2009/6/27 おぉっと1年ぶり?原作バージョン第21巻〜

「どういう事だッ、ホーエンハイム!」
プライドを閉じ込めた岩山を指差し、エドは吼えた。
「アルの提案だ。被害を最小限度に抑え我々が対策を考える時間を稼ぐ。」
「だからってっっ何で俺に相談無く‥」
「兄さんに言ったら絶対反対されるってさ。」
「当ったり前だっ!そうでなくても鎧の中にっっいや鎧の中は他にも入った輩がいるから事故と考えても、だ。血印の周りをぐるぐるぐるぐる‥」
エドは両手で頭を挟むとぎゃ〜っと叫んだ。
「おい、落ち着け」
ダリウスに羽交い絞めされて、エドは足をばたつかせた。
「賢者の石であるオレを使うか」
自分を指差すホーエンハイムに拳を落として
「だから!関係ない人の命は使えねぇって言ってんだろ!」
「カナマも関係ない人達だ。アルが街の安全を優先するのも同じだろう!?」
「アルはダメ。」
「‥‥‥」
「アルの事は魂の先から鎧の装飾まで何もかも俺の、、っ俺が、っっだからアルの事は俺が決めンだよ。」
「アルはお前の弟で確かにお前が面倒をみてくれてた?わけだが」
「何で疑問形だよ。、、、、って外野うっせーっ
後ろで見物していたシン御一行及びキメラ御一行は視線を逸らした。
「アルはオレの息子でもあるんだぞ。」
「わ〜ってるよ。結婚の暁にはあんたを”父さん”と‥」
「お前‥人柱になって来い。」
人柱確定で約束の日は近くなった。
前にも増して雑になったなぁ(涙)



2008/9/28 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア99第皇帝

全ての憎しみを背負って俺が死ねば、戦いの連鎖は終わり人々は明日を目指すだろう

「昨日ではなく、今日でもなく‥」
主人公のセリフをエドは繰り返した。

幼い頃、母さんに守られていた幸せな昨日  機械と鎧に身を委ねながらも、確かな絆でともに進む今日

「進化を望む、明日へ‥」

お互いの体を取り戻す明日

「身勝手だね。」
ぁ‥あ?‥えっ?」
母を失い、父を憎み。妹の身を案じながら自分達の明日を探す主人公の行く末が気になって観ていたドラマ。
ギアスを希望だと言う主人公の、辿り着いた心の安らぎに、使い方次第で凶器にもなる錬金術を捨てられない・いや錬金術とともに生きる自分を重ねたエドは、アルの冷めた言葉にイスから落ちた。
「ア、?アルさん?」
ちょうどそこへ、流れた言葉。
お兄様と一緒にいられるだけで良かったのに。お兄様の居ない世界なんて
泣き叫ぶ声に、エドはテレビを振り返った。
「‥‥あ」
「兄さんは、そんな事しないよね。」
振り返らないエドの肩に、アルの手が伸びた。そのままエドの肩に顎を乗せ、アルも画面を観る。
望む歓声に包まれ、成し遂げ満ち足りた眠りに誘われながら。ただひとりを泣かして彼は逝く。
守りたかったただ一人を泣かして
「一人で考えられるなんて、詭弁だ。どんなに大人になったって、失いたくないものはある。」
「そうだな。その一人の為に、頑張ったんだ。その人が大人になったって、泣かしていいわけじゃない。」
たとえその人が立ち直り、ひとりで生きていけると分っていたとしても、ただのひと時すら泣かす事は許せない。
エドはアルを見た。
アルもエドを見ている。
ふたりは共犯者の顔で笑いあった。

竜足
「そういえば親友も気の毒だよな。」
「ほんと。兄さんもほどほどにしないと、大佐が気の毒」
「大佐〜ぁ?あんなの親友じゃねぇ!」
「でも、同志でしょ!?」
「前言撤回!ツケは払うべし。」
アルは鼻を鳴らすエドに肩を竦めた。

ギアスって‥どうよ?

2008/4/7 迷惑メールって‥ヒマだよね

わたしはあなたのもの
「ってメールを貰った。アル、受け取ったぜ。」
エドが嬉々としてメールボックスを示すのに、取り囲んでいたハボック達は顔を見合わせる。
「やっちゃったな。」
「ヘンなサイトの閲覧?」
「買い物じゃないですか?」
「ヤバイ買い物だったりして。」
フュリーのフォローをブレダがひっくり返す。
そこへアルがロイと一緒にやってきた。その状況にむっとしたエドだが、アルがどことなし元気が無いのに目敏く気付いた。
「アル?」
「兄さんっ」
ロイを睨みつつアルの側によると、エドは鎧の手を取った。
「どうした?」
「ヘンなメール着ちゃった。」
軍に属していないアルはここにマイパソは持っていない。
「メール?」
アルが手を開くと携帯電話がそこにはあった。
「どうした?コレ‥」
「大佐に貰ったんだ。すぐに連絡できるようにって。」
「なにせ鋼のは危なっかしいからね。心配するアルに、すぐに連絡できるようにと配慮した。」
「ありがとうございます、大佐。すごく助かります!」
ギッと睨むエドに、ロイは大人の笑みを返す。
「ヘンなメールって?」
話題を変えようとハボックが携帯を手に取った。
ペポパ
微妙なキー音の後、現れた画面には
わたしはあなたのもの
「「アルが?」」
エドならともかくアルが?という面々の後ろから、ホークアイの声が響く。
「大佐が使っていた携帯を渡したんじゃないですか?」
「お古かよ。」
「バカモノ。メルアド登録しなくて済むだろうが。」
『『『魂胆みえみえ。』』』
ボソボソ呟く野郎どもと反対に、ホークアイは書類を突きつけながら鋭い目線を投げた。
「有害サイトを観閲する暇がありましたら、仕事をして下さい。」
「ゆ・有害サイトなんて利用してな‥」
「え?有害サイトを利用すると、こんなメールが来るんですか?」
「エドにも来てるぞ!?」
「ちがっ、俺はっ、、、、ただ買い物を‥」
「兄さんも大佐も不潔だーっ」
わ〜んと鎧の腕で顔を覆うアルは扉なんてものともせず走り去る。
「アル、待てっ」
「誤解だ!」
「お二人とも!仕事です。」
後を追おうとしたエドとロイの背中に冷たい声がかかる。
「ホークアイ中尉‥」
「あとで‥誤解を解いたらすぐにするから。」
「誤解?」
「ほんとに買い物しただけなんだ。」
「なんの買い物です?」
「え‥」
「う‥」
「何の買い物なんです?」
誤解を解けない
6階に行けないまま、二人はホークアイの前で冷や汗を流し続けた。



2008/3/30 赤春時代

「アル、、、、、最後だから、、、、これで最後にするから、、、」
入隊までの数日に コタエを出そうと思うけど
「”愛してる”って、、、、言ってくれっ」 
春まだ浅いアパートメントの庭で、母・トリシャがしていたように木の芽を愛でる弟の後姿にエドは叫んだ。
ふたりが過ごした年月を なにで量ればいいのだろう
振り向いたアルの見開いた瞳が、ゆっくりと伏せられる。
The youth as for the dream 
「‥‥‥最後で、、、、いいの?」
あとからほのぼの思えるか?
「え?」
「だから、愛してるって言うのは、これが最後でいいの?」
It is just the youth
「え?、、、ちょっ、待て、、、それって、、あ、、、良くないっ全然良くない!
I lose my way
伏し目がちのアルの視線に、エドは生唾を飲んだ。
「じゃあ、良いね!?」
「‥‥‥‥なにが?」
「言うの」
「え?」
自分の前を通り過ぎて部屋に戻っていくアルを、エドは呆けて見送り‥
ちょっと待てィ!
エドはアルの手首を掴んだ。
「おまっ、、、」
「僕、交渉課に配属される事になったんだ。」
軍にそんな課があるか?
ある意味現実的な思考を巡らし‥エドは、今肝心な事に気付いて頭を振った。
「いやいやいや、交渉課の有無はどうでもいい!それより、さっきの‥」
踊るように両手で指をあちこち指すエドに、
「交渉って言葉や空気のの駆け引きで経験がものをいうんだって。だから練習するように‥」
「‥‥‥練習〜ぅ?」
「さっきのはホークアイ中尉から教わったんだ。対、大佐用にって。」
「大佐って、、、まさか、もう?」
「あ、うん、、、、失敗しちゃったけどね。」
「ししし、失敗って?」
「抱きつかれちゃったんだ。何がいけなかったのかなぁ?」
てへ、と頭をかくアルに、エドの拳が震える。
ボコる
「何?」
「なんでもねぇ‥それで?」
「中尉に報告したら、大佐の場合は先ず殴れって言われた。」
「その通りだ!」
「でも、、、それじゃ交渉にならないよ。」
拗ねたようなアルの様子に、エドは弟の頭をぐしゃっと撫でた。
「大佐は特例だ。他は上手くいくよ。俺は、、、悔しいけど上手くあしらえただろ!?」
「じゃ、軍に入ってもいいね。」
「それとコレは‥」
「兄さんが教えてくれたら、上手くやれるよ。」
「‥う、、汚いぞ、お前‥」
にこっと笑うアルに、軍入隊を反対していたエドは溜息をついた。
「じゃ、さっそく。」
「おう、ど〜んとこい。」
「大佐に”最後でいいの?”って聞いたら、”最後でいい。”って抱き締められて‥」
ロイは腕に収まるアルの耳に囁いたのだ。
【また、始められるから。】
ぶっ殺す。
「なるほど。そう答えたらキスされなかったん‥」
言葉の途中で口を塞がれ、アルはエドの胸を叩いた。
「何すんだよ、兄さん。」
「消毒!」
「消毒って‥‥兄さん?どこへ?」
「仕事。」
「え?今日は休みって‥」
「あとから思っても遅いからな。即、行動。」
いったん門を潜ったが、エドは立ち止まると振り向いた。
「アル、入隊するなら、俺と一緒の部署な。」
「え〜、そんなの選べないよ!?」
だが、アルの返事を待たずにエドは走り出した。
The middle of the youth a lose a road
「迷うってんなら、一緒に迷えばいいんだ。」
エドは勝者の笑みを浮かべた。

Have Al and I been already over the beautiful times?
「過ぎてない!!」
エドは胸を張り、
「第一、過ごしてないし。」
アルは溜息をつく。



