危険な あにき
アルは鎧だ。俺が‥、アルを鎧にしてしまった
鎧になったアルには、痛みも、疲れも、、、眠りもない。哀しみがあるだけ
【兄さんはすぐ自分の事忘れちゃうから、、、無理しないで。お願いだよ。】
アルに合わせようとした俺を、アルは諭した。
【焦らなくても大丈夫だよ。僕達なら、きっといつか‥】
罪深い兄を、優しい弟は許す。罪から解放する言葉を紡ぐ。
【無茶しないで、兄さん!】
兄さんは生身なんだよ
兄さんは生きてるんだ。それは死んでしまう可能性もあるって事なんだよ
怪我だってするし、病気にだってなるんだ
ヒトの歩みでいい。それが間に合わなくても、兄さんの、兄さんらしい人生を見届けられたら、 、僕は十分”生きた”事になるよ
俺が怪我で床に臥せっている時に吐き出された想い。
【仕方ないよね。無茶が兄さんのトレンドだから、、、、だったら僕が守る。兄さんは僕が守るからね!分った!?】
自分は死なないから という言葉は言わず、断言する愛しい弟。
【僕?僕は大丈夫でしょ!?兄さんが直してくれるから】
冗談で締めくくった弟は、、、アルは‥‥‥
「あれ?」
ちょっと待てよ。
確かに、血印さえ傷つけなければどんな状態からでも、治してみせる。強奪犯罪上等!どんな手段をとってもアルは必ず治す。だったら‥
{兄さん、危ない!}
アルは敵の攻撃からエドを庇った。
{兄さん、大丈夫?}
敵の攻撃を背に受け、その胸にエドを抱きながら。アルはエドにささやいた。
{兄さんは僕が守る!}
{アル‥}
銃弾飛び交う中、ふたりは抱き合ったままお互いの気持ちを確かめあった。
{治ったぞ、アル。}
{ありがとう、兄さん。大好きだよ、、}
銃痕を治したエドにアルは腕を伸ばし
「‥‥兄さん?」
ちゅう〜
「兄さん!」
「あ?、、、れ?」
「あれじゃないでしょ。トランクにキスして、、何考えてたの?鼻血でてるよ!?」
差し出されたハンカチで俺は鼻を押さえる。鼻を押さえるのに手の塞がった俺に代わって、アルはトランクを手に持って先を歩き出した。
『美味しい展開だけど、、、、、アルが怪我すンのはやっぱ駄目だな。その前に俺が切れるわ』
「弟に庇ってもらうなんて、恥ずかしくないのかね。」
俺のフードを引っ張りやがって。首が絞まるってぇの。まぁ、どっから出た〜 の大佐にはもう慣れたけどな。どうせホークアイ中尉の目を盗んでサボっていたに違いない。あぁ、そんな事よりアルが行っちまう〜
「ア、、、」
待てよ。わざとアルを先に行かせる時は決まってろくでもない話
振り返って睨んでも、大佐は眉を上げただけだった。
「ヒトの考えを読むなよ。エスパーか、あんた」
「アルは君に似ずまったくいい子だ、君のプライベートなひとりごとには耳を塞ぐようにしている。」
「え、、、俺、しゃべってた?、、、、って、おい!俺らに盗聴器付けるの止めんかっ!」」
「何を言う!お前のような危ないヤカラを野放しになどできんだろう!いつアルを襲うかと思うと」
ワナワナあんたが手を震わすかよ!ほっといてくれ。アルは俺ンだからいーんだ!
「まぁ妄想程度だからな、大目に見ているのだが、、、それに君の妄想をアルもウィンリィに向けてとでも思っているから聞かないようにしているのだろうしな、気付かせるのも」
「気付くと俺とアルがラブラブになるからか!?」
勝ち誇って言った俺に
「いや。お前の箍が外れるといけないから。」
キッパリ言いやがってムカツく〜
「話を戻すが、愛するものは庇いたいもんだろう!?」
「ハン。あんた、ホントは恋なんてした事ねーんじゃねーの!?アルを愛するってのはなぁ」
「”アル”を?たとえなら”ヒト”を愛するだろう!?言葉は正しく‥」
「他の奴をなんか知らん。アル以外に恋を語るなんてねぇからな。」
お、怯んだ。へへ、俺の想いを思い知れ!
