7月竜

僕らが生きている世界は、いろんなしがらみに縛られている。
それは、多種多様の人を統べる国家のしきたりにあったり、他人と自分を守るルールにあったり、異形を防ぐ為のモラルにあったり、孤独を払拭する伝達マナーにもある。
例えば、自分の名前が気に入らなくても、勝手に変える事はできない。
軍の管理に支障をきたすし、気付かず血族結婚で子孫が遺伝疾患を発症すかもしれない。理由によっては後ろ指をさされる事もある。

あの人は僕を大切にしてくれる。
本当はもっと、もっと輝いている存在なのに、自分の才能を僕の為に削っている。
そして、信じられない事に。
僕を好きだと言う。
僕を愛しているのだと…。
兄弟で 同性で 今は身体すら持たない僕を、躊躇いも無く。

だけど僕達を取り巻く世界は、それを許してはくれない。

ねぇ、兄さん。
僕だって兄さんが好きだよ。
兄さんが僕を忘れてしまったら、僕には存在価値など無い。
僕にとって兄さんは全てなんだ。
だけど
どうしてそんな事言える?
どうやってこの忌わしくて愛しい感情を叫べばいい?
兄さんは何も恐れず、僕への想いを口にしてくれるけど
それができるのは、兄さんが世界の中心にいて然るべき存在だからだよ。
世界を揺るがす力を持っているからだ。
だけど未だ、人は兄さんの才能を目の当たりにしていない。あるいは、兄さんの能力だけを賞賛し、その努力を見ようともしない。
そんな人達が兄さんの事をとやかく言うのは嫌なんだ。
いつか分るとしても、明日敬愛されるとしても、今、この一瞬でも兄さんを無視されるのはどうしても嫌なんだ!誰からも愛されてて欲しいんだ!

卑怯者で僕はいい。臆病者で構わない。

いつか死んで、柵に縛られたこの入れ物(身体)が消えたら
僕はついて行こう。兄さんの示す道を。
僕は行こう。兄さんが示してくれた道を。
兄さんを抱締めて、愛してると囁こう。
兄さんを抱締めて、尽きない想いを叫ぼう。
この世界の全てへ

僕は貴方を愛してます
愚弟は兄さんを愛してます
アルフォンスはエドワードを愛して、いるのです

これでもValentine第2段(汗)。主旨はエド救済のつもりだったり(滝汗) 2004/01/15