2008/3/29 19缶

   弟77羽-118ぺ異字  エド
左脇腹を鉄骨が貫くその状態は、痛感が麻痺しまた脳内モルヒネにより痛み自体は見た目ほどではない。しかし、そこからの出血と、おそらくは肺が傷付けている為の喀血で意識は遠のいていく。
僕が元の体に戻る、そのときは。兄さんの体も一緒だよ
ぴくっ
動かなくなっていたエドの指先が、聞こえるはずのない声に反応する。
‥‥‥、、、、、
『動‥け‥‥‥帰るんだ‥俺‥ア‥ル‥』
次に泣く時は、嬉し泣きだって約束したから。


≪兄さん、どうして‥?≫
≪アル、、、、エドは頑張ったわ。今は安らかに眠らせてあげましょ。≫
≪‥っ、、、、ごめん、ウィンリィ、、、ウィンリィの方が辛いのに、、、≫
≪何言ってるの?あたしにはアルがいるから、大丈夫よ。≫
≪でも、、、泣いてる‥≫
自分の涙はそのままで、アルの指がウィンリィの頬を伝う涙を掬った。
≪あたしは大丈夫。アルは傍にいてくれるから、、、≫
≪ウィンリィ‥≫
≪言ったでしょ、次に泣く時は嬉し泣きだって。アルはあたしを離さないでね。≫
≪ウィンリィっ、、、僕、兄さんの分までウィンリィを大事にするよ!≫
アルに抱きすくめられたその背で、ウィンリィは笑った。
≪これでアルはあたしのもの!≫


エドの拳が地面に打ち付けられる。
手袋から滲み出る血が、その勢いをうかがわせた。
(悲しみに)アルも(喜びで)ウィンリィも、泣かせるわけにいかねぇよなぁ‥」
ぱん
エドは生還に向けて、手を合わせた。

   弟76羽-115ぺ異字  ウィンリィ

どしゃ

振り向いたウィンリィの瞳に、雪に埋もれる鎧が映る。
「!?アル!!」
慌てて駆け寄ると、アルは頭を押さえながら上体を起こした。しかし立ち上がらない。
「アル、どうしたの!?」
「‥引っ張られ‥て‥‥」
「引っ張られるって‥エド?」
「いやお嬢さん、いくらエドワード君でもそんな事は‥」
慌ててフォローするマルコーをウィンリィはキッと睨んだ。
「分らないわっ、エドならあたしにアルを盗られないよう、なにか仕掛けを」
「‥ちが‥僕の‥体‥魂を呼んで‥る‥」
「え?アルがアルを?」
ナンバー66の話が、ウィンリィの頭を過ぎった。
「そんな、、、アルっ?」
再び崩れ落ちる鎧。雪の中、触れば冷えきった金属で、手袋を通しても痛みを感じるのに、ウィンリィはアルを揺さぶった。
「アル、起きて!」
反応は無い。
「アル、起きて!アルっ、、、誰か、誰かアルを助けて!」
周りを見ても皆一様に眉を寄せ、哀れみを滲ませた難しい顔でウィンリィを見返した。
「誰か‥」
動かないアルに、ウィンリィの体が震えだす。
エド

【アルは俺の!】

そう言って胸を張った姿が、甦る。
あんたのでいいから、、、あたしのじゃなくていいから!アルを助けて
エドッ
雪原にウィンリィの叫びが響いた。
願望こそ原動力(笑)、大切です。
蛇足 スカー
肩に置かれた手を見上げて確認する前に、そのままウィンリィはアルから引き離された。
「スカー‥?」
「このままでは先に進めん。」
アルをばらばらにし、其々の部位をスカーは配った。
『‥確かにここに居たってアルを助けられない‥だけど』
気一番重い胸部を背負うと歩き出すスカーの背を、ウィンリィは見つめた。
『血印のある胴体を持ったって事は‥』
重いから‥でもあるけど‥
アルの魂の一番近いところ‥アルが気付けば最初に感じるのは‥
『この人もライバルかもしれない‥』
ウィンリィはブラックリストにスカーを載せた。



2008/1/18 世界中=宇宙中≒自己中(71話)

「ウィンリィを人質にとっての交渉か。」
牢から単品で出され、メンテ終了後の野郎との面談に、エドは疑わしそうな顔を顕にした。
「私はウィンリィさんを人質にとったなど、一言も言ってませんよ?私はただ、軍の意向を伝え命令する為にいるのです。ブリックスに、血の紋を刻む為のね。」
「んな事できるかっ!第一、軍の意向って‥あんた、人民を犠牲にして国家が成り立つと思うのか。」
「国家の存亡、人の存亡。結果など付帯産物に過ぎません。私にとって大切な事は、思う存分私のチカラを使えるという事です。」
「‥っ、俺には分らねぇ。」
「この世は私の為にある。」
「ヤマモトりんだ。」
「分ってるじゃないですか。」
「論点ずれてないか?」
「ほら、大きな声を出して‥後ろでウィンリィさんが気にしてますよ。」
振り返るとガラス越しにウィンリィの姿が見えて、エドは小さくした打ちした。
自分のペースを愉しみながら、キンブリーは内ポケットに手をやった。
「では、分る話をしましょう。貴方の大切な事を自己中心的な部分にね。」
「!」

テーブルに置かれた あかい 血潮い石

「ノドから手が出るほど欲しいはずです。貴方達兄弟は。」
ドクン
エドの耳元で、大きく脈が響く。
賢者の‥石‥っ
ノドがカラカラで、引き攣った声が他人のようにエドの耳に聞こえた。
「弟さんの体の件、大総統閣下から聞いていますよ。」
「‥‥‥どこまで?あ、声は小さく。」
声を落として前かがみになったエドに、キンブリーは肩眉上げた。
「ウィンリィさんに内緒ですか?聞こえませんよ!?」
「いーから声落せって。」
キンブリーは肩を竦めると指を組んで、腹の上に乗せた。
「どこまでと言えば叫んじゃった℃魔ワで。」
声無き叫びを上げ、エドが床を転げ回る。
「もしかして内緒だったんですか?軍じゃ今更な話題だったから、公表してると思ってました。‥‥エドワード・エルリック、そろそろ着席しませんか?この程度で動揺しているようではこの先賢者の石で元に戻れても、山のような障害で生殺しですよ。」
「うっせー、元に戻ったら障害なんざ壊して壊して壊しまくるぜ。」
荒い息で着席したエドにキンブリーは肩を竦めると、何事も無かったように話を続けた。
「タイムリーにも今の貴方は自己中のなかですね。さ、どうです?仕事を引き受けるなら差し上げますよ。」

賢者の石
【誰かを犠牲にしてまで、元の体に戻りたくないよっ】
エドの目の前に、絶望と希望がある。
血潮く、深く、暗く

「アルと‥‥話させてくれ‥」
「いいでしょう。貴方も分ってくれたようですしね。弟の為≠ヘ貴方の為の別称ですから。」
歌うようにいうと、キンブリーは石を持って席を立った。
「この世は私の為にある‥」
呟いてエドは机に崩れ落ちた。
「軍のどこまでにバレてんだろ。ホムンクルスにもバレてんのかな‥‥こんなのアルに知れたら‥」
キンブリーの意図は全然伝わっていないようだ。
人質より、自己中な願いより。こんな些細な事の方が、今のエドには深刻だった。

いや〜、キンブリーさんが「貴方の自己中心的な部分に語りかける」と言った時、ホムンクルス側にも公認かーっと思いました。浮かれた結果がコレ(汗)。ギャグも捨てがたいが、やっぱ叫んどきたいトコも抑えないと〜(笑)。それで纏まらないのも自己中って事で(脱兎)



2008/1/17 初、姫(18巻、72)

【あたしも、もっともらしい理由を考えなくちゃねー‥】
人質という立場を自覚したウィンリィは、そう呟いた。

「‥‥‥」
「(^▽^)」
「ニコ、じゃねぇよ。」
「なによ、男らしくないわね。時間が無いのよ!?」
「だからって、なんでアルの中にお前を入れなきゃいけない?」
ウィンリィに顔を近付けて、歯軋りする勢いでエドは凄んだ。
「兄さん、、、でもキンブリーの取り巻きをまくには、僕の中に入った方が‥。姿を隠すにもいいし、走るのだって人数が少ない方が早い。」
アルのフォローに、ウィンリィは鎧に擦り寄った。アルの陰、庇われるように寄り添うウィンリィの姿はエドに痛く
「勝手にしろ。」
そう言った瞬間、ウィンリィの表情が勝利に満ちるのを、エドは見た。

「に、兄さん?」
ガバッと頭を抱えたと思ったら、いきなり詰め寄る兄に、アルは仰け反る。
「て、訂正ーッ!今だけだから。ホント、、だ〜か〜ら〜なッ!」
「小さい男。」
「ちっさい言うな。」
「も〜、急ぐよ二人とも。」
跪き、ブレストを開いて自分を待つアルに、ウィンリィは幸せそうに微笑んだ。
「アル、あたし、アンタ達の足を引っ張らないように、頑張るから。」
「ウィンリィ‥」
二人の世界。傅くアルの冑にキスしようとするウィンリィをエドは鎧の中へ蹴り入れると、ガシャンとブレストを閉じる。
「兄さんっ、、、乱暴!」
「うっせーっ。‥ウィンリィ、中でヘンな事するなよ。」
<へんな事って何よ。人質のあたしは、これ以上足を引っ張らないよう考えてるんじゃない。>
鎧の中でウィンリィの声がくぐもる。
「ウィンリィ、、、ありがと。ごめんね。僕達も頑張るから。ね、兄さん。」
『騙されてるぞ、アル。コイツ、自分の立場をどう活かすか考えやがったな〜』
「何してるの、兄さん。せっかくウィンリィが作ってくれたチャンスだよ。急ごう!」
アルはエドの手を取ると、足を忍ばせながらも走り出した。
初、手繋ぎ〜
ささやかな幸せを噛み締めるエドだったが、鎧の中ではアームの動きでおおよその見当を付けたウィンリィが小さく舌打ちをしていた。
『まぁいいわ。今年初のお姫様扱いしてもらったし。人質っていうなら腹括って、存分に活用させてもらおうじゃない。』
覚悟しときなさい、エド。そしてアメストリス軍。負の状況、ひっくり返して見せるわ。
 ロックベル
「ばっちゃんの名にかけて!」
しかしロックベル少女の整備簿は、もうすぐ乱入してくるメイ・チャンによって大きく動こうとしていた。

年末に金田一が放映されましたね〜、ちょっと9℃絵でしたが観れただけでも良しで。あれ?そんな話じゃなかったはず‥(笑)



2007/12/19 I wish you a merry [Merry] Christmas.

