例えば 肉体を構築する
原子から分子へ 分子から物体へ


「失くした体の再生は無理だが、見目形はまったく同じに新生する事ができる。
遺伝子情報を元に受精卵を創って、それの成長を促進すれば‥」
                                                   「兄さん、シチューできたよ」
なんて言ったっけ‥東洋の昔話‥‥‥そうそう。
                                              「注いでもいい?」
「玉手箱が必要かな。」
                                         「兄さん?」
あ でも
アルの元が残っていない
家は焼いてしまった 髪の毛一本も無いんだ
アルは母さん似だから 俺とは遺伝子の配列が違うわけで
もちろん それだけじゃないけど

肉体から肉体へ魂を移す

鎧の魂を 別の器へ

魂の劣化は免れないが 別に400年生きる必要など無い

                       「兄さん!?」
俺と 一緒の時間を
                「兄さん。」
「だけど、それにはまず先立つ器が要るんだよな〜‥くそっ」
兄さん!
「え?」
「え、じゃないよ。さっきから呼んでたのに。シチューのリクエストしたの、兄さんだろ!?もう冷めちゃうよ。」
「あ?あ‥あ、ごめんごめん。もうそんな時間か‥」
「‥‥‥、何考えてたの?」

お前の事だよ

「ないしょ。」
「‥‥‥ま、いいけど。でも‥‥」
「アル?」
シチューを温め直す為に、アルは俺の皿をひいた。
「体、壊さない程度にしてね。」
鍋に戻したシチューをかき回す鎧の背中は、ずっと小さく感じる。

お前が元に戻れば 俺はお前の事を考えなくなるんだろうか

「それは無理だ。」
「何か言った?」
火を止めてアルが振り返る。
「‥‥淋しいかなって‥」
「兄さん?」

お前を想わない日々なんて淋しい

「なに、笑ってるの?」

笑う俺を見つめるお前がいる

「幸せなんだ。」
「‥‥‥、僕もだよ。」

世迷言

7月竜

もちろん〆はキスです。鎧相手ですが、らぶらぶのハズ(汗)です。
ちなみに副題は<cute>です(笑)。2005/05/24