arcana 4

7月竜

2006/01/09 アニメって〜最終50話からシャンバラへ

「僕、アルフォンスさんを通して、兄さんに逢った、、気がする」
やっと再会できた弟は、懐かしい金髪で縁取った顔を綻ばせた。少し切なげに。
此方の世界とあちらの世界は繋がっている
【錬成のエネルギーは、どこから来ると思う?】
ホーエンハイムの言葉は
「そっか‥じゃ、兄さんもここの兄さんを通して世界を見たかもね」
「俺の場合は、ホントにこっちにきて乗り移ってたけどな‥」
今は居ないイギリスのエドワード。
申し訳ないと思う事が、かえって本当に申し訳ないと。アルは頭を振って気を取り直した。
「じゃあさ、もしかすると。こっちの人達も僕らを通して見れたかもね。」
そんな訳ないよね
アルの冗談に笑おうとして、エドは固まった。
『俺を通して、アルを見る?』
ぎこちない動きでエドの顔がアルへと向く。
「兄さん?」
『俺を通して、アルを‥!!!?』
がばっとエドはアルを押さえ込んだ。
「兄さ‥?」
「アル!お前、兄ちゃんが知らない間に、俺にヘンな事とかされなかったか?」
「変な事って‥?」
「例えばだな‥」
噛み付くようにエドにキスされ、アルの瞳が大きく見開く。
「‥、とか」
ついで首から鎖骨にへとエドの唇が降りてきて、その手はアルのシャツのボタンにかかる。
「‥っのヘンタイ!!」
ボカッ
殴り飛ばされたエドがアルを見上げると、頬を上気させたアルが荒く息をつきながら胸元を手で庇っていた。
「ちがっ、アル、俺はっ」
「こっちで何してたの!?」
「いや、俺じゃなく、こっちの俺がお前を‥」
「そんなわけないでしょ!兄さんなんて‥」
見る間に潤んだ鬱金の瞳
兄さんなんて知らない!!
青ざめたエドを置いて、アルは市街へと駆け出した。
「アルっ、どこへ‥まだ宿を取ってない。迷子になるぞ!いや、それより‥」
ホントに何もなかったのかか〜か〜か〜か〜
石畳に倒れながら伸ばすエドの手を、誰も取ってはくれなかった。



2005/11/20 第47.6話「戦場の約束」

  内乱のイシュバールに赴いて
「待て、ウィンリィ」
  殲滅令が出た後もイシュバール人を助け続けた
「やめろ‥。それは、ダメだ、、、」
  助けた人に?殺された!?
「ウィンリィっ」
  返して!返して!!返してよっ わたしの、父さん、母さん‥
「やめてくれっ、ウィンリィ!」
  引き金、、引き金‥いつも触ってる、金属の、、、なのに、冷たい‥
「撃つな!ウィンリィ。銃をおろせ!!」
「そんな物、持っちゃダメだ!ウィンリィ!!」
  だってエド、だってアル‥?この人、殺したんだよ?父さんと母さんを‥。だって、否定してくれないんだよ?
【撃つ権利がある】なんて、そんな言葉が聞きたいんじゃない!
「ダメだ‥撃つなよ‥。頼むから撃つなよ‥!!」
「早く銃をおろして、ここから離れるんだ!ウィンリィ!!」
  こんなに、こんなに胸が張り裂けそうなのにッ。どうして指は言う事を聞いてくれないの?
「スカー!てめぇっ!!」
「己れを殺すか!?それもいいだろう!どちらかが滅ぶまで憎しみの連鎖は止められん!!
「!」
  それって、、エドとアルを殺すって事?

「!」
銃を震わせて、動かないんじゃなく、動けなかったウィンリィの瞳に一筋の光が走るのをエドは見た。
撃つなあぁっ!!!
絶叫しながらエドが身を挺してウィンリィとスカーの間に割ってはいる。
銃にかかるエドの手
止まる時間
ウィンリィは瞳を閉じた。
何やっんだよ、バカ兄!
アルのフォローに時間が再び動き出す。
早く!ウィンリィを安全なところへ!!
スカーと消えていくアルの捨てゼリフに、エドはウィンリィを振り返った。
「ウィンリィ、銃をはなせ!」
震える手を、エドはそっと開かせた。
「‥‥‥わたし、酷い顔、してる?」
開かれたウィンリィの手からすべり、銃は乾いた音を立てて地面に落ちた。
「気付いたでしょ!?エド‥」
エドは開いたままのウィンリィの手を、そっと両手で包んだ。
「殺すって、、、言った、あの男と、、、同じ、顔‥」
「‥‥‥」
「殺しても、返らないって、、、父さんも母さんも‥‥。だけど、あの人は、わたしからエドとアルまで取り上げようと‥」
「ウィンリィ!‥でも、お前は撃たなかった。」
首を振ったエドの腕にウィンリィは恐る恐る手を伸ばし、指先にその存在を感じると強く強く握った。
「アル、、、見たかなぁ‥!?」
「‥、アルは、お前を逃がすのに必死だったからな。見てねぇだろ‥じゃなきゃ、バカ兄と呼び捨てていくわけないって」
「‥エド、言ってたよね‥アルの為なら、人を殺せるって‥」
「お前の為でも殺してやるぜ!?」
おどけたエドにウィンリィも顔をあげて微笑み、すぐまた顔を伏せた。
「わたし‥アルが悲しむから、そんな事しないって決めてた。アルを悲しませる事は、わたし‥‥、でも、でもっ!」
「ウィンリィはアルを悲しませてないよ。キレイな手のままなんだから。俺やアルを‥人を生かす手のままだ。だからアルも安心してスカーを追ってちまったんだぜ!?」
やっと顔を上げたウィンリィの背にエドはコートを羽織らせると
「‥憲兵さん。こいつを安全な所に頼む。」
「エド‥」
「俺、行くな。アルがまだ、闘っているから‥」
心配そうにウィンリィを見ながら、エドは再度憲兵にウィンリィを頼むと背を向ける。
「エド」
走り出そうとするエドの背に、ウィンリィは声をかけた。
「あんたが人を殺しても、わたし、許すから」
エドとウィンリィの瞳がかち合う。
運命共同体
「お手柔らかに頼むぜ‥」
かつて、アルを泣かせたら許さないと言っていたライバルが、ついに自分と同じところまで堕ちた事に、エドは苦笑すると、アルの後を追って行った。
「‥死なないでね。」
エドはアルの為に、アルは私の為に
「わたしも2人の為に、頑張るから‥」
見送る背中に、ウィンリィは指切った。
ウィンアル編‥済みません(爆)