「?、アル、何見てんだ?」
真っ暗な外を眺めている弟がエドは不思議で、窓にへばりついている弟の傍によると、同じように上を見上げた。
薄く開いたカーテンの隙間から漏れる光が、白く輝いて落ちいてく。
『雪か‥珍しくもないのに』
エドはアルの頭をクシャッと撫でると
「風邪引くぞ、もう寝ろよ。」
カーテンに手を伸ばして閉めた。でも、アルはカーテンの下から頭を突っ込んで、眺めている。
「アル?」
「しあわせが‥」
「?」
「たくさん降ると良いね」
振り向いたアルの目がランプに光にきらめいて、蜂蜜色が微笑んでいる。
エドは片手で引いたカーテンの裾を持ち上げ、もう片方でアルの肩を抱いた。
「ああ、たくさん積もると良いな。」
兄さんに
  アルに
    みんなに‥

I wish the happiness pile up on you.
暖かな絵はこの時期書きやすいんですが、伝わるかは‥(涙)



2007/11/11 a lovebrush 

思わずという風に口を押さえられて、僕は自分の言葉を反芻した。
「、、、ウィンリィ〜?」
口を押さえたままのウィンリィを恐る恐る覗うと、思いっきり眉を顰めながらウィンリィは僕を見上げた。
「あ、いや、、、うん、、、ほら、僕鎧だったから歯磨きとかしなかったし、戻ってから動けない間は兄さんがしてくれてたし、、その流れ、、、、かな?」
言い訳としては苦しいような
『でも、そっか‥歯ブラシの共有はしないんだ‥みんな‥』
洗面台は1つで二人同時に使わないから
歯磨き粉も1つ、石鹸も1つ。コップも1つで歯ブラシも‥
ウィンリィも察したようで
「好きな人の、、、アルの食べ残しとか、うん、そうね、飲み物の半分こだって同じスプーンで食べるのだってできるけど、、、、さすがに歯ブラシを共有はね‥」
夢見るように例えた後、ウィンリィは真顔で生理的に受け入れられないと残念そうに僕の眼を見つめた。
「食べさしを食べる?」
好きな人の食べかけを食べ、、、
「ぅぇ‥」
「アル?」
好きなヒト、愛するヒト!その人と同じスプーン、、、
「ぅ、、ごめん。僕、それはできそうにない‥」
「え〜?好きな人よ!?誰でもじゃなくて。」
情けない顔をした僕を、ウィンリィは睨んだ。
「じゃ、エドのならどう?」
兄さんの齧ったパンを食べ、、、、
「そんなの絶対しない!」
首をぶんぶん振る僕をウィンリィはしばらく睨んでいたけど、納得したのかやっと笑った。
「なら、いい。」
「ウィンリィ?」
「これ以上の洗脳はわたしが阻止するから。」
「洗脳って、、、」
「そうよ。だって歯ブラシ共有なんて、究極じゃない。」
目の前に指を立てられて、僕は苦笑した。
「歯ブラシが2本並んでる方が、色っぽいと思うけどなぁ」
連ドラを例えると、
「甘い!それこそが洗脳よ!」
と返された。
『洗脳か〜』
それが当然である状態
「かもね」
明日も、これからも。歯ブラシの共有は変らないんだろう
そんな日が続くといい。



2007/7/9〜15 俺がアイツでアイツが俺でだから幼馴染なんだけど

「ねぇ、父とdaughterの7days♀マた?」
「なんだよ、それ。そんな事聞く為にこんなとこへに呼びたしたのか?」
ニコニコしているウィンリィに、エドはしかめっ面を向けた。
こんなとこ≠ニは、子供の頃遊んで叱られた2mほどの崖っぷちである。
「最近始まったドラマよ。電車の事故で父親と娘の人格だけ入れ替わるの。」
「‥くっだらねぇ。」
「その話の中にも出てくるけど、昔小説をドラマや映画化したchildhood friends≠竍私がアンタでアンタが私≠煌K段から落ちたショックで幼馴染の男女が人格だけ入れ替わる話なの。」
エドの事など聞いちゃいねぇ、うっとりと続けるウィンリィに、ふと、エドは今自分達が居る場所に改めて気付いた。
「おい、まさか‥?」
エドの手をウィンリィが握る。
「おいっ短絡的な事は止せ。そんな非現実的なっ、、落ちたら怪我する‥」
「あんたが暴れなければ死なないような落ち方するから大丈夫よ。」
悪魔の笑みでウィンリィはエドに抱きつくと、そのまま崖下へとダイブした。

「大丈夫?どこか痛いトコ、ある?」
そっと額に触れられて、エドは目を覚ました。
「っててて、、、、なんて事しやがる」
そこでエド、いや、今はうぃんりぃのエドは自分の声が豊口さんそっくりである事に気付いた。
「まさか‥」
頭に触れると柔らかい髪が指に絡みつく。
「その様子なら大丈夫そうね。頭は打たないように落ちたし。」
一安心した声に、うぃんりぃ(エド)はがばっと起き上がった。
「う〜ん、、、擦り傷は仕方ないか。傷、残っちゃうかな、、、ま、でも恋の負傷ってやつだから。」
「そんな単語は無ぇっ。」
「エド、ロープを錬成して?崖を登らないと。」
「聞いちゃいねぇな、他人の話。第一、こんな崖くらいちゃっちゃと登れるぜ。」
御御足露に崖を登るうぃんりぃ(エド)を見上げながら
「我が姿ながらハシタナイ、、、でも、それも我慢か」
でも、絶対教育的指導は入れてやると、えど(ウィンリィ)も崖を登りだした。
「なんだよ、これくらい登れないのか?」
そう言いながら手を差し伸べたうぃんりぃ(エド)に掴まって崖の上へと登りきると、えど(ウィンリィ)はうぃんりぃ(エド)を抱き上げた。
「な、な、なっ?」
そのまま歩き出すえど(ウィンリィ)に暴れようとしたうぃんりぃ(エド)は、かかった声に赤面する。
「どうしたの?兄さん、ウィンリィ!?」
慌てて駆け寄ったアルは、でもそっとそっとうぃんりぃ(エド)に触れた。
『もしかして、これって美味しい!?』
頬が熱い
その熱に浮かされるままうぃんりぃ(エド)がアルに手を伸ばす前に、妙に凛々しい朴氏の声がふってきた。
「崖から落ちた。たいした事は無いが、部屋に寝かせてくる。」
「ばっちゃんに‥」
「訳ありなんだ。俺から話すから、アルはお茶でも入れててくれ。」
「え、、、あ、うん‥あの、、、」
「アル、わ、、俺を信じて待て。いいな?」
「う、、うん‥」
『なんてカッコいいんだ、俺!』
自分じゃない自分の行動に、エドが内心感心していると
「‥兄さん‥‥」
「なんだ?」
「ううん‥待ってる」
明らかにアルもえど(ウィンリィ)を見る目が違い、うぃんりぃ(エド)の血の気が引く。
アルを置いて2階へと上がったえど(ウィンリィ)がベッドに放り出されたうぃんりぃ(エド)はすぐに起き上がると、えど(ウィンリィ)に噛み付いた。
「お前っ、どういうつもりだ!?」
「実験は成功ね。あんた、馬鹿にしてたけど!?」
「む、その事は改めて研究‥違〜う、どういうつもりかって聞いてんだ。」
「ウィンリィ?どうかしたの?」
うぃんりぃ(エド)の上げた大声に、アルは2階へ飛んでくると扉越しに尋ねた。
「大丈夫ょ、だ、アル、入って来いよ。」
えど(ウィンリィ)は素早くうぃんりぃ(エド)を抱き込むとうぃんりぃ(エド)の顔を自分の胸に押付け、口を塞いだ。
遠慮がちに戸を開けたアルの眼に飛び込んできたのは、スカートの裾を乱してえど(ウィンリィ)に縋るうぃんりぃ(エド)の姿で。
「ごめんっ」
小さく叫ぶとアルは扉を閉めた。
「アル、そこにいるか?」
「あ、うん、、、」
扉を隔てた会話
「余所者がちょっとな、、、けど大丈夫。間に合ったから。うぃんりぃ(エド)は大丈夫だよ。だけど勢い余って崖から落ちちゃって、しばらく混乱してるけど、本当に大丈夫だから。入ってきても良いんだよ?」
少し躊躇してから、アルは戸を開け顔だけ覗かせた。
えど(ウィンリィ)はうぃんりぃ(エド)をガシッと抱き締めながら、心配そうなアルに微笑んだ。
「俺を信じろ。」
「うん。」
アルはやっと表情を緩めた。
「誰か、、、ばっちゃんでも、、呼んでくる?」
「ああ、、、頼むよ。」
扉を閉めようとして、アルは動きを止めた。
「アル?」
「兄さんは、、、、」
「?」
ポカンとしたえど(ウィンリィ)に、アルは苦笑して首を振るとピナコを呼びに階下へ降りていった。
「アル‥どうしたんだろう?バレ‥るわけないし‥」
首を捻ったえど(ウィンリィ)は抵抗疲れで酸欠になりつつあるうぃんりぃ(エド)に気付き、やっと押さえていた両手を離した。
「息して。酸素欠乏すると馬鹿になるから。」
「おまっ、、誰のせいだと‥」
「1+1は?」
「アホかっ」
「アルは何を言いたかったのかしら?」
「もうそっちの話かい。まったく女の会話は‥」
アルの事を心配するえど(ウィンリィ)の様子に、うぃんりぃ(エド)は溜息をつくと胡坐をかいて肘杖を突いた。
「アルは、俺も怪我してないか聞きたかったんだよ。」
「だったらアルはキチンと聞くわよ。あんな歯切れ悪く‥」
「お前の為だよ。」
静かなうぃんりぃ(エド)の言葉が、えど(ウィンリィ)の声を遮った。
眉を顰めてうぃんりぃ(エド)を睨むえど(ウィンリィ)に、エドは諦めたような笑顔を浮かべた。
「俺を庇って崖から落ちたって言ったろ?それで俺が怪我してたら、お前が気に病むといけないと思って、聞くに聞けなかったのさ、アイツは‥」
お前が大事なんだよ
つまらなそうに呟いたうぃんりぃ(エド)に、えど(ウィンリィ)は向き合って座った。
「だから困ることもあるわ。」
真剣な声に、うぃんりぃ(エド)は視線を上げた。
「大事にしてくれるから、アルは私を異性として接しない。守るべき、愛すべき女の子なだけで、抱きたい女にはならない。」
「抱きたっ、、てっ、おまッ」
赤面するうぃんりぃ(エド)に、えど(ウィンリィ)は鼻を鳴らした。
「私は、子供じみたおままごとでこんな馬鹿げた事までしでかしたりしない。本気よ。」
「ウィン‥」
「だから、私がアルを抱く事にしたの。」
「ウィンリ‥はぁ?」
気後れしていたうぃんりぃ(エド)は、肝心な点に話が戻った事にやっと気付いた。」
「アルを‥だ、だ、だ‥」
とー
「あたしの家でハシタナイ話はしないどくれ。」
飛んできた雑巾は見事にうぃんりぃ(エド)の顔にヒットした。
「ばっちゃん。いちようこれ、私の体なんだけど。」
「だからスパナは止めといたんじゃないか。」
ピナコはキセルをスゥ〜と深く飲むと、フ〜と吐き出した。
「ばっちゃんもグルなのか?」
「人聞きの悪い事言うんじゃないよ。だけどね、ウィンリィ?」
ピナコはうぃんりぃ(エド)の顎をキセルで上げると、眼を細めた。
「お前は女≠ネんだから、早まった事、取り返しのつかない事はするんじゃないよ、いいね!?」
『『こわっ』』
さすがの年季に、えど(ウィンリィ)もうぃんりぃ(エド)も素直に頷いた。
「じゃ、あたしゃアルを丸め込んどくから、ケリは二人でつけるんだよ。あ、だからといって、二人ともキチンと毎日働いてもらうからね。」
ピナコが出て行くと、うぃんりぃ(エド)はバツが悪そうに、ボリボリ頭をかいた。
「禿げるからやめて。」
「お前なぁ、、、、お前、何で不満なんだよ。アルなんてお前の事俺より大事にしてんだぞ。俺の格好したって‥」
「それはどうかしら?」
えど(ウィンリィ)の含みに、うぃんりぃ(エド)は手を止めた。
「さっきの反応見たでしょ?アルの兄を見る目、いつもと違うと思わなかった?」
「それは‥‥だけどっ」
「さっきも言ったでしょ、私は本気よ。」
えど(ウィンリィ)は自分のタンスを開くとズボンを取り出しうぃんりぃ(エド)へと放った。
「あんたどんな格好するか分らないから、着替えて。」
「あ、、う、、」
スカスカして落ち着かないと思っていたうぃんりぃ(エド)は逆らわず、ズボンに穿き替える。
「こっち見んなよ!?」
「見ないわよ。」
「ちょ、どこ行く?話は終わってな‥」
出て行こうとするえど(ウィンリィ)を、うぃんりぃ(エド)は片足ズボンに突っ込んだまま止めようとしてすっ転んだ。
「私は、あんたと違う。落としてみせるわ。絶対。」
「おいっ、アルを傷付けるなら‥」
「あんたと違うって言ってるでしょ。」
振り向いたえど(ウィンリィ)は嫣然と微笑んだ。
「アルから望むぐらいに、私にメロメロにしてみせるわ。」


