7月竜
「七つの子って、7歳だと思う?七羽だと思う?」
うちの弟は時々すっとんきょな事を言う。
からすなぜなくの からすはやまに かわいいななつのこがあるからよ
「…今度は誰だ」
額をおさえつつ問えば
「うん、東洋の童謡だって」
誤魔化してるのか、ずれてるのか分らない返事。
かわい かわいとからすはなくの かわい かわいとなくんだよ
『ブレダ少尉か』
眉間にしわが寄る俺を介せず能天気な声が続く。
「カラスってさ、ホラー映画とかで忌み嫌われてるよね。ゴミを漁ったり小動物とか襲ったりするし、頭が良くて結構強いし、それとも黒いからかな」
心成し淋しそうに紡がれたそれは、問いかけか、あるいは…確認か。
「声が恐いからじゃねぇーの?」
見た目には一般的に可愛いと呼べない烏。それは、この国の中の俺達。
鎧のアル、鋼の俺。人か、それとも…?
国家錬金術師、軍の狗。正義の名の元に?、破壊の使者として…?
禁忌の罪。過去の、そしてこれからの…。
「だけど、国が違うとこんな優しい歌もあるんだね」
やまのふるすへいってみてごらん かわいいめをしたいいこだよ
弟がにっこり笑った気がした。鎧に表情が有るはず無いのだけど。
「国が違えば、僕達のした事も罪じゃないんだろうか‥」
しばらくして、ひっそりと呟かれた言葉。
窓の外、枝に留って羽を休める小鳥に向かい小さく囁かれた思いは、俺に届いていないときっと、アルは思っているだろう。
俺にもアルにも。この世界の誰にでも分け隔てなく
囀り、大空を飛び交う自由の象徴に、アルは平和と友愛を祈り
俺は黒い闇に、唯ひとりの幸せと独占を願う。
耳だけとか、平仮名で書かれると、分らない歌詞ってありませんか?(7月竜だけか;汗)。鳥のお題を頂いたとき最初に出来たものですが、後で新OPを見て笑いました(というより笑うしか…涙)。 2004/02/08