2005/11/20 第47.8話「恋中の化物」

ずっとずっと。ウィンリィの手は明日を生んできた。
誰かの義足をつくったり、俺の機械鎧を直したり‥ずっとずっと、生きる力を育んできた。
【父さんと母さんを返してよっ】
叫んで銃を握っても、憎しみで引き金を引くとは思わない。それは絶対の信用。
ただ、拍子で力が入ってしまったら、取り返しのつかない事になる。
ウィンリィの未来が、俺たちの明日が、アルの心の支えが‥
『壊れてしまう‥』
お前は笑っててくれ。俺、頑張るから。何をしてもアルとお前を護るから!
お前は笑って、アルを支えてくれ。怒って、血と罪に汚れた俺の手を直してくれ。
ウィンリィの手からはなれた銃。縋りつく、ウィンリィ。
「ごめんな。戻ってきたら、全部話すから」
ごめんな。弱さを見せたお前を置いて、でも俺は‥!
「お前の為にアルは闘っている‥」
「エド‥」
「ごめん、俺は‥!だけど」
「遠慮しないで!?らしくない。」
「‥、ああ」
俺は行く。アルが闘ってる。アルが待ってる。そこは、ウィンリィは来れない場所
『だけど、ウィンリィこそが帰る場所でもあるんだから、これぐらい独占したっていいだろう‥』
あるいは、迂闊に口走った俺をアルは怒ってるかもしれない、その場所へ。
「俺は行くよ。」

「哀れに思われるいわれは無いよ!この身体は兄さんがこの世に繋ぎとめてくれた命だ!!」
鼓膜を震わせた言葉。
零れそうになる涙を、平手で叩いて止めると、エドはアルの待つ場所に立った。
エドアル編‥済みませんスミマセンすみません(汗)ええ〜と、スカーにアルが断言するのが、とってもまたいいヤツだなと、、、(爆)



2005/10/12 離婚における親権問題で子供を祖父母の養子とすると、より法的規制を強化できるらしい

驚いた事に、エドが国家錬金術師となった日に、アルはばっちゃんの養子になっていた。
あたしはと言うと、両親の死が判明した時、ばっちゃんからの遺産相続時の面倒を減らす事と自立に後ろ盾できるよう養女になっていて、アルとあたしは姉弟という事になる。

【なんでエドは養子にならなかったの?】
ばっちゃんがエドを誘わないわけなく、養子になっていないという事は、エドが断ったからだ。
「断定するなよ。」
【違うの?】
【違わねぇけど、、、】
行動を読まれて拗ねるなんて、あんたが養子になった場合、絶対弟ね。決定。
【国家錬金術師は軍から少佐の地位が与えられる。立派な大人って事だ。保護者は必要ねぇからな。】
ゴス
【建前はいいから、さっさとしゃべりなさい!時間が勿体無いじゃない。】
【俺の頭からレンチを抜いてもらえませんか、ウィンリィさん。お願い】
レンチじゃないわ。スパナよ、これ。
目の前に差し出すと、エドはジト目でむっつりした。
【で?】
【、、だから!アルが養子としてエルリック家をでれば、どうどうと結婚できるじゃないか。】
ガス

ご要望に応えてレンチにしてみたけど、スパナより重いからめり込みがすごかったなぁ。あの時の答え、エドは覚えているかしら、、、、
「ねぇ、アルぅ?」
「な、な、な、なに?ウィンリィ、、、、」
「‥‥‥どうして逃げるのよ!?」
「べ、べつに逃げちゃいないけど」
アルの部屋。アルのベッドの上。
にじり寄るあたしから後ず去るアル。
「それで逃げてないって言うの?」
「だって、その、、、、」
アルが男で、あたしが女だから って理由ができればまだいい。アルは鎧なのだ!
「だって、、、、その、、、改造されそうなんだもん。」
アルの代わりにベッドにドライバが突き刺さる。
「ウィ・ウィ・ウィンリ、、、、、」
鎧なのにアルが青ざめてるのがどうして分るのかしら。これも愛のせい!?
おおっと、自分によってる場合じゃない。チャンスチャンス〜
「アル‥あたしを信用してないんだ‥‥」
ちょっと仕草でも、アルは心配して飛んできてくれる。
「そーゆーわけじゃ、、、でも、工具は整備室に置いてから来てくれる?」
「それ、誘ってるのv?」
「誘うって、、、、そりゃ、ウィンリィが来てくれたら、、嬉しいし、、、、」
うわっ、フェイント。こっちが仕掛けてるのに、、、天然さんは、もうっ
顔が赤くなってる自覚はある。アルも、照れてる気がするし‥、そうだ!今なら聞ける!
「アルは、エドと分かれても良かったの?」
「兄さん?そんなの。」
アルは可笑しげに笑った。
「籍は違っても兄弟だもの、変わんないよ。」
「だったらエドも誘えば良かったじゃない。」
余裕の自信が悔しくて言ってみる。
「ダメだよ。そしたら兄さんとウィンリィの結婚がややこしくなるもん。」
ああ、やっぱりこのオチかい#
「でもま、いいわ。」
「ウィンリィ?」
顔を寄せると、アルが慌てて飛びず去る。
今、焦るアルを独り占めできるのはあたしだけなんだから