「何してんだ、お前らっ」
体を取り戻してから、エドとアルは改装し廊下で繋がったロックベル家の隣で暮らしていた。一つ屋根の下といって良いほどの距離。
廊下から飛び込んできて扉で仁王立ちしながら肩で息をする幼馴染の姿に、アルは思わず立ち上がりかけ、腰に回っていたえど(ウィンリィ)の手に遮られ再びソファに沈んだ。
「耳掃除、見て分らないの?」
体を反転させ、アルの膝の上に上体だけ起こしたえど(ウィンリィ)が不機嫌そうにうぃんりぃ(エド)を見上げた。
「どこが耳掃除だっ、、、今、お前ら‥」
言われるアルが顔を赤らめえど(ウィンリィ)を膝からどけると、えど(ウィンリィ)は満足そうに笑って、ソファに両手をかけた。
「キスしたかったから、顔を近付けてた。分ったんなら邪魔するなよ、無粋だな。」
「キスぅ?ア、アルッ」
「ごめん、ウィンリィ、、、その、僕‥」
いつもの兄の叱咤も、うぃんりぃの姿ではえどとのキスを咎められているとしか受け取れず、ウィンリィを兄の恋人と位置づけているアルは申し訳なさそうに小さくなった。
「アルッ、お前、、そんなヤツが良いのか?それとも俺でよかったんなら、もっと早く」
「ごめん、ウィンリィ。頭、冷やしてくる。」
責められていると受け取っているアルにうぃんりぃ(エド)の気持ちは届かず、アルは泣きそうな顔で部屋を出て行ってしまう。
「アルッ、、、、、‥‥‥ウィンリィ〜っ」
閉まった扉に、うぃんりぃ(エド)は今度はえど(ウィンリィ)を睨みつけた。
「言葉遣い、気をつけなよ。今お前はウィンリィなんだから、さ。」
すっかり女言葉を隠し、えど(ウィンリィ)はうぃんりぃ(エド)を嗤った。
「‥‥‥いいだろう、じゃあ俺はウィンリィとして行動させてもらう。」
「ばっちゃんが言った事は忘れるなよ!?」
【女なんだから早まった事、取り返しのつかない事はするんじゃないよ。】
うぃんりぃ(エド)の額に嫌な汗が浮かぶ。それにえど(ウィンリィ)が笑った。
「ま、いいけど?アルになら迫ってくれても。」
「え?」
「いいよ?アルにならね。」
「え、、、でも、お前‥」
「そして思い知ればいい。私がどうしてこんな事までする気になったのか」
えど(ウィンリィ)はソファから立ち上がると、アルの後を追うように部屋を出て行った。


それから
アルは極力えど(ウィンリィ)と二人きりにならないようにしているようだった。そしてえど(ウィンリィ)は、焦るどころか満足そうに、そんなアルを見ている。
『避けるって事は意識してるって事だ‥』
この事実は、うぃんりぃ(エド)を打ちのめした。
『アル、お前‥俺でも良かったの?俺は、お前に迫っても良かったのかよ』
八つ当たりな思考に、うぃんりぃ(エド)は自嘲した。
『違う‥俺が臆病なだけだ。ウィンリィにできて、俺にはできない‥』
知らず溜息をついていると、アルが心配そうに足を止めた。アルはえど(ウィンリィ)を避けるのと同時に、うぃんりぃ(エド)も避けていたので、久し振りの、しかも心配げな表情に、うぃんりぃ(エド)の胸が温かくなる。
「アル。」
うぃんりぃ(エド)が思わず手を取ると、アルに緊張が走る。
「アル?」
「‥この間は、ごめん。なんか、兄さん別人みたいで、それで確かめたくて、、、信じてもらえないかもしれないけど、、、顔覗き込んでただけなんだ。」
兄さんも僕に構ってるけど、ウィンリィを大切に思ってるんだよ
申し訳なさそうに笑うアルを、うぃんりぃ(エド)は
「違う、本気なんだ!アル!!」
叫びそうになるのを辛うじて堪えた。
待て待て待て、俺は今、ウィンリィだ。そして、このまま戻らなければ、俺は
『胸を張ってアルと結婚できる〜v』
頭の回りを飛び回るキューピッドにうぃんりぃ(エド)は頷くと、アルに抱き付いた。
「アル、わ、、私はお、、あなたが好きなの。」
そのままキスすると、エドの時と違いアルはうぃんりぃ(エド)を振り払ったりしなかった。
『体はウィンリィでも、キスの感触は俺ンだ。』
うっとりしながら、うぃんりぃ(エド)がさらに体を密着させると、アルは震える手でうぃんりぃ(エド)と距離をとった。
「アルっ!?」
「ごめん‥」
アルは俯きながら、苦しそうに胸元を押さえる。
「アル。」
なお近寄ろうとするうぃんりぃ(エド)に
「来ないで!」
鋭く叫ぶと、力尽きたようにアルは蹲った。
「ごめん、ウィンリィ‥でもお願い。来ないで‥」
「アル‥」
「‥ウィンリィは好きだよ。でも、兄さんのお嫁さんってずっと思ってた。」
「それは!」
「うん、僕のわがまま‥だからウィンリィが‥誰と結婚しても反対しないし祝福するよ。本当だよ。でも、僕はダメだ。」
「ア‥ル‥‥」
「ウィンリィは僕にとって兄さんのお嫁さんなんだ。兄さんが他の誰かと結婚して‥その時ウィンリィが僕を好きでいてくれたら、、、そこからしか始められない‥ごめん。」
ウィンリィを気遣って、でもエドを優先してしまう申し訳なさにガタガタと震えるアルは、愚かなほど可哀想で、淋しいほど美しい。
『どうして?』
うぃんりぃ(エド)はその場を逃げ出した。
『どうして自分をその中に含めないんだよ、馬鹿アルっ』
涙が零れるのは、女の体だからだとうぃんりぃ(エド)は嘘をつく。
『馬鹿なアル』
木の陰にえど(ウィンリィ)が居るのに、うぃんりぃ(エド)は気付いた。
『可哀想なウィンリィ』
聞いていたに違いない。そしてアルもきっと今、俺達を見ている。
けれど、うぃんりぃ(エド)は動きを止める事はできなかった。そのままえど(ウィンリィ)に抱きついて縋り泣くしか、できなかった。
『可哀想な、俺』
えど(ウィンリィ)はうぃんりぃ(エド)の肩を抱くと、半ば強引に家の中へ引きずっていった。
「わかった?」
ハンカチを渡しながら小声でえど(ウィンリィ)は囁く。
「私の事、可哀想だと思ったんでしょ?」
「ウィンリィ‥」
「あんたは、ここでリタイアしてなさい。」
「え?」
「私は、諦めないから。」
不敵に笑うと、えど(ウィンリィ)は、アルの元へと戻っていく。
「前言撤回!アイツ、全然可哀想じゃねぇ!!」
アルを誘って裏手の森へと消えていくえど(ウィンリィ)に、うぃんりぃ(エド)はハンカチを床に投げつけるとすぐさま二人の後を追った。