「俺はさ、アルが望めば素っ裸でだって歩けるぜ。」
「貴様、猥褻物陳列危惧罪で逮捕するぞ。」
アルがそんな事を望むわけないから見逃すがな なんてぬかしやがる。
「俺がアルを護るのは外聞からじゃない。アルが俺を守りたいって言うなら俺は守れらるし、アルが俺を抱きたいって言うなら喜んで足開いてやるぜ。」
ゴン
「って〜、殴ンなよ!あんたがこの話フッたんだろ!?」
「貴様がガキだからだ!」
「ガキで結構!それでストレートに愛を語れるならな。」
「‥‥‥」
「そりゃ、、、できるなら俺がアルを守りたいしアルを愛したいけど‥」
「無理だろうな。アルだから」
「そう!アルだからなぁ、、、させてくれないだろうなぁ」
【兄さんは僕を護りたいって言ってくれるけど、僕だって兄さんを護りたいんだよ!】
「‥‥‥」
「‥‥‥」
「‥‥、ま、生身になれば有無を言わさず守っちゃうけど、、、、」
{アルっ}
息つかぬ攻撃の中、エドはアルを抱き締めるとその背に庇いながら敵を撃破していく。
{兄さん、僕の事はいいからっ。こんな体勢じゃ兄さんが}
余裕なんてないのに、それでもエドは振り向いてアルの頬を親指で拭った。
{泣くな、アル。俺は大ジョ夫だから。お前がいれば、俺は不死身なんだぜ!?}
{兄さ‥}
{こんな傷は、あとでお前が舐めてくれりゃすぐに治るさ。}
燃える夕日の中全ての敵を倒したあと、アルはエドに抱きついた。
{兄さん!}
その背に手を回し、しばし抱擁しあうと、エドは夕日を受けて淡い橙に染まる滑らか頬に手を添えた。
{兄さん。貴方を愛してる}
「それはありえんな」
断言よりも呆れたような言葉で俺の夢に水差しやがった
「これからキスだったのに〜。てんめぇっ、ヒトの至福の時間を、、、」
「懸想が至福なのか、底が浅いな、エド」
「それは底深く”襲え”って上官の命令ととっていいのかな?」
「命令で襲うのかね?」
「ねぇ、アル。止めなくていいの?アレ」
「ウィンリィは止めた方がいいと思う?」
口の減らないもの同士の応酬。
エドがついて来ないことに気付いたアルは待ち合わせ場所で先に来ていたウィンリィに説明すると引き返し、そこでロイとエドのドツキ漫才をウィンリィとともに見ることになった。
「わたしの買い物に付き合ってくれる方が良いと思う。アルならエドと違って文句言わないもの。」
「わかった。じゃ、行こう。」
「やった〜、あ、ちょっと待ってて。電話してくるから。」
「電話?」
「あ、もしもしリザさん?ウィンリィです。ええ、実はポイントuso800で、、ええ、お願いします。、、、いえいえ、こちらもエドの足止めお願いします。、、、はい。、、はい、じゃ、また。」
公衆電話から出てきたウィンリィにアルは特に聞かない。ロイの言うとおり、アルはプライバシーは尊重するのだ。
ここアメストリスは国中に広く闇の情報網が発達している、危険な国家なのである。
2005/10/27
危険な 兄貴
兄さんのまわりには黄色い声援が集まる。
それは
錬金術を学ぶ者として、兄さんの才能は秀でている。
ヒトじゃない僕だけど、兄さんの優しさ、強さ、大きさは尊敬してる。
男の僕から見ても兄さんは可愛い。
弟の贔屓目かもしれないけど、兄さんはカッコイイ。
そんな抑えきれないオーラが滲み出てるから
だから僕は努力しなくちゃ。
同じ姓を名乗るには。兄さんの隣にいるには。
僕のまわりには不注意で起こしてしまう破壊音や、しり込みする作り笑いが集まる。
そんな僕に、兄さんはカワイイを連発してくれるけど。
駄目だよ、兄さん。ホントの事言ってくれなきゃ。いつまでたっても僕は進歩のないお荷物のままだよ!?