「なるほど。養子という手もあるか‥」
キングブラッドレイは地下から大総統府へ戻る階段で、顎に手を当てた。
「ホムンクルスの父に、鎧の息子。これはなかなか‥」
「ラース。」
「む、プライドか。珍しいな、こんなところで声をかけてくるのは。」
「最近、あなたはヘンな事を考えていませんか?」
「いいや。だが、楽しむ事は考えているよ。なにせ暇なのでね。おおっと、人が来るようだ。ではな。」
追いかけてくるプライドの舌打ちに、ラースはほくそ笑んだ。
『どうやらこの騒動はマスタング大佐やエドワード・エルリックだけではなく、我が兄弟にも波紋を投げかけられそうだ』
人間の言葉で言うなら
「たしか、、、そう。一粒で二度美味しい、だ。作戦名はこれを起用しよう。」
大総統府入り口の横に墨でデカデカと掲げられた作戦名。
しかし。
それはキャラメルです。という突っ込みは、アルが大総統府に呼びつけられるまで、誰もしてくれなかった。



2005/10/2 第38+14/15話 でぇとノ狼煙

「なんで出て来たんですか!?」
落ちたグラトニーを眼下に探していたフュリーは、冷ややかな声にビクリと振り返った。
バリー・ザ・チョッパーを使っての第五研究所及びヒューズ殺害の真相大釣り計画で詰めていた高塔、銃の効かないグラトニーを塔から吹き飛ばしたのは、計画外に駆けつけて来たロイだった。
「わたし達に万が一の事があっても、無視していれば敵の追及を逃れられるのに!?」
微妙なニュアンス。
「あー、分った分った。私がバカだった!!」
「信号弾が上がるのが見えましたが?」
「さあ?私は気付かなかったが(汗)」
「目標が逃走開始!、、、、ですけど」
「よし!我々は目標を追う。フュリーは撤収を!ゴミ一つ残すなよ。ファルマンは被害者を装え!ハボック、ヤツはどこへ向かっている?」
「推測兼ねますが、第三研究所の方向です。」
「よし、市街中心部を通って第三研究所へ向かうぞ!」
「兄弟が泊まっているホテルの前を通るのですか?」
運転席に座ったホークアイは、ロイの方を見もせずバックミラーを直す。
「な、何を言っているのかね?私はべつに、、、」
「では、別のルートで第三研究所へ向かっても?」
「うっ、、、、、」
「大佐〜」
金属音を響かせて、アルが駆け寄ってきた。
「アルフォンス?どうしてここへ?」
降って沸いたような上手い展開にハボックはホークアイを見、その険しい顔にぴょんと退いてロイへと救いの視線を泳がせ、あんぐりと顎を落とした。
ロイは光を纏い、そこにいた。ニヒルに笑ってアルフォンスを迎える。
「あの光は焔の応用ですか?錬金術って色々できるもんですね。」
「っというよりも。錬金術の不正使用だろ?アレ‥」
ファルマンとハボックがぼそぼそ囁きあうのもまったく無視し、ピンクな世界が広がる。
「さっき合図があったから‥、ヒューズさんの件ですね。」
アルに、ロイは力強く頷いた。
「(私に付いて)来るか?」
「はい!」
アルの返事にロイは酔いしれる。
「大佐!?」
ハボックに肩を叩かれ幻覚という名の光がプシュ〜と消える。ハボックを睨んだ後、ロイは気を取り直すと
「では、ともに行こう!アルフォンス。」
アルの手を取り、ロイは後部座席のドアを開けた。乗り込もうとするロイ足に、ホークアイの足がかかる。
どてっ
道路に突っ伏したロイの頭上で、会話が繰り広げられる。
「では、アルフォンス君は後部座席でハボック少尉と同乗してくれる?ハボック少尉、先に乗ってあげて。」
「へ〜い。」
「え、、ええ?中尉!?アルフォんす?」
うろたえるロイを横目にホークアイは上司を助手席に押し込むと車を発進させた。
「申し訳ありません。デートの合図かと思ってましたが、本件の助力要請の合図だったんですね!」
「え、、、と‥」
「そうですね!!」
ホークアイに逆らうすべなく、ロイや頷いた。そんなロイに一瞥くれると、ホークアイはアルを振り返る。
「アルフォンス君もご苦労様、ありがとう。」
「いいえ、声をかけて頂いてこちらこそありがとうございます。邪魔にならないようにしますから、僕も連れてってください!お願いします。」
「勿論だ、アルフォンス‥」
「大佐、仕事の話ですから。ヒューズ准将の件でなければアルフォンス君は来てませんから。ね、アルフォンス君!?」
「えっと、、、そうでうね。」
アルにまで肯定されて、ロイは小さく助手席に納まる。
「研究所では、錬金術師と射撃手の組み合わせで分かれますから。」
「くすん、、、アル、ツレナい、、、、」
分かれますから!いいですねっ、大佐!
銃を顎の下から突きつけられ、ロイは涙ながらに頷いた。
『次こそはアルと一緒に座るのだ』

頑張れ、ロイ!野望達成まであと321頁だ!!