「アル、捕まえた。」
「兄さん?」
「あれから、俺を避けてただろう!?」
「‥べつに、そんなわけじゃ‥」
「じゃあ、何故距離を置く?」
木に背があたり、アルは後退できない事を悟る。
「それは兄さんが近付いてくるからだろ!?」
「仕方ない。俺は近付きたいから。」
アルの視線が右に流れたのに、えど(ウィンリィ)は左手をアルの顔の横へと付いた。
「兄さん‥?」
反転するのを許さず、えど(ウィンリィ)は右手も木につき、アルを両腕の中に囲う。
「兄さんっ」
「なんだ?」
間近に迫るえど(ウィンリィ)の顔に、アルは思わず目を瞑る。
「兄さん、ヘンだよ。なんか‥」
深く深く口付けされて、アルはようやく両手を突っ張ってえど(ウィンリィ)と距離をとった。
「兄さん、何してるか分って‥」
「目を瞑ったのはキスを望んだからだろう?」
「違う!」
「だったらどうして最初から俺を押し返さなかった?」
「それは‥‥っ」
「俺が恐い?」
「!」
「恐いのは俺を意識してるからだ。違う?」
「僕は‥」
アルが目を伏せたのにえど(ウィンリィ)は笑うと、アルの顎をすくった。
「意識するのは好きだから‥アル」
再び近付いてくる唇に、アルはえど(ウィンリィ)を引っ叩いた。
「ア‥?」
「恐いのは兄さんじゃないみたいだからだ!兄さんが、、、、知らない人みたいだから‥」
零れた涙を拳で擦ると
「兄さんの馬鹿っ」
アルは叫んで走り去った。

「よぉ、失敗だったようだな。」
あちこち探したのだろう、肩で息をつきながらもニヤっと笑ったうぃんりぃ(エド)に、えど(ウィンリィ)は殴られた頬をハンカチで拭くと
「ディープなキスはしたぞ。」
冷静に切り替えした。
「でーぷなきす?」
「頭の悪そうな言い方はしないで。」
「ばかやろッ、なんて事しやがる。」
「だから!私は本気って言ってるでしょ‥?エド?」
怒りより不安げなうぃんりぃ(エド)の様子に、えど(ウィンリィ)は眉を顰めた。
「アル‥傷付いてなかったか?」
「え?」
「アルは俺を信頼してる。苦しいほどな‥だから、そんな事したら‥」
「あんた‥結構苦労してるのね‥‥」
いつもエドがふざけてアルに愛を囁いていた理由が分って、えど(ウィンリィ)は両手を広げた。
「だからって‥こんなチャンス、もう無いから。引き下がれないわ。」
「確かに。こんなケースは他にないな。貴重な研究材料だ。」
二人が視線を向けた先に、ロイがホークアイと兵士を従え立っていた。
「大佐、何故ここに?」
驚く二人にロイはニカッと白い歯を見せた。
「エドの様子が変だと先日アルフォンス君に相談されてね、やっと今日ピナコ・ロックベルからも事情を聞く事ができたんだよ。」
「ウチの部署に支給される年間費ほどかかりましたが。」
「ばっちゃん、お金で私を売ったの〜!?」
でも、ありえる。
ムンクの叫ぶ人状態なえど(ウィンリィ)に、ロイは額をかいた。
「ウィンリィ、、、その姿でそういう言動はやめてもらえないか。気持ち悪い。」
「とにかく。このまま二人を放置するのは危険なので、軍所属の研究所に隔離します。」
「「え!?」」
あっという間に団子虫にされると、二人はトラックに詰め込まれた。
「待て!アルには、この事は‥」
「教えた方が、ヘンな兄の誤解が解けるぞ?」
「そりゃそうだけど、、、、」
「つまり、ウィンリィちゃんの格好でしかできないような事を、アル君にしたって訳ね。」
「したんじゃねぇッ、聞いただけ」
「バレたら、怒るでしょうね。」
「二度と口を利いてくれんかもな。」
「大佐、、、」
泣きそうなうぃんりぃ(エド)に、ロイは笑った。
「さて、何と等価交換しようか」


伝染病でおかしかった℃魔ノなっていたエドとウィンリィが、予定より早くセントラルから戻ってこれたのは、アル欠病で役に立たなかったからだった。
恋の病はどこまでも。ふたりの迷惑な恋成就研究は続く。

ギャグのはずだったのにそこはかシリアスな‥でもコレはシリアスにするには重過ぎる(笑)

「しかし、体が入れ替わるなんて、、、美味しい事、できちゃったんじゃないの?」
戻ったエドにハボックが耳打ちすると
「風呂は目隠しでコイツが入れた。パックだのマッサージだの長いのなんのって、のぼせちゃったぜ。」
「私はどうでも良かったんですけど、エドだし。」
耳聡くウィンリィは聞きつけたが、そんな事より計画が失敗したショックが強く覇気無く応えた。
「ばっちゃんがソコんとこは、許さなくてさ。」
「エドのは?」
興味を持ったらしくブレダも聞いてきた。
「アルを口説きたかったから、取敢えずパックとマッサージと筋トレはしましたけど。あ、使い方とかも。」
「健気ですねぇ。」
フュリーの感動を他所にエドは机を叩いた。
「俺は良いのかよ!?俺のプライバシーは!」
「今さらエドだし。」
「「野郎に同情はしない。」」
「えっと、、、ご愁傷様?」
「使い方って、何のです?」
ファルマンひとり、真面目に聞き返すと、ウィンリィは視線をエドの股間へ落とした。
「まず使えるか、次に満足させられるか。あ、エド、練習用のあんたの部屋においてあるから。」
男連中の顔が青ざめる。
「アルに見つかってないといいわね。」
飛び切り悪女の微笑で、ウィンリィは顎に指を当てた。



2006/11/24 快夢(夢で見ると、兄ちゃんはアル一途なカッコイイひと です。何故、書けないんだろう;汗)

錬成の進行を止めるには、誰かが‥アルが‥過程の途中で遮断をするしか、栓となるしかない

錬成の一端を担っていた男は疲れた顔でそう言った。
天下取りを狙った大掛かりな錬成はエド達の活躍で、なんとか阻止できた‥ように見えた。
一安心した軍部の面々は、施された錬成陣等の解体前に一時休憩を兼ねたお疲れさま炊き出し会で、功労者のエドは疲れた顔にそれでも笑みをしいてあちこち引っ張りだこになっていた。

アルは人ごみに飲まれる兄の姿が見えなくなる間で目で追った後、男に頷いた。
全身に錬成陣を書き込み、地下へと降りる。
ただひとり気付いたのだろうロイが、その入り口に厳しい顔で仁王立ちしていたが、止めたりはしなかった。事の真相を、いまだ続いている破壊への錬成のカラクリを知った彼もまた、<アルに止めてもらう>他にどうする事もできないのだ。
苦いものなんて得体の知れない物ではなく、まさに鉄の味がロイの噛み締めて切れた口の中には広がっていた。

アル?
エドの呼ぶ声にアルは迷わず身を穴へと躍らせた。
兄に見つかる前に エドを悲しませる前に

ハボックやブレダ達が、上手く話をそらせるのにもアルを探すエドは乗ってこない。アルの居ない事に敏感に気付いたエドは、炊き出しの場所からひとり離れ、腕を組むロイの前に立つと彼を睨み上げた。
「アルは?」
「‥‥」
「どこだ!?どこにやった!」
疑問ではなく断定

あぁ、なんて弟の事になるとこうも鋭いのだろう

アルに止めてもらわなければ、この国は滅ぶかもしれない。だけど

ロイはマンホールの蓋の上から退いた
「?」
「‥‥」
「アルは、、、この下なのか?」
「‥‥」
もう体に残っていないと思っていた力が溢れ出し、エドは重い蓋を引き摺った
ズズ
暗い穴の下からは異臭が上ってくる

兄さん、来ないで!

そんな叫びを耳ではなく、全身で感じてエドの肌は粟立った。

何を言われても どんなに拒絶されても そこにお前が居るなら俺は‥

「払うしかないなら、せめて最小限の犠牲で安全を得る事が指揮官の任務だろう!?」
天才国家錬金術師は、国の財産でもあるのだよ、という諌言に
「空蝉になっても、でしょうか?」
エドの生きる素は、アルしかないのだ
反論したのはホークアイで
地下から昇る風に顔を顰めるとロイはただ、先の見えない暗い穴を見つめるだけだった
夢なんで相変わらず話にはなってません。見た7月竜は、カッコいいぜと惚れ直したんですが、、、これでも(汗)



2006/07/16 ついに諦めて取敢えずの前振り(涙笑)。原案はメルカシ病様で、それを曲解しゃいました(酷)

「コイツ、どこまでの事が分ってるんだ?」
「全て。」
タッカーの答えに、ラストはうざったそうに髪をかき上げた。
「当てにならないわ。その証拠に、あなたの愛娘は瞬きすら出来ない。」
「人体錬成とキメラの合成は違う。キメラ合成は私の得意分野だ。妻のケースとニーナのケースの記憶の違い、それを錬成過程で比べて活かしたんだ。今まで学んだ言葉の記憶は残っているよ。」
感情の読めない面持ちでスロウスは訊ねた。
「エドワードの事は?」
「エドワードという意味は残っているよ。でも、兄というそれだけだ。エドワードが誰なのかは分からない。」
「つまり、俺がエドワードでも構わないわけだ。」
エンヴィーは面白そうにアルフォンスの頭を撫でた。
「さぁ起きろよ、アルフォンス。パーティーを始めようぜ。」
開いた鬱金の瞳は一度瞬きすると、エンヴィーの姿を捉えた。
「あの子はどうやって賢者の石を取り出すのかしら?楽しみだわ。」
アルフォンスの顎を持ち上げて、ダンテはうっとりと笑った。

リオールの内乱でアルは賢者の石となった。最初に手にしたのはエドと一戦交えた後、大総統の密命でその場に残っていたスロウスで、アルが目覚める前にダンテは賢者の石と貸した鎧を砕くと、いずれ賢者の石を取り返しにくるだろうエド達に、面白い余興を見せる事にした。
アルの複製を作り、アルを砕いてその中に隠す事。
賢者の石となったアルに、もはや血印は奥深く隠れ。砕かれてもその魂は消えない。
砕かれた最後の一欠けらが消費された時、アルフォンスの魂がどこに行くのか‥。そんな事は彼らには関係なかった。
具合の良い事に、リオールでの死者行方不明者数は、指揮官のアーチャーが負傷した事もあり改めて調べられる事は無かった。たくさんの献体を手に、鎧の一欠けらと交換でタッカーは忠実にアル’を作り上げた。

                 