兄さんの魅力は時に危険をも惹き付けるから
『心配なんだよなぁ』
物事を良く知ってる割りに、態度と裏腹に純粋だから。
でも。警戒なんてほんとは悲しい事だ。兄さんにはして欲しくない。今のままで‥
『頑張ろう!』
僕、頑張るよ。母さん見てて、僕、兄さんを護るから。ウィンリィ、待ってて。兄さんを無事につれて帰るから。
「大将のまわりに集まる黄色い声援って、、、甲高い悲鳴や野太い怒声のこってすか?」
ハボックが指差すのを、ロイはおさえた。
「あれだけのブーイングを、声援と受け取ってしまうところが兄には盲目というか、アルの純粋なところだ。」
あんたもな
目が尋常じゃないと胸のうちで呟きつつブレダは鼻をかいた。
「誰か教えてやった方がいいんじゃねぇですかい?」
「それは野暮というものだ、ブレダ少尉。アルの可愛い努力を無碍にするものじゃない。」
「エドワード君を可愛いって言ってますね。奇特な感情だ。」
ファルマンの言葉にロイはピシッと凍りついた。
「え?大佐?大佐〜!??」
呼び止める声を無視し、スタスタとアルめがけて歩き出したロイの背後に照明弾が打ち込まれる。
「ギャー、大佐!?」
駆け寄るフュリーがロイの生存を確認すると、残りの3人は恐る恐る振り向いた。
「なにか問題でも?」
「問題っていうか、なんというか、、、」
「常々大佐からエルリック兄弟の観察を妨害するものは排除すべしと命令を受けています。」
そういうとホークアイは地に伏すロイの側に立った。
「そうですよね!?大佐。」
「そ、、その通りだね、中尉。ありがと、、、グフッ」
吐いた血で”観察万歳”と書き残すとロイは力尽きた。
2005/10/27
危険な アニキ (ドラマ設定ならアニメバージョンだよね;笑)
「いつまで僕を苦しめれば気が済むんだ、、、、っ」
「アル‥?」
「昔からそうだった。今だって!ずっと、ずっとずっとずっとっ。天才だからって皆からちやほやされて、いい顔する、、、あんたは、僕がいっぱい努力して、努力して努力してっ、、、重ねてきたものを横からすっと持っていくんだ、、、」
「あんたって‥ 」
「あんたで十分だろ!?触るな!あんたなんかと、これ以上一緒に居たくない。僕の前から消えてよ!」
「アル‥‥」
「‥‥‥、消えてって言ってるだろ!?早くどっか行っちまえっ」
「‥分った。でもその前に、本物を返せよ、エンヴィー。」
「それ、どういう意味?兄さんは、本当の事を言う僕は、アルフォンスと認められないの!?」
「アルは本当の事を言わないさ。言ってくれればいいのに‥」
「‥‥‥、辛気臭さ。やってらんねーよ。」
「だから。アルのカッコしてるなら、道端でう○こ座りするなよ#」
アルからエドへと姿を移して立ち上がると、エンヴィーは不敵に笑った。
「ほんじゃ、今度はアルちゃんとお話すっかな」
「エンヴィー」
「、、、なんだよ、、、」
低くこもった声に、エンヴィーはエドを伺った。
「からかうのは俺だけにしとけ。アルは当然だが、他の連中にもホラ吹き込んで、それでアルが傷付いたりしたら、許さない。絶対に!」
デカイ態度でも声高に言うでもなにのに、エドの言葉はエンヴィーの身体を軋ませて染み渡る。
捨て科白ひとつ無くエンヴィーは姿を消し、物陰からアルが出てくる。
「兄さん!」
「アルッ」
アルが先を言うより早く、エドはアルを力いっぱい抱き締める。
「兄さんっ、痛い」
「あ、、あ、ごめん。」
力は緩んでも、抱き締めたままのエドに、アルは頭を預けた。
「ごめん」
「なにが?アレがアルじゃない事なんて最初から分ってたぜ?」
『否定しなかったのは、アルと思ってたからじゃなく、、、アルの言葉を聴いた気がしたから』
「ごめん、エンヴィーに捕まって」
「ま、アイツは狡賢いからな。でも気をつけるんだぞ。お前は狙われてんだから。」