そして
321頁が経過し
アルと、おまけのエドがスカーを追いかけていく後姿を見送った後
『狭いけど幸せだった‥』
フュリー曹長の別宅で無線による撹乱を済ませると、ロイは先ほどまで車の後部座席で密着したアルとのひとときを思い出し、ポッと頬を赤らめた。
スランプですね、、、スランプで済まされないくらい酷いですね(汗)



2005/9/23の2 やおい

決して手放せない手を握り、諦める事のできない想いを供にして、探した道。
欲しいのは互いの笑顔。
抱き締めたいのは互いの魂。
その、果てしない旅の末。エドはアルを元に戻した。

アル:「僕‥?」
錬成光が静まった中に現れた姿
ホーエンハイム:「お‥‥‥」
ホーエンハイムは錬成陣の中央に不安げに立つアルを抱き締めた。
エド:「てンめぇーっ、いきなり何しやがるっ。アルから離れろ、くそ親父!」
目を白黒させてるアルに頬すりするホーエンハイムへ、エドはとび蹴りを放ち、引き剥がそうと拳を握った。
「ホーエンハイム:「トリシャ‥」
エド:「血迷うなっ、トリシャって、アルは母さんじゃねぇっ」
ホーエンハイム:「だって母さんだぞ!?ほら」
ホーエンハイムに背を押され、エドの前に現れたアルは
エド:「茶髪??しまった、何間違えたんだろ‥」
アル:「それより前に、性別間違えてない?兄さん!?」
エド・ホーエンハイム:「「いや、それはそれでいい!」」
めこっ
二人の顔にアルのキックがめり込む。
エド:「確かに。このままじゃ親父に何されるか分らないからな。錬成しなおす!」
ホーエンハイム:「そんな〜ぁ、エド。パパを信じられないのかい?」
エド:「全然!」
ホーエンハイム:「パパに向かって酷いぞ、エド。アルも何か言ってくれないか?」
アル:「父さん‥鼻血、拭いてよ‥」

気を取り直してもう一度
果てしないたびの末、エドはアルを元に戻した。

アル:「僕‥?」
錬成光が静まった中に現れた姿
ラース:「ママっ」
錬成陣の中央に不安げに立つアルに、ガバッと抱きついたラースをエドとホーエンハイムは引き剥がした。
エド:「こいつはスロウスじゃねーっ。」
ホーエンハイム:「お前が無理に髪の色を変えようとするから‥」
エド:「俺のせいかよっ」
ウィンリィ:「あんたのせいでしょ。なに、黒髪にしてるのよ。」
エド:「いや、俺としては金髪にしたつもり‥」
アル:「酷い!髪の色が問題じゃないだろ!?」
アルはウィンリィに泣きつき、ウィンリィは勝ち誇ったように、エド達親子へと笑った。
エド:「分った。兄ちゃんが悪かった。な!?だからウィンリィから離れろ?」
ウィンリィに抱きつくのはやっぱり不味いかと思い、アルは素直に頷いた。
ウィンリィ:「ちっ。」

気を引き締めてもう一度
果てしないたびのすえ、エドはアルを元に戻した。

アル:「僕‥!?」
錬成光が静まった中に現れたややくせのある長い金髪が揺れる姿。
ロイ:「ホークアイ中尉〜!」
エド・ホーエンハイム・ウィンリィ:「「「それは無理があるだろう‥」」」
ホークアイ:「大佐、婦女暴行罪で射殺します。」
ロイ:「婦女暴行って、まだ何も‥」
ホークアイ:「射殺します。」
ロイ:「中尉〜、、、、」
エド:「当たり前だ!アルは素っ裸なんだぞ!抱きつくなんて、俺以外許さんっ」
アル:「兄さん‥さっきから鼻血流しっぱなしだけど、そういう理由からなの!?」
素早くウィンリィがアルに自分の上着を羽織わせる。
ウィンリィ:「まったく男ときたら。アル、大丈夫よ!?わたしが‥」
アル:「酷い、酷いや‥みんなして僕を‥」
泣いて座り込んだアルにエドはうろたえた。ちゃっかり他の連中は姿を消している。
エド:「違っ、ごめん、ごめん!アル。泣くな‥泣かないで‥」
アル:「近寄らないで!」
エド:「アル‥‥」
アルの言葉にエドはビクッと震えた。
アル:「兄さんは、ホント‥は僕の‥事、嫌‥んじゃない‥の?」
エド:「アル‥こっち、見てくれ‥」
膝に顔を伏したまま、嗚咽を漏らすアルにエドは呼びかけた。
アル:「?」
顔を上げて、アルは息を呑む。
すっぽんぽんになって、エドはアルに土下座をしていた。
エド:「アルが好きなんだ!意地悪とか、そんなんじゃなくて、、、ごめんなさいっ」
アル:「兄さ‥ん‥‥」
エド:「真面目にやるからっ、だから‥」
アル:「兄さん?」
エド:「近寄るななんて言わないでくれ。俺から遠ざからないで‥俺の傍にいてくれっ」
土下座して頭を地面につけたまま、エドは懇願する。
涙の混じったその声
アル:「‥‥‥、バカだな‥」
アルはエドを抱き起こした。
エド:「ごめん。俺、バカだから‥」
アルは首を振った。長い髪がぱさぱさと音を立てる。
アル:「馬鹿なのは僕の方だよ。思ってないのに、言うなんて‥。兄さんを傷つけるなんて、どうしようもないバカは僕だ。」
アルはエドに口付けると、泣き笑った。
エド:「アル‥」
ウィンリィ:「は〜い、そこまでそこまで、ほら、その手は外す。」
アルの腰に回されようとしていた腕を摘まれ、エドは外野を憮然と睨んだ。
エド:『いいトコだったのに‥』
ウィンリィ:「なにか言った?」
エド:「いいや。アル、じゃ、戻すから、、、、」
アル:「うん。」
エド:「この方がいいなら‥」
アル:「戻してください!」
エド:「ちっ」