リオールでの軍事侵攻を喰い止められず、やるせなさを噛み締めていたエドに届いたアルフォンス行方不明の一報は、エドから思考を奪った。
崩壊したリオールの街を駆けずり回り、日が暮れて迎えに来たロイ達に、エドは殴りかかった。
ロイを庇ってエドの一撃の前に身を乗り出したのは、ホークアイで、彼女を受け止め吹っ飛んだロイは、すぐにリザを抱き起こし彼女の無事を確認する。当たる直前でエドも気付いて勢いを削いだ為、殴られた痕は酷いが骨まで損傷はしていないようで、ロイは息をついた。
不本意にも女性を殴ってしまった事で一瞬力の抜けたエドだが、激情は収まらなかった。
あんたをっ信じ‥」
ガクッと膝をついたエドは、上手く息継ぎが出来ないようで笛のように喉を鳴らした。
大佐はでもアルフォンス君は、貴方が心配で‥」
痛みに唇を戦慄かせながら、ホークアイは必死で言った。
「エド‥」
リオールの終日を瞳に刻んで、戻ってきたロゼがエドの肩を抱いた。
「しっかり!息をして。エドっ。」
言葉を取り戻したロゼの叫びも、エドには届かなかった。

                 

「俺の手に、何が残ったんだろう‥」
連れ戻されたセントラルシティ。半狂乱から一転して、首を振るハボック達の、アルフォンスは見つからなかったという無言の報告にも、エドは反応しなかった。
母さんを生き返らせたくて、アルを巻き込んでホムンクルスを作ってしまった。その責任はとらなくてはいけない。そして錬金術師だから、スカーがやろうとしていることを止めたいと、そう思った。
だから、アルを置いていった。
だけど、ヒトとして大切なその思いは、俺にとってアルより大切なモノだったんだろうか‥
どうして俺は、アルと離れても大丈夫なんて思ったんだろう
「大丈夫だろうが。」
見透かしたように言い置くと、ロイは膝を抱えたエドの脇に立ち
「貴様がいなくても、鎧を壊しさえしなければアルは生き続けられる。そういう意味では貴様は不用だ。」
エドの胸倉を掴むと引っ張り上げた。
「それで、貴様はどうするツモリだ。このまま、うだうだと嘆くのか?」
まぁ、それもいいだろう とロイは手を放す。
「私は先へ‥ヒューズの真相を、この国をヒトの手に戻す先へと行く。ではな。」
力なく崩れた格好のまま、エドは呟いた。
「先なんて‥」
「エド‥」
慰めようとしたロゼの声より後方から、鋭い応え。
あんた、やる事があったんじゃないの?
「ウィンリィさん、、、あの」
止めようとするシェスカを振り切り、ウィンリィはエドをバッグで殴った。
「やる事があったから、アルを置いていったんじゃないの?それでっ‥今更、それを止めるの?」
ウィンリィは膝をつくとエドの襟首を掴んだ。
「あたしはっ‥‥、先なんて知らない。先なんて、今はどうでも良い。だから‥」
ウィンリィは息継ぎをすると、立ち上がって涙を拭いた。
「あたしは今を生きる。アルがいないのなら、アルを探す!諦めたりなんて、、絶対してやらないっ」
「‥前にさ、バリー・ザ・チョッパーに追っかけられただろ!?あの時、俺はニーナで頭がいっぱいで、何もさせてくれない軍が腹立たしくて、突っ張って‥でも本当は、何もできないガキだったんだ。そんな俺を、アル‥捜しに来てくれた。無力な俺を、僕が付いてるからって‥、俺はなんで、アルより優先しちまったんだろう‥?今度も‥アルは、まだ俺を捜しに来てくれるだろうか?」
バカ
ウィンリィは立ち上がると、バッグをエドに投げつけた。
「捜しに来てくれないなら、探しに行きなさいよ!」
「‥どこへ?リオールをイシュバールの二の舞いにはさせないって‥アルにそう言ったのに、俺は、それすらできなかった。そのリオールに、アルは‥」
リオールを半壊させたのが、スカーの行った賢者の石錬成だと分っている。その中心にアルがキンブリーといたと、かろうじて逃げ延びた軍人が証言しているのだ。
「どこまででもよっ。地の果てだろうが地獄の底だろうが、見つかるまでどこまでもよ。」
「待って下さい。エドはホムンクルスや軍からアタシ達を助けてくれました。少し休ませてあげて‥」
割って入ったロゼに、ウィンリィは視線を向けなかった。
「それなら、胸を張れば良い。」
「え?」
「自分の行いが正しいと思うのなら、ちゃんと立って、そう言えばいいのよ。だったら、あたしもアルも、納得できる。」
「あの‥?」
「リオールの内乱は、貴方達が起こした。それが正しいかどうかなんて、蚊帳の外の人間が言う事じゃない。アルがリオールにいたのなら、それはアルの意志でやった事。誰かがどうか、なんて事じゃないの。そしてあたしがアルを捜すのは、あたしの意志。だから、誰にも何も言わせない。」
誰が死んだと言おうと諦めるつもりはない。
冷たく言い切るウィンリィは、けれどとても美しかった。
「バリー・ザ・チョッパーの時、アルはあんたの暴走を止めたのよね。今度はどう?アルは止めたの!?なのにあんたがその行動を悔いてるなら、ホント、アルは、報われないわ。」
やっと、エドは視線を上げてウィンリィを見た。
「あんたがアルを連れてリゼンブールを出る時、あたしに言ったわよね。必ずお互いの体を取り戻すって。それはあたしとの約束じゃなかったの?アルとの約束が錬金術師としての、けじめを付ける事だったら、付けなさいよ。俺は約束を守ったって、威張ってアルを迎えに行ってよ。アタシの約束、アルとの約束‥どっちを優先してもいいからっ」
「‥‥ウィンリィ」
ウィンリィは鼻をすすると、バッグを拾った。
「アルは‥待ってる‥あたし‥も‥あんたが‥約束守るのを‥信じてる‥から‥」
気が抜けてしゃくり上げるウィンリィはシェスカに背を撫でられながら、身を翻した。
「約束‥」
のろのろと立ち上がると、エドは三つ編みを結び直した。
「アル‥‥ 」

                 

翌日、軍部へホークアイの詫びに訪れたエドは、ロイが既に計画を実行に出かけたのを残務処理に残っていたフュリーから教えられた。
「そうか‥」
「エドワード君は‥どうするの?」
「アルがさ‥」
目を伏せると笑ったエドに、フュリーは瞬きした。
「帰ってきたら怒るから、やりかけの事、終わらせとかないとな。」
「アルフォンス君は‥」
「ウィンリィが捜してる。俺も、ちゃっちゃと終わらせて、そんで俺が、迎えに行く。ウィンリィにだけ良いカッコはさせねぇ。」
でも、彼は‥
「そんな顔しなくても、大丈夫だから。」
「え、そ、そんな顔って‥」
正直だなぁ、出世できないよ。と、エドは笑った。
「‥、引き摺ってく。」
「え?」
「ふっ切ったりしねぇ。ずっと、けじめを付けるまで‥けじめが付いても、アルを見つけるまで、ずっと‥」
「エドワード君‥」
たくさんの言葉を言葉を飲み込んでフュリーは頷いた。
些細な事で躓くと言うけれど、些細な事じゃなかった。
人を助けたいと思った。
だけど強大な力の前に飲み込まれ、止める事が出来なかった。
もう誰も、死んでほしくないのに。
そう願って、ほんの瞬間手を離した隙に、大切なものが消えた。
『なのに彼は、探すよりアルフォンス君との約束を守る方を選ぶんだ。後悔を引き摺る覚悟で。』
フュリーは自分達の連絡先をエドに渡すと、ふと、先ほど耳に入った騒ぎを思い出した。
「そう言えば、偽エルリック兄弟が本屋で本を万引きしたそうだよ。」
「偽エルリック兄弟?‥、そっか、ありがと。フュリー曹長。あんたも気をつけて。」
慌しくかけていくエドに、
「君<達>もね。」
フュリーは祈った。

「懐かしい顔だな。相変わらずかよ。」
「違うっ、ちょっと、珍しい本が多いから、、、金が‥」
釈放されたトリンガム兄弟を、エドはホテルに招いた。
「金なら、肩代ってやってもいいぜ。」
「ホントか?」
「兄さん!」
咎めるフレッチャーに、心配するなとエドは笑うと、本題を切り出した。
「以前、赤い水の研究を親父さんがやっていたな。その情報がほしい。」
「<賢者の石>か?」
「いや、親父さんはゼノタイムを出てセントラルに居たんだろ?その時の研究‥」
「お前‥物騒な事に足を突っ込んでるな‥」
「物騒って分かるって事は、ビンゴかよ。」
「父さんの日記を見つけたんだ。それでここに来た。お前達に会えると思って‥、そういや、鎧の弟はどうした?」
「アルは‥」
言葉だけだとなんて空虚なんだろうと、エドは思う。
『アルがいて、はじめて名前の意味がある‥』
「アルを迎えに行くのに、コイツが必要なんだ。」
エドは手早く日記をめくりながら答えた。
「なんだ。三行半か〜?」
まぜっかえしたラッセルに、
「だといいな。取り返せるから」
エドは薄く笑った。

辿り着いた教会は、無人なのに痛んだ様子は無かった。
べつに付いて来なくていいというエドに、ラッセルとフレッチャーは頑として付き添った。
『あんな顔で笑われて、放って置けるかって。』
トリンガム兄弟の監視に苦笑いしながら、エドは祭壇へと進む。
「あら〜、随分やつれちゃってるねぇ、おチビさん。」
響いた声に、トリンガム兄弟は飛び上がった。
「ホムンクルス‥」
エドが睨むのに、中二階から祭壇へと降りたエンヴィーは鼻を鳴らした。
「おやおや、もう少し、人権を尊重した呼び方は出来ないものなのかねぇ。もう、俺達の正体、知ってるんだろ!?」
エドはラッセルに外へ出るよう目配せする。フレッチャーを抱き上げると、ラッセルはドアへと走り出した。
「兄さん!」
フレッチャーの非難にも、ラッセルは足を止めない。
「俺達がいても足手纏いにな‥る‥?」
「連れないなぁ。皆で賢者の石を造ってくれなきゃ、なぁアルフォンス?お前もそう思うだろ!?」
「アルフォンス‥だと?」
エンヴィーが動かした視線の先、エドが振り返るとラッセル達の退路を断つようにドアの前に佇むのは、記憶よりも少し大きくなった‥
「アル‥?」
「え?アルフォンスさん?」
「鎧から戻れたのか!?、良かったな。」
近寄ったフレッチャーとラッセルの足元が崩れ、ふたりは穴へと落ちた。
「ラッセル、フレッチャー」
駆け戻ったエドが見たのは床に開いた大きな穴から臨む地下都市。
「アル?」
「おいで、アルフォンス。」
エンヴィーの呼びかけに、アルはエドの脇を抜けていく。
「どういう事だ、そいつは‥」
「なんだ、弟も分らないわけ〜?だったら、俺が貰っても文句は無いよなぁ。」
近寄ったアルフォンスの頬を撫でながら、エンヴィーはエドを横目で流し見た。
「アルに‥アルに触るな!」
「お前の<アル>なわけ?」
「ぅ‥ぁ‥、っ‥」
「アルフォンス、見ろ。」
エンヴィーの指にあわせて、アルフォンスがエドを見る。
「アレは、俺の命を狙う敵だ。」
「兄さんの、敵‥」
「兄さんだと?」
目を見開くエドに、アルフォンスは向き直る。
「兄さんの、敵。」
「違っ、アルっ‥‥、アル?」
アルフォンスの手に、エンヴィーから銃が渡される。
「左足だよ、アルフォンス。」
笑うエンヴィーの声。躊躇い無く発射された銃弾は正確にエドの左足に当たり、撥ね返る。
「これはほんの挨拶代わり。オモテナシはこれからだよ、おチビちゃん。待ってるぜ。」
エンヴィーはアルフォンスの肩を抱くと、教会の床に開いた穴の中へ身を躍らせた。



