派だってさ。マジかよ。」
「人は見掛けに拠らないって事だね。あ、済みません、ブレダ少尉。」
「とすると、大佐の部下で肉体派なのは案外ホークアイ中尉だったりして。」
「陰の実力者的雰囲気あるしね‥って兄さんカード全部読んでないの?」
「当たり前だ!欲しいカード以外は、勝負に必要な部分しか読んでない。」
「威張って言う事じゃないと思うけど。で、欲しかったカードって?レアキラカード?」
エドはニカッと笑ってポケットに仕舞ってあった幾枚かのカードを取り出し、うち1枚をアルに渡した。
「僕の、カード?僕もカードになってるの?」
「なにせ俺の弟だからな。」
胸を張るエドにアルはカードへ視線を走らせた。
「何事にも一直線な兄・エドワードを支える利発な弟」
朗読してエドを見ると、得意満万で笑み全開浮かべている。自分の事のように嬉しそうな兄と博愛とまで書かれているカードに内心照れながらも、アルは努めて冷静に返した。
「誉め過ぎだよ、コレ。まぁ確かに蹴り飛ばした布団をかけ直す程度には支えてるけどね。見せたいカードってこれの事?でも持ち上げられてもなにも出せないけどね。」
「誉め過ぎなんかじゃ無ぇさ。書き足りてないぐらいだぜ。」
返された愛しいカードにニンマリしつつも、エドは口を尖らせる。
「見せたいカードはこれじゃなくて」
大事そうにカードを仕舞うと、エドは再び散乱するカードの中に埋もれていった。
「見せたいカードと欲しかったカードは違うの?」
今見せられたのは、そういえばレアカードじゃ無かったなぁと思い返し、アルも再びカードを片付け始めた。
兄さん!シャオメイもあるよ。旅に同行する動物だって。猫や犬も同行できないかなぁ‥」
ダメ!
これ以上アルとの間に入ってこられて堪るか。
「そう言う時はこれを使うのだよ、アルフォンス君。」
どっから湧いて出たーッ
何時の間にかアルの肩を抱いてカードを見せるロイに、毛を逆立ててエドが指をつき付ける。
「”たのんだぞ!”ですか?」
「私のカードだから絶大だ。他にもこういうカードもある。まったく、困ったものだ。」
「”どいていたまえ”。心置きなく暴れる前に、他人を巻込まないようにする配慮、ですか。お優しいんですね、大佐は。」
「世間の風評だが、恥ずかしいものだな。ハッハッハ
僅かの照れも無く笑うロイの顔に、束ねられたカードがヒットする。
「手前なんか”文句は言わせん!”だの”女と別れろ”だの権力固執のコマンド・アビリティばっかじゃねぇか!」
「上官に向かって”手前”とは何事だ!貴様の方こそ”非臨戦キャラ相手にボコる!!”アビリティがあるくせに。」
どうやらどっちもそれなりに真実が知れ渡っているようだ、と納得しながら低レベルで争う二人を無視し、アルは黙々とカードを片した。
「あれ?」
そのカードはテーブルではなく、アルの使わないベッドの枕にあった。ダンボールを机に乗せると、アルはベッドに寄ってカードを拾い上げた。
『もしかして、兄さんが見せたかったカードって、これ?』
飛ばされたのではなく、明かに置かれていたカード。
”弟・アルフォンス思いの明るい兄”
書かれた文面を指でなぞり、アルは優しく目を細めた。
「兄さんが優しいのも弟思いなのも知ってるよ。」
カードを手に振り返ったアルへ
騙されちゃいかん!!!
「弟思いと読むんじゃねぇ!
アルフォンス思いと読むんだぁッ!!!
叫ばれた二重奏は相殺し合って、アルには届かなかった。それどころか、勢いでせっかくダンボールに片付けられたカードが再び散乱する。
そのうちの1枚がアルの手に収まり
「”今度は僕がブチ切れる”」
アルの”静かな怒り”は、ふたりのリーダーのアビリティを使用不可能とした。
(公認ですか?公認ですかぁ!?;笑)