イズミ:「いー加減にしろっ、この馬鹿弟子が!!っ」

果てしないバカ騒ぎの末、エドはアルを元に戻した。

錬成光が静まった中に現れた姿。エドは錬成陣の中央に立つアルを抱き締めた。
アル:「ちょっと兄さん、何コレ?」
エド:「何って、、、アル!?」
差し出された鏡を振り払って、アルは涙目でエドを見上げた。
そう、見上げたのだ。
アル:「兄さん、僕いくつだと思ってるの?」
エド:「俺よりいっコ下。」
アル:「じゃあこの”僕”はいくつなんだよ!?」
エド:「‥‥‥、さぁ?」
アル:「どーしてこういうことするの?」
エド:「だってアルが俺より大きかったらヤだったんだもん。」
アル:「だもんって、、、いくつだよ、兄さん!」
エド:「アルよりいっコ上。」
アル:「そうじゃないだろっ、このバカ兄!」
エド:「そうか?」
アル:「そーだよ、放してよ、もうっ」
エド:「ヤだ。」
アル:「ヤじゃない!」
エド:「ヤだ。」
嬉しそうにすりすりするエドに、アルはため息をつく。
アル:「仕方ないなぁ、も〜」
エドが笑っているので、エドが幸せそうに笑っているので。アルも嬉しくなって笑った。

おわり



2005/9/23のいち arcana版映画鑑賞2

「ホント、アルフォンスにソックリだぜ。」
「アルフォンスが子供だったらこんな感じ?」
「ヨロシクな、アル。」
そう言ってアルフォンス・ハイデリヒの研究仲間は、やってきたアルの背中を叩いた。
「あ、いや、アルと俺はこれから‥」
エドが手を広げて言葉を濁すのを無視し、彼らの会話は進む。
「アルじゃ寂しいなぁ。」
「そうそう。アルフォンスの代わりじゃないんだし。」
「アル‥ぼんってのは、どうだ?」
「アルぼん?」
「アルフォンスぼっちゃん。」
「僕、坊ちゃんじゃないです。」
「そんな突っ込み入れてる場合か!」
エドは囲まれているアルの手を引っ張る。
「俺達はこれから‥」
「おい、エドワード。独り占めはいかんぞ。」
「そうだそうだ。アルりんはこれから俺達とこの街や時代を勉強するんだからな。」
「勉強って、それは俺が‥」
エドの抗議は再び無視され、彼らはアルの手を引っ張ると再び中央に取り囲む。
「アルりんは無いだろう、アルりんは。それなら、アルたんの方が」
「アルぴょんはどうよ?」
「アルぴーは」
「「「それは古い!」」」
いつの間にかラングまで加わっている。
「あの、、、僕は、、、、、」
「機械は好きか?」
「え?え、、、ぇまぁ」
「飛ぶのは好きか?」
「飛ぶ?飛んだことが無いから、その」
「じゃあ、俺達と飛ぼうぜ!」
「あの、、僕、ハイデリヒさんじゃ‥」
「いいっていいって!」
「好奇心とやる気、それがあれば仲間だ!」
「ありがとうございます!」
記憶が戻ったとはいえ、エドのいない間のアルの成長は目覚しかった。磨きのかかった好奇心と強い意思は、航空時代到来に目を輝かせる。
「‥‥‥、連れてくんじゃなかった‥」
あのままアルをあちらの世界に残し、自分がこちらに戻って門を塞いだとしても、エドはアルのもとへ帰れる自信ある。ホーエンハイムとエンヴィーが身をもって教えてくれた、そしてエッカルトやハウスホーファーの残した資料。ハイデリヒが示してくれた方法。それらがパズルとなってエドの頭の中で組み立てられている。
「くそ〜っ、連れ帰ったろかい!」
『大佐やウィンリィのちょっかいなら、居場所さえ隠せばかわしきれる!』
こぶしを握るエドをアルが振り返る。
「なにか言った?兄さん!?」
「「「「なにか言った?エドワードぉ!?」」」」
『こいつら知ってて邪魔してるんじゃ‥』
男泣きするエドの背を手を当てノーアも涙ぐんだ。
「この先、対戦終結。冷戦の終止。ソビエト連邦が崩壊してそれから‥アメリカで同性結婚が認められるわ。それまで頑張るのよ、エド。」
「ノーア、、、ありがと」
歓談するアルの影で泣くエドにノーアは満足そうに頷いた。
もちろん、アルの危機を救うよう触れ回ったのは、エドの意識を垣間見たノーアに他ならなかった。



2005/8/19 arcana版映画フォロー アル編

セントラルシティの地下深くに沈む、かつて繁栄していた都市の廃墟上空に現れた機体。
「「!」」
そこに認めた金色の輝き。
『兄さん!』
迷いは無かった。
ずっとずっと セントラルで目を覚まして以来捜し求めていた兄。
見間違いさえ出来ないほど!

『兄さん! 兄さん!! 兄さんっ!!!』

   走り出したい衝動は
 叫びたい想いは
瞬間
     隣から感じた歓喜に、アルの動きが止まる。
走り出す兄とは別の大切な人の、レモンイエローの残像をアルは足を踏ん張って見送った。

一番最初に抱き付いていい人
誰よりも幸せになって欲しい、ふたり
なにより、大事な 大事な

『隣に立つのは、僕じゃない。』

失くしてしまった時間を持つふたりが抱き合うのを、アルは自分が寂しいと感じる前に笑って見守った。



2005/7/31 arcana版映画鑑賞(映画鑑賞後なのでうろ覚えですが;汗)