2006/07/09 FLY,brother,fly

「兄さん!」
珍しく声を荒げて自分を呼び止めたアルに、エドは首を傾げた。
「どうした?」
「男の人と見れば押し倒すの、ヤメてよ!苦情の山だよ。」
「何を言う、弟よ。日々の鍛錬こそが大局の決め手となるのだ。」
「大局って何さ。」
「そんな事、恥ずかしくて言えるか!」
男を押し倒すより恥ずかしい事って何だろう
エドの迫力にそれ以上追求できず、アルは小首を傾げた。

「ついに来たか。」
「本当はあんたなんかを剥きたくは無いんだがな。他に練習相手がいなくなっちまった。」
まったくみんな、身包み剥がされたくなかったら努力しろってんだ
全く反省の色無く愚痴やくエドに、ロイは首を振った。
「お子ちゃまが何を言うやら‥」
「誰がお子ちゃまだ!」
「ふふん、貴様の考えなどみえみえだ。将来、アルが貴様より大きくなっても押し倒せるよう、他の人間で訓練しているんだろうが。」
「悪いか!」
「悪いわ!」
ロイはバンっと壁を叩いた。
「いいか、大人には見せられない姿ってのもあるのだ。それを、トコロ構わず暴くなど、子供以外の何でもない。」
「べつに暴いてない!剥いて縛るだけだ。」
それが問題だろう
陰で見守る士官達はハンカチを噛んだ。

「兄さんと大佐が決闘してる?」
またか、と溜息つきつつアルはエドを迎へに行った。
案の定、引き分けた現場は足の踏み場に困るほどで。その中心でふたり仲良く仰向けに倒れている。
「いつも済みません、大佐。」
「君が謝る事じゃないよ。君からはお礼を言われる方が嬉しいからな。」
さすがにロイの方が精神的に余裕があり、アルが声をかけると立ち上がってその肩を叩いた。
「ありがとう‥ございます?」
「うん。ってあげるからね。」
「はぁ‥」
守るって‥何からだろう?もう、守られてるみたいだけど‥
っるっせー、とエドが掠れ声で叫ぶのを背に負うと、アルは嬉々として立ち去るロイの後姿に、もう一度深く冑を下げた。

「気にしなくていいわよ、アル。」
「そうかな‥?」
苦しい時のウィンリィ頼み。アルはセントラルに来ていた幼馴染に、兄の奇行を相談した。
「それよりあんたは、エドと組み手をやってればいいの。」
「それは‥勿論するけど‥‥なんで?」
「組み手でエドの技を熟知してれば、この先元に戻っても安全という事。」
「???」
「まぁ、大佐にはわたしからも言っておくわ。余計なお世話だって。」
「え?それは酷いんじゃ‥」
「何言ってんの。役に立ってないんだから、いいのよ。はっきりしとかないと、自惚れてもかわいそうでしょ。」
「自惚れって‥え‥‥?」
アルを守るなんて宣言、300年は早いわよ
高笑いを残し部屋へと帰って行くウィンリィを見送って、アルは溜息をつくとテーブルに肘を付いた。
男を押し倒すの、訓練だったのか‥、どんな役に立つか僕では思いも付かないけど、僕も負けてられないな
其々が飛べるのはまだ先のようである
7/2分とは反対の、裏に載せるほどでは無い話。7月竜はエドアルですが、アルの方が背が高くったって全然気にならない。頑張れ、エドって言ってしまいますね(笑)



2006/05/06 謎探偵こなんザぐれ〜と 第4869話「謎の第五研究所を暴け」

「何があった?」
アームストロングから連絡を受けたロイは、病院のベッドで満身創痍のエドにため息をついた。
ロス少尉の言う事も聞かずに無茶をするからだと、ロイはエドの額にでこピンを放つ。
「あんな美人のお目付け役で何が不満だ。」
にっこりロイに微笑まれ、戸口で待機していたロスは口元を、ブロッシュは目元を引き攣らせた。
「‥第五研究所で黒ずくめの奴らに襲われた。」
「!」
エドの言葉にロイが振り向く。
「あいつら、何か隠してやがる‥」
「aptx48○9ですか?」
「それでエドワード君は身長が‥」
「そっか。エドワードさんは小学生だったんですね。」
「少年錬金術師!なるほど。」
納得するロスとブロッシュは、殺気を感じてベッドを振り返った。
「ちょっと待て。何の話をしている‥」
室内を暗雲が取り巻く中、アルは独りこのまま一緒にいても戻れないかも‥と、家出を決意したのだった。
コードネームはあるし、黒いし‥主人公は背が低‥済みませんスミマセンすみま‥‥



2006/05/05 BLOOD- 第恋のダイヤル6700話「鬼○丸の影響?」

「っ、なにがイれーヌを助けてだ!その前に弟に謝れっ。」
ロイ部隊が強行した‥もとい、申請して許可を得て設置されたテレビ。
「兄さん‥テレビドラマに怒っても‥」
「だってよ、アル。こいつ、サやを助ける為って嫌がる弟を危険な旅に連れ出しておきながら、弟守れねぇし、挙句の果て、サやの命を狙うグループの女の子を助けてくれなんて、行き当たりばったりで、ムシの良い‥」
サやって誰だろう アルが首を傾げる横から
「まるでお前のようだな、エド。」
ひょっこり画面を覗くと、ロイは言い放った。
「弟の制止を振り切り、母親の錬成に失敗した挙句、弟を鎧にしてしまった‥同族嫌悪か?」
「フザケルな!それじゃ、なにか?俺はアルと同じだからって、スライサー兄弟を助けるようホムンクルスに頼まなきゃいけないのか?」
「ピッタリ当てはまってるではないか。」
「はまってねーっ。そんな事言うなら、ラストとデートしてたハボック少尉はサやに恋して使命を逸脱しているソロもンじゃねーか。」
 オレ
「他人の古傷を‥っ」
「それに、この意味無く理事長で、意味無く青いバラを持ちたがるカーるなんか、あんたそのものじゃねーの?大佐。」
「なにか、それじゃ、この世間知らずで、すぐへこたれるどうにもならないシふのリーダーはファルマンて事か!?」
「大佐、貴方がわたしをどのように見てたかわかりました‥」
「どうでもいいけど、テレビドラマひとつで盛り上がれる軍部って、問題なんじゃ?」
アルの呟きにニッコリ笑うと、ホークアイはライフルを室内で乱射した。

学生服に刀という某漫画が設定時に影響してるんじゃないのかな‥とか(笑)。どうでもいいけど、兄ちゃんズ頑張れよ、でも目立ち過ぎないでねん(笑)

「アイツさ、この先の事、分かってねぇ‥」
「まだ言ってるの!?」
ホテルに戻ってベッドにもぐり込んだ後も、エドは管を巻く。
「弟は、吸血鬼になっちまった。」
「助けたい一心で、サやって子に頼んだんでしょ!?」
「妹って言いながら、血をやってくれだなんて、、、血の繋がった兄弟は弟一人だって」
「僕達と同じだね。母さんを戻してって錬金術に頼んだんだから。お互いがいれば、一人ぼっちじゃなかったのにね。」
「ぅ‥そりゃ、、、でも違うんだ!コイツは‥、コイツはなんにも分ってない。吸血鬼になった弟は死なない。歳もとらない。」
「‥‥‥」
「自分が死んだ後、どうなるんだ?弟は一人で永遠を生きてく。」
「‥‥‥」
「死すらない悠久の寂しさに、血を求めて彷徨う悪鬼にでもなったらどうするんだ?」
「大丈夫だよ。お兄さんが大切に思ってくれてた事を知ってるから。」
「いつまでも子供の姿だからひとところに落ち着けない。友達が出来ても、別れなきゃいけない。好きな子も作れない‥」
「大丈夫だよ。サやがいるでしょ。はジも。」
「想像すら届かない、果て‥無‥時間と孤独‥連れ‥‥‥」
「兄さん?眠ったの?」
エドの寝息を確認すると、アルはシーツをかけ直した。
「もし、置き去りにする事を可哀相に思うなら、兄さんは僕を連れて行ってね。」
小さく小さく、願いは呟かれた。



2006/05/01 三叉神経痛

耳のすぐ下。
「風邪で腫れたりするリンパ?」
「ううん、リンパ節じゃなくて。でもそのあたり」
アルは耳元を指で押さえた。
「痛いのか?」
「う‥ん。歯が痛むみたいにズキッとする。」
珍しく困ったようなアルの顔。
「疼くの?」
「ううん。ずっとじゃなくて‥ときどき、思い出したみたいにズキッと。動かした時とか‥でも、そうじゃ無い時もツキンとするから‥やっぱりよく分らないや」
苦笑する様は言葉で言うよりもかなりの痛みがあると、エドとウィンリィは眉を寄せる。
「医者はナンだって?」
「三叉神経痛って‥」
「耳にか?」
ウィンリィは納得したように頷くと、腕を組んだ。
「ストレスね!」
「ストレス?」
驚くアルにウィンリィはにやっと笑うと、指を立てた。
「そう!エドの‥」
「ひゃっ」
アルの悲鳴が上がる。
「兄さ‥なにす‥る‥」
「動くな!痛いの、治すから」
「耳に舌突っ込んで、なにほざいとんじゃーっ」
ウィンリィの右アッパー炸裂。
「舐めれば治るって言うだろうがっ」
顎を押さえながらもエドも退かない。
「治るかーっ医者舐めとんのかー、ワレー!」
左ボディーブローから、右フックの連打。
しかしエドを打ちのめしたのは、ウィンリィの後ろに隠れているアルで。
「アル〜‥ 」
「兄さん、僕‥その怪我舐めないから。」
ウィンリィにボロボロにされたエドを冷たくアルは見下ろした。
「アル〜ッ」
「さ、ストレスは放っておいて。お茶しましょ。」
去っていくアルを見送るエドの側へと、デンがやってくる。
「デン‥」
しかしデンも鼻を鳴らすと、舐めもせず2人のあとをついていった。
裏バージョンが出来たら笑ってやって下さい(笑)