『それは無いと思うけど』
やっとアルは笑い、顔を上げた。
「ごめん。兄さんを傷つけて」
「アレはエンヴィーが言ったんだろ!?それともお前の本音なわけ?」
首を振ると、今度はアルがエドをぎゅっと抱き締めた。
「ごめん。言葉にしなくて」
「ア、ル、、、」
エドはやっと、アルが何を謝りたいのか理解した。
「ごめん。ちゃんと言うから。僕、兄さんが大好き。」
「アル、、、っ」
「大好き!」
痺れる衝動。
『これが幸せって言うものか』
エドは湧き上がる感覚を噛み締めると、抱きつく体を放し、エドはアルの顔を見て
「!」
一気に落下した。
「アルフォンスさん?」
「どうしたの?兄さん。あ、僕が好きだと、、ダメ?」
『いえ、その好きじゃなくて、、、、ああ、道のりは遠い‥』
エドはガクッと項垂れると泣く泣く首を振った。
200/10/28
危険な あんちくしょう
アルは自慢の弟だ。
「まず性格がいいだろ。それから頭もいいし、それを使える機転もある。錬金術の才能だってばっちりだし」
なにより可愛い。
顔も勿論だが、アルの存在自体がさ
真面目だし優しいのに‥
「なぜか目立つのは俺なんだよな」
いやべつに、目立ってほしくはない。アルの魅力が目立ったら何されるか、誰に奪われるか、あ〜もう、こう考えるだけで指がわなわなとしてくる〜
いかん!平常心、平常心。
えっと‥そうそう。アルだよ、アル!
俺の知名度をアルは妬むどころか、歓迎する。
【やっぱり兄さんはすごいね。】
そしてその分、一歩も二歩も、俺から後ろに下がってしまう。
「あ〜、どうすれば、、、、」
「どうしたの?兄さん」
頭を掻き毟っていたらしい俺を、アルは覗き込む。
だから!そーゆーのが、可愛過ぎなんだって
だから、ずっと隣にいて欲しいんだって!
「兄さん?」
ひ〜、頑張れ、俺の理性!
「に、兄さん?ちょっと‥僕の鎧に頭打ちつけて、何やって、、、兄さん?兄さん!?」
「ほっときたまえ。」
「大佐?あ、こんにちは、、じゃなくて兄さんが」
「気絶するしか方法がなかったんだろう。」
「なんの?」
「煩悩から君を守る方法。」
「?」
「ま、確かに最初は鎧に惑わされるが、少しでも話せばその可愛らしさは手に取れる。お前が思っている以上にな、エド。せいぜい気を付けることだ」
「あの、、、大佐?」
「君も、もっと自覚しなさい。でないと、私が教えてしまうよ!?」
「あ、はい、、、」
「!。教えてもいいのかな?」
「それは今度になりそうですね、、、後ろ」
「後ろ?」
「ヒトの息子に手を出すなーっ」
「ちょっと、わたしのアルに触んないでよね!エロ軍人っ」
「アルはトリシャから預かった大切な子だよ。近寄らないどくれ。」
「わたしの弟子に手を出そうとは、いい度胸じゃないか。」
「‥‥‥肩ロース40センズ。」
攻撃的錬金術に混じってスパナやらドライバーやらWCスリッパやら包丁やらが飛び交う中
「国家錬金術師、滅ぶべし!」
「スカー、お前もか‥」
シェイクスピア劇のごとく、ロイは呟いた。
「大佐?」
倒れたロイからアルは迫る怒涛の人波に目を向けた。
「ホントに父さん?」
「ウィンリィどうしてここに?」
「ばっちゃん、元気そうで良かった。」
「師匠、血が」
「シグさん、包丁はちょっと‥」
「スカーさん、お久し振りです。」
律儀に挨拶するアルを、立ち直ったエドは抱え上げると、脱兎のごとく走り出した。
「兄さん?僕持ち上げちゃうなんて、あとで足腰立たなくなるよ!?」
『お前を足腰立てなくしたいよ』
なんとも、分ってない恋人にエドは泣きながら頷いた。
2005/10/27
何でも屋。短期の小さい仕事引き受けます。連絡は額に大きな傷のある男まで。 |
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