アル:「兄さん兄さん兄さん!」
破壊され、操縦意思を失った機体は2つに分かれていく。
エド:「これを向こうに返さなきゃいけない。お前もこちら側の門を壊せ。」
アル:「そんな、、兄さん帰って来れないじゃないか!ウィンリィはどうするんだよっ」
エドは辛そうに眉を寄せた。
エド:「お前の笑い顔を見たかったのに、ごめんな。泣かせてばかりだ。」
アル:「兄さんっ」
エド:「って、おい、大佐!そのアルを抱えてる腕を外せよ。」
ロイはアルがエドの方へ行かないよう、落ちないよう腕に抱え込んでいた。
ロイ:「今は伍長だ。」
エド:「伍長ぉ?伍長の分際が俺のアルに」
ロイ:「納得したのだろうが!アルを置いていく事を。」
アル:「マスタングさんっ‥」
アルが切ない決意で縋るのに、でもロイは首を振った。
ロイ:「なに、大丈夫さ。君の兄さんは向こうの世界でもしぶとく生き延びていた。ちょっぴり、本当にちょっぴりだが背も伸びて」
エドを見る時の好敵手を懐かしむ視線とは異なり、ロイのアルを見る瞳はどこまでも優しい。
エド:「勝手な事言ってんじゃねーっ」

空に燃える機体を見送り、ウィンリィは目を伏せた。
ウィンリィ:「もう、(エドには機械鎧で代価は払ったから、アルとわたしの結婚を)待つ事はないのね。」

エド:「フザケんじゃねーっシリアスなんだーっアル〜ぅ」
シャンバラに響くのは、主人公の叫びである。



2005/7/26 映画予告7月バージョン編

 ロイ:「やはり、生きていたんだな」
 エド:「‥‥‥、感慨深げな口調の割りに、手に持ってるのは何だよ。」
 ロイは自分の右手を持ち上げてみる。
 ロイ:「憲兵用の帯剣だが?」
 エド:「それを何で鞘から抜いてんだよ。」
 ロイ:「それはもちろん!」
振り下ろされた剣をエドは素早く避けた。じりじりとお互いに間合いを取る。
 エド:「俺がいない間にアルと合ったそうだなぁ。その節は俺のアルがお世話に‥」
 ロイ:「相変わらず言葉の使い方を間違えてるようだな。やはり私を頼ってきたアルのトラブルの種は排除すべき!」
時空の壁をも打ち砕く戦いは続く。
                                        映画はまだ観てませんが、こういう話‥ですよね!?(爆)


2005/7/24 第44話「お約束」(名前の無い墓より)

なんじゃこりゃーっ!!!なっ‥おまっ‥こんなにぶっ壊れて‥うおおおお!!!
ごめんなさい
「「「」」」
『アル、おまっ、可愛過ぎっ!!!スカートの裾、握ってんじゃね〜よ、もうっvV
『スカートじゃないでしょ。エプロンよ、あれは。でもカワイイ〜
「あれは鎧のクロスだヨ。それより鼻血、噴いてるヨ!?」
「‥‥‥」
ゆっくりと振り返ったエドにリンとランファンは顔を見合わせた。
「!??」
どかっ
エドは不用ブツを蹴り出した後、改めてあるに向き直った。その後ろでウィンリィは写真を取り捲っている。
「派手に壊したな。足りない分は、コレで埋めるか‥v」
エドがズボンのベルトに手をかけた時点で、ウィンリィのドライバーがヒットした。
「なにしやがるっ、この金具の部分とファスナーをアルの鎧にだな。」
ドライバーを引き抜きつつ、エドが答えるのを、ウィンリィは冷たく見下ろした。
「却下。」
「しかし欠片が足りな‥」
「それ以上、ズボンを下ろしたら殺す!」
「べつに疚しい気持ちじゃ、、、」
「どのみち、それじゃ足りないでしょ!?」
「んじゃ、機械鎧の部分を‥」
めこっ
「兄さん兄さんっ、他の金属じゃ構築式に欠落ができちゃうよ!?周りのトコを寄せてくれればいいから。」
ウィンリィから庇うようにアルに抱き込まれ、エドはでれれっと懐いた。
「兄さん‥」
「どうした?」
悩むようなアルの口調にエドは、ハッと顔を離しアルを覗き込んだ。
「鼻血拭いて、めり込んでるスパナ、取りなよ。」



2005/7/20 夜遊び ロイとエド

俺、エドワード・エルリック。15歳。予定では身長175センチに達しているはずなのだが
「せめてひゃくろくじゅう‥‥‥、」
いや、止めておこう。後日予定を詰めればいいのだ。

私、ロイ・マスタング。29歳。夜な夜な数多の女性と愛の華を咲かせていた
「嘘付け!」
とにかく!今はこのエドと、夜毎の楽しみを共有している。

「「言葉にすると気色悪い‥‥」」
二人して口をおさえていたが
「時間が勿体ねぇ。続けようーぜ。」
気を取り直してせっつくエドに
「焦るな。我慢が更なる悦びを生むことを学べ。」
ロイは徐に手袋を外した。
「昨日、ホークアイ中尉で確かめてみたのだが‥」
ロイは確認するように頬に指を滑らせ、顎を手のひらで掬った。
「あぁ、それで顔に痣があるのか。」
ロイは眉を上げたが
「遜色は無かった。」
結果だけを伝えた。
「そっか。俺もウィンリィに触ってみたけど‥」
「ボルトが2〜3個無いようだが?先ほどから動かすたびにギーギーいってるぞ。」
「まったくウィンリィのヤツ、心が狭いんだからよ。ま、それはいーとして。」
エドはロイの手を機械鎧の指で摘むと、顔から退けた。
「やっぱ、もう少し締まってる方がいーんじゃねぇかな。」
「ふむ。年頃としてはやはりホークアイ中尉よりウィンリィに近いだろうからな。」
エドから手を取り返すとロイは、そしてエドも改めて向き直った。
二人が心血を注ぐ、共同作品を。