2006/02/21 if さん (アニメ、映画基本)

詭計
「そんなの錬金術じゃねぇ!ただのトリックだ。お前ら悪巧みなど頭のフケから爪の垢まで、全部お見通しだ!」
巨大な建物の天井と床には錬成陣が描かれ、天井を囲むように、エンヴィーが竜の姿でとぐろを巻いている。円形の床を見下ろすようにある中二階に現れたエッカルトとそれにひっそり従うノーアを指差し、エドは啖呵を切った。
「あたしのは透視能力よ、錬金術じゃないわ。前にも言ったじゃない。この貧長!」
思わず前に出てくると、手すりから身を乗り出してノーアは叫んだ。
「貧長〜?そ〜ゆ〜ならお前はデカ尻じゃね〜か。」
「デカ尻ですってぇ!?それに合わせて胸だって大きいでしょ。ナイスバディと言って欲しいわね。」
「低次元の争いは止めなさい。我々は今、思想の為にここに集まっているのでしょう?ノーアは故郷を見つける為。我々はシャンバラを手に入れる為。ここで日和見しているエドワードに頼らずとも貴方の力で道を開いて見せなさい。」
ノーアが口籠ると、エッカルトは切りが付いたとばかりにノーアから視線を戻した。
「では、我々をペテン師と呼ぶお前自身はどうなのか、エドワード・エルリック。ホーエンハイムの息子よ。帰りたいと言いながらもその方法を見つけられず、我々が提供する方法は受け付けない。」
エッカルトは哀れむようにエドを見た。
「我々は錬金術を示そうとしているのではない。我々が欲するのは大いなる力だ。お前はトゥーレ協会の事を誤解しているようだ。今なら入会金半額にしてやるからここで邪魔などせずに手続きを済ませ、勉強してから出直してくるのですね。」
「ふざけるな!誰が日和見しているっ。俺は、アルの元へ帰ってみせる。詭計などではなく、だ。それにトゥーレ協会なんか入会金無しでも入ってやるもんか!」
トゥーレ協会の冷たい視線のシャワーに怯む事無く指をさし続ける息子と、それを後ろでわくわくしながら見守るロケット開発者達。
「なんだ、あいつ‥向こうに戻りたいわけ?」
エンヴィーの問いに、ホーエンハイムは頷いた。
「なんで?こっちにもアルフォンスいるじゃん?」
「それをあいつに語らせると長いぞ?」
「‥‥‥」
「‥‥‥ 」
ふたりはふぅ〜とため息をついた。
「にしてもあいつ、変わったよなぁ‥」
「あぁ‥ここのアルフォンスはロマンティストだったからなぁ‥」
噂のアルフォンス・ハイデリヒは、ともすれば
「頑張れ、エドワードさん!」
と叫んで飛び出しそうになるのを、仲間に物陰へと引き戻されている。
「‥向こうのアルはリアリストだったな。あいつ、キスひとつさせてもらえなかったらしいぜ。」
「弟にキスすること自体問題だが、今はお前が親しげにアルと呼ぶ理由から訊こうか!?」
噛み付いているエンヴィーの口をよっこらせと押し上げると、ホーエンハイムは手を組んでエンヴィーへと向き直ったのだった。



2006/02/20 if に (アニメ、映画基本)

波乗り
「これだ!」
「わーっ、なんだエドワード、突然‥」
賢者の石精製に失敗し、生きた血液を全て病院に寄付したエルリック父子は、貧乏にもシングルルームを2人で使う生活をしていた。
「狭い部屋なんだから、大声出さなくても響く‥」
「約束の地へ行ける。」
「約束の地?‥って、これマンガじゃないのか!?」
ホーエンハイムはベッドを占領するエドの手から少年Aを取り上げた。それを気にも留めず、エドは空いた両手を握り締める。
「待ってろよ、アル!」
「約束の地って、門の向こう側ではないと思うぞ!?このストーリーから察するに、巨大壁の向こうは地球なのでは‥」
「要は空間を越えるって事だろ!?だったら、潜る途中で方向を変えられるかもしれないじゃないか。」
「お前、、、、バカがつくほど前向きだな。とんでもないところに行き着くかも知れんぞ?」
ホーエンハイムの言葉に、以外にもエドは下を向いた。
「アルがいないならどこでも同じだ‥可能性があるなら、俺はそれに賭ける。」
「‥それもいいかもしれんが‥それで片割れをどうするつもりなんだね?」
「片割れ?俺の相棒はアルしかいない!」
片割れだの相棒だのの言葉には敏感に反応し、噛み付いてくるエドに、ホーエンハイムはため息をついた。
「そのアルに逢いに行くんだろう‥?対がいないのに、どうやるつもりだ?
エドは起き上がると、ホーエンハイムを見、雑誌に目を落した。左右式複座に座り、手を握り合う少年少女。
「気付いてなかったのか‥?こんなに大きく描いてあるのに」
「そうだ。相方じゃなく、必要なのは異種生命体とのメッセンジャーだろ!?それならエンヴィーが居るじゃないか。」
「‥だったらお前はエンヴィーと手を取り合ってグレートウォールとやらを突破するのか?」
「何でそうなる」
「ほら、この小型発動機は2人の共鳴で波乗りロボに力を与える‥」
「‥‥‥」
「これ、、、、お前とエンヴィー?」
ホーエンハイムの指がなぞる絵を食い入るように見つめた後
「‥‥次を探してみよ」
エドは別の雑誌を手に取った。



2006/02/19 if いち VS構成 (アニメ、映画基本)

純血種++ (血統+は主人公の血が翼手を倒す鍵の1つですが、最終吸血鬼の方は、一気に大量の血を流すと翼手は倒せる設定でした;笑)
空気は冷えて重く、足元に蟠っている。なのに足音はどんなに潜めてみても、冷たく床に天井に壁に固く響いた 。
「エドワード‥」
「黙ってろ。」
「しかし、、、、冷たいぞ、これ‥」
血液の入ったパックに、ホーエンハイムは目を落した。
「だから温めろって言ってんだろ。それとも生血じゃなきゃ、いけないのか?」
賢者の石を精製するには大量の血が必要だった。
そしてこちらの世界では錬金術の代わりに科学・医療が発展している。特にここドイツでは。
この時代の血液は商品のひとつ。血を売ってでもお金が欲しい人達から、健康を損なわない量の血液を買い取る。代価としては小額で設定。高い値をつければ健康を省みず自ら血を採ってきたり、犯罪に繋がるからだ。
そうして集めた血液。鮮度は良好。
「大量の血(翼手を倒すには一度に沢山の血を流させる事である)があれば、賢者の石を練成できるかもしれない。」
「賢者の石の材料は生きた人間の‥」
「生きた人間から貰った血だ。」
「エドワード、お前だって分ってるだろう。材料は生きた人間に命だ。」
「でも、ニコラス・フラメルは生成に成功した。彼が大量殺戮を行ったという記録はない。」
「‥‥‥ちょっとまて、エドワード。ニコラス・フラメルだって?彼が錬成したという事実は‥」
「ここに書いてある。」
「ハリー・ポ‥、エドワード、これは童話だ。」

                             vs
血統+ (さや&はじ)
空気は冷えて重く、体温をどんどん奪っていく。ロイ・マスタングが務める北の兵舎にも冬の気配が忍び寄っていた。
「僕は以前の事を覚えていません。何をしたのかも。何がいけなかったのかも‥」
突然の来訪者に、いや者の変わりように。一瞬驚いたものの、ロイは仮面のような面持ちのまま、その子供の話に耳を傾けた。
「でも、僕は!
‥僕は兄さんを探したい。逢いたいんです!その先に、同じ過ちが待っていようとも」
扉の前から動こうともせず、ロイから兄の情報を得ようとしていた少年は、かつての兄のごとく、強い決意を瞳に宿していた。
「誰も君に語ることは持っていない。真実は君が見つけるよりないからだ。君達の成した結果を過ちと呼ぶのなら、修正もせず静観するしかなかった私も、その過ちとやらの最後を見届けよう。なぜなら
君達のやり遂げたかった事は、まだ終わっていないからだ。」
ロイの言葉に、アルは表情を崩した。
「終わってない‥?」
「終わっていないのだろう!?」
「!、はいっ。」
冬を退けるかのように、明るい笑顔が広がる。ロイは、呪縛を解く光を得たかのように、眩しげに瞳を眇めた。そして、手早く兵舎を片付けると、ロイはリュック1つを肩に担ぐ。
「マスタングさん?」
「私は君に付いていく、結末を見届けに。」
「あの‥・?でも‥‥」
「どんな終わりだっていい。終わりなんて無くてもいいさ。君は躊躇わず進めばいい。私がずっと傍にいる。君に従う。」
「‥‥‥、じゃ、間違いそうだったら直して下さいね。」
「そうだな、実力行使で、な。」
にっこり笑ったアルに、ロイはやっと大人の表情で笑った。
「あの、、出発しちゃっていいんですか?誰かに連絡とか‥」
「怒られる事を先に連絡するバカはいない。」
「、、、、、では、早速山を降りましょう。ここは寒くて‥」
強情に火の側に寄らず戸口に立っていたアルは、手を擦り合わせて舌を出した。
そのアルを覆うように、マントが被せられる。
「マスタングさん?これじゃ、マスタングさんが寒いし歩きにくいんじゃ‥」
自分のコートの中にアルを招き入れたロイに、アルは戸惑った。
「君が私にしがみ付いていれば暖かいし、息が合えば歩くのにも問題ないさ。」
ロイのコートの中は外よりマシというだけで、決して暖かいとは言えなかったが、抱きついていれば体温が染みてくる。
「分りました。息を合わせて‥」
笑ったアルの口にロイの口唇が降りてくる。
「息が合っただろ!?」

arcana 5

7月竜