究極のボディ
二人が目指すもの、それは。
「アル‥」
「なーにサカってるのかと思ったら‥こーゆーわけ。」
背後からかかるオドケタ声に隠された殺気に、男二人はギクッとして、それこそ二人が熱中して作っている人形のように、ギクシャクと振り返った。
「ど・ど・ど・ど・ど‥」
「〃どうして、ここに?〃!?」
ウィンリィに聞き返されて、エドは大きく頷いた。
「突然あんたが抱き付いてくるんだもん。何かあると思ってね。」
「ほー。」
ウィンリィのセリフにロイが顎に手を添えるのへ
「抱き付いたんじゃねーッ!」
エドががなる。
「感触ならエドで試さばバレなかったのに。」
「「うぇッ」」
想像して鳥肌を立てる男二人。
「エドの感触をしたアルでは、気持ち悪くて触れんじゃないか!」
「触らせねーよ。」
不毛な争いにウィンリィは両手を広げると
「ま、いいわ。で、これってアルのつもり!?」
エドとロイは顔を見合わせると
「おうよ。今は良い素材があるからなぁ。あとはコレの顔をアームストロング少佐にアルそっくりに作り変えてもらって、アルの魂を移せば可愛くってぶにぶにしてて!」
「ちんまりと抱き心地の良いアルフォンスの出来上がりだ。」
「済みませんね、デカくてゴツゴツしてて抱き心地の悪い鎧で‥#」
可愛い声が冷たく二人を突き刺した。
「あ、ア、、ル!?」
アルの後ろから現れたホークアイ中尉は、繁々と共同作品を見ると
「ファルマン准尉がやっていたゲームキャラの等身大フィギュアね。」
と呟いた。
「ゲームキャラ‥」
「あ、いや、だから、、、、、ほらvアルの好きな猫耳、、、」
「胸があるみたいだけど?」
「あ、それは、その、、、、」
「これ、猫族の女戦士でしょ。」
ホークアイの言葉に、ウィンリィがにんまりと腕を組む。
「なるほど〜。抱き心地を研究したくなるプロポーションよね。タンクトップにスリットの入ったホットパンツ。」
「それは最初からで、俺がそうしたわけじゃ、、、、、」
「兄さん!?」
汗、ダラダラ。笑顔で取り繕おうとするエドに、アルは顔を向ける。
「僕、大きいから邪魔だった!?」
「ち・ちがっ!それは大佐が言っ‥」
「僕が鎧だと目立って困る!?」
「ち、違うぞ、アル。それはエドがっ‥」
アルが顔を向けると、ロイも両手で激しく否定した。
「いーよ、僕、鎧でデカくてゴツゴツしてても良い人のお世話になるから!」
ぷぃっと横向くアルの前で
「「ねーv」」
女性二人はにっこり笑い合う。
「というわけで、大佐。これよりアルフォンス君とウィンリィちゃんはわたしが預かりますから。」

アルフォンス・エルリック、14歳。夜毎美人に鎧を磨かれる、華やいだ鎧時代を過ごすことになった。
FE蒼○の○跡に登場する猫族の女戦士レテが、フィギュアのモデルです(猫耳に尻尾つき;爆笑)。



2005/1/16 ガンガン2004年11月号 第40.5話「中央の凡愁」

「‥‥‥エンヴィ‥」
「あー?なんだ、グラトニー、腹でも減ったか?」
ふるふる首を振るグラトニーは親指をくわえて、心許無さそうにエンヴィーを見上げた。
「ンなわけ無ーか」
廃ビルの屋上、朽ちた手擦りに両腕をかけ、エンヴィーは暮れる空を眺めた。
ラストを失い、父の近くまで敵の侵入を許し、プライドにうざい事を言われた日が終りへと向かう。
「エンヴィー‥泣いてる?」
あ〜っ!?何で俺が泣くんだよ。泣いてんのはお前だろうが‥」
「‥‥‥」
「‥‥‥、ちっ。」
エンヴィーは手擦りに背を預けると、ずるずると座りこんだ。
「‥‥‥失敗したら‥」
「食っていい?」
「ああ。あのヘンテコな仮面の奴らも鋼のおチビも色男の大佐も!食って良いさ。だが、アイツはダメだ。」
片膝を抱き込んでエンヴィーは低く笑った。
「なぁ、ラース。焔の錬金術師はお前に任せてやるさ。だけど失敗したら、お前は俺が、焼き殺してやるよ。ラストのように、な‥」
ラストぉ
好きだったのか、嫌いだったのか
考えた事など無かった。兄弟と言うだけでそんな存在じゃないはずだった。だけど
『どんな利用価値があろうと、ラストを殺した奴を生かして逃がすなんて、俺は許さない!』
隣で泣くグラトニーの涙を指ですくうとエンヴィーはペロリとなめ、ラストに似合う星一つない夜空を仰いだ。
「置いて逝くなよ、おばはん‥」
夜明けなんてこなければ良いと言いながら、それでもウロボロスの子供達は夜明けを待つのだ。



2004/11/5 野良猫は泳げた(アニメ第43話)

「ったくアルの奴、なに考えてんだよ。」
賢者の石となったアルを軍とホムンクルスから隠す為、獣道を抜けて戻った故郷・リゼンブール。
その間、ロイ達に包囲されたとはいえ、川に落ちた挙句が
「水に入っても大丈夫だぁ!?ふざけるのも大概にしろってんだ!こっちは心配でどうにかなっちまいそうだっていうのに」
エドの愚痴を背に受けながら、ウィンリィは焼き上がったスポンジに櫛を刺してでき具合を見ている。
「聞いてるのかよ、ウィンリィ。」
拗ねた口調。
「聞いてない。」
そっけない応えに、がくぅとエドが首を落す。そのままテーブルに懐きながら、飾られていた花に手を伸ばし、花弁を千切り始めた。
「帰ったら帰ったで!くそ忌々しい親父に懐きやがるし。誰が育てたと思ってんだ。」
「小母さんでしょ。」
オレンジピールをチェリーブランデーで煮たソースをスポンジに含ませながら、手を休める事も振りかえる事もせず答えるウィンリィの背に、エドは口を尖らせる。憐れにもテーブルの花は丸坊主になっていた。
「母さんがどれだけ苦労したか、忘れたのかよ」
冷めたスポンジに最後の飾りのクリームをデコレーションしていたウィンリイは、そこでやっと振り向いた。
「お、できたのか?」
赤い顔でウィンリィは、クリームの付いたパレットナイフをエドに向かって構えていた。
「ウィン‥リィ?」
それでも言いたい事を唇を噛み締めて我慢していたウィンリィは、エドが花をゴミにしてしまった事に気付き、ダンッと、パレットナイフをテーブルに付き立てた。
柔かいパレットナイフは、本来とは違う使い方に悲鳴を上げ、パキッと折れる。砕けた欠片は、咄嗟にウィンリィを庇ったエドの機械鎧に当り、金属音を鳴らして床に落ちた。
「危ねぇなぁ。なにやって‥」
使い物にならなくなったパレットナイフを握り締めたまま、ウィンリィは泣いていた。
「おい、ウィンリィ‥?」
「アルは‥‥」
他の誰かがアルと呼んでも(だがそれはエドが許さない事だったが)アルの事でエドを諭しても、反省程度しかカタチを成さない。
だがウィンリィは別だ。
『昔からウィンリィはアルが好きだった。アルも‥』
子供の頃、どっちがウィンリィをお嫁さんにするかとケンカした事がある。その時は二人とも振られたが、それは本気じゃなかったからだ!
『俺はアルを好きだったし。アルはお嫁さんの意味を分ってはいなかった。』
もし、アルが本気でウィンリィと結婚すると言っていたら、勝ち負けなど二の次で、ウィンリィはアルに頷いていただろう。
『だからウィンリィの説教は怖い。』
アルを独占しておいて、幸せにできてないうしろめたさと
いつか奪われるのではないかと言う恐怖に
『俺の為なら、俺が頼めばアルは一生結婚しないだろう。だけど‥』
心は持っていかれてしまうかもしれない
『認めたくねーけど、ウィンリィはたぶん俺よりもアルを幸せにできる。』
愛してると言う想いだけなら誰にも負けない!
だが、想いだけではどうもできない事も確かにるのだ
『母さんを生き返らせたい願いだけでは、人体錬成できなかったように。』
大きく息をつくと、ウィンリィは涙を拭った。
「この花ね、アルが摘んできたの。」
パレットナイフの残骸を片付けながら、言葉を紡ぐ。
「どうしてか、分る?」
「その、綺麗だから‥じゃないのか?」
それともウィンリィの為にだろうか‥
そう考えるだけでエドの胸は痛んだ。顔を伏せ、そっと胸元を掴む。
ウィンリィはエドに背を向けレンガ製のかまどを見ると、ケーキが無事なのに一息ついた。
「殺伐としてるでしょ。」
ウィンリィの言った意味がわからなくて、エドは顔を上げた。
「アルはね。」
ウィンリィはケーキをテーブルへ移すと、別のナイフでクリームを切り、間にリンゴのコンポートを挟んでいく。
「自分の事であんたがピリピリしてるって、心配してんのよ。あんたの胃に穴が開くんじゃないかって‥。大笑いよね。」
その上からクリームで固め、器用に模様を施していく。
「だから”たとえ水に入っても心配要らない”と行動したり、あんたの気持ちを和ませようと、花を飾ったりしてる。それこそ一晩中”兄さんの好きな花”を探してね。」
「ごめん‥」
「アルには謝らないでね。あんたがヒドイ奴でいてくれる方が、付け込み易いし。」
「ごめん‥‥」
エドはアルの摘んできた花を戻そうとして、錬成を止める。
「死んだ人が生きかえらないように、この花を元に戻しても、それは”アルが俺に摘んでくれた花”じゃない」
飾り終えたケーキを冷蔵庫へ仕舞うと、ウィンリィはテーブルに散らばった花の残骸を片付けた。
「よく、分ってるじゃない。それでなくちゃ!アルは譲れないけどね。それでどこへ行く気?ケーキができたからお茶にするつもりだけど。」
「花を摘んでくる。アルの好きな‥。先、始めててくれ。」
「ねぇ、エド!?」
ウィンリィの呼びかけに、エドは戸口で立ち止まった。
「アルがホーエンハイムさんに懐く理由‥‥、お父さんだから、ってだけじゃ無い気がするの。」
「‥‥‥」
「アルが、帰ってくる場所はあんたのトコしかない。他の誰も、あんたの場所には立てない。だから‥」
「アルが迷子になったら、俺が絶対呼び戻す。戻れないトコにいるなら、迎えに行く!」
「エド‥‥」
「約束する。お前は俺が認める唯一のライバルだからな。」
出ていく背に、いつも見送るしかできない自分を寂しく思いながら、ウィンリィは祈った。

エドがホーエンハイムにアルが懐いていた理由、即ち、”どうしたらエドを元に戻せるか、どうやって賢者の石を使うのかを聞いていた”のだと知ったのは、真理の門を潜り、ロンドンでホーエンハイムに再会してからだった。
自分ではエドを超える存在になれないと知っているウィンリィは、エドの背も、アルの背も、見送ってきました。それが彼女の強さ、とか。エドの為にはピエロだって演じられるアル、とか。父への蟠りよりエドを優先できるアルの愛とか。書けてたら良いなぁというの半分と、もう半分は‥。すみません、この回のアルに不可解な行動があり、なんの説明もなかったから、フォローしたくなったんです〜。