女性なんて(ホークアイ編)



「だーっ。」
エドのがなり声が東方司令部機動訓練運動場に響く。
「なんで俺がホークアイ中尉と決闘しなければならないんだーっ」
頭を抱えるエドワードに対しホークアイは冷静に答えた。
「それは貴方がいると大佐の仕事が捗らないからです。」
「それって、大佐と決闘すれば良いんじゃないの?」
「勿論、このままではいずれ大佐に責任を果たしてもらう事になりますが、現段階で倒すと仕事になりませんから。」
倒す気でいるのか…
微妙な沈黙が漂う。
「ゴホン。あー、俺が大佐にちょっかいかけた事は無いぜ。大佐がアルに危害を加えようとするから、アルを護ってるだけだ。」
沈黙を振り払う為咳払いをし、エドは自分の正当性を主張してみた。しかしホークアイは眉ひとつ動かさない。
「まず誤りを訂正すると、大佐はアルフォンス君と貴方の反応に多大な興味を持っていますが、アルフォンス君に危害を加えるところまでご自分の感情を理解していません。」
ちょっと待て。理解無くてアレかよ!?じゃ、理解したらどうなるんだ?ってか、大佐の感情って‥中尉知ってんの?つーか、突っ込むところはどこなんだーっ
パニクるエドをよそにホークアイは続ける。
「それから、騒動の原因がアルフォンス君への関与だというのなら、大佐を処罰できない以上アルフォンス君に責任を取ってもらっても良いのかしら!?」
「たとえ中尉でもアルに手を出したら許さない!」
『以前大佐が焔の点いた目と称したのは、この瞳ね』
ホークアイはそれを微笑ましく思ったが、おくびにも出さなかった。
「私もそれは避けたいと思うので、結果やはり貴方が犠牲になる事で正解ね!?」
こう理詰めでこられてはさすがのエドも反論できない。
「しかし中尉は女だし」
「女だといって、遠慮する事はありません。敵に男女の区別も無いでしょう!?性差別は御断りです!」
いったん区切ると、ホークアイはエドを見据えた。
「しかし私は女を捨てたわけではありません。女である事に誇りを持っています。つまり、戦場で女を武器にはしませんが、女の鎧を外すつもりもありませんので、あとは貴方の覚悟だけです。」
これがリザ・ホークアイの覚悟。
気圧されるエドが、口を開こうとしたところへ、入り口からドタドタ足音が響いてきた。
鋼のっ。貴様、事と次第によっては許さんぞ!
真剣なロイは後に続いていたブレダに勢い余って倒された。
エドワード・エルリック。見損なったぞ!ホークアイ中尉を襲うなんてッ
ずっこけるエド
誰が襲ってるかーっ
女性に暴力を振るうたぁ男の風上にもおけん!
リキむハボック。しかしそう言いながら誰も運動場内部には入ってこなかった。
まだ振るってねーっ。っていうより振るわれそーなのは俺だーっ
「兄さん!」
最後に飛び込んで来たのはアルフォンスとフュリー。
アルっ、誤解だ!俺はホークアイ中尉に」
「うん。分ってるよ。シャイな兄さんが決闘とはいえ、女性に申し込むなんて」
「「「
ほ〜〜〜っ」」」
立ち直った男性群が顎に手を当て、エドを見下ろした。
ツッコミどこが違ーう
「そんなことより兄さん、逃げた方が良いよ。この状況だと」
土、潅木、川などで構成されたトラップもある運動場。
判断する時間を与えずホークアイが声を張り上げる。
「いくわよ!エドワード君。」
はっとエドが構えるより早く、ホークアイの2丁拳銃が火を吹く。土壌を錬成して壁を造るがホークアイの動作は早く、腕前は正確だった。壁で弾丸を遮り次の弾丸は避けながら新たに錬成した壁で続く弾丸を防ぐ。そんなギリギリの攻防を繰り返しながら、エドはスカー以来の危機感を感じていた。
このままだとやられる。仕方ねェ、反撃しないと
「遅い!」
錬成した壁の上からホークアイのライフルが銃声を上げた。地面を転がってエドは両手を合わせ、態勢を正しながら地面に両手をついた。
がぶっ
いってぇ〜っ
後の繁みから走り出たホークアイの愛犬ブラックハヤテ号がケツにかぶり付いていた。
「良くやったわ、ブラックハヤテ号」
「すごい。これが作戦ですか?」
目を輝かせるフュリーに、ホークアイは頷いた。
「ええ。まさか、本当にエドワード君を撃つわけにはいきませんから。」
その割には射撃が正確だったと思うが
ロイの呟きにホークアイはにっこり微笑んだ。
国家錬金術師ですので、これぐらい避けていただけると思いましたので。」
『『『恐っ』』』
青ざめて男性群は抱締めあった。
ま・参りましたから、この犬とって(涙)
いまだ尻をかじられているエドから白旗が上がり、一件が落着する。
「中尉、あの、兄さん悪気があるわけじゃ‥」
ケツが痛くて歩けないエドを背負いながら、アルが済まなさそうにホークアイに話しかける。
「分っているわ、アルフォンス君。エドワード君を怒ってるわけじゃないの。ただ、
他の人達への見せしめに丁度良かったから。の人からは、手加減せずに撃たせてもらうわ。」
…みせしめ!?
手加減…?
錬成された壁と男達の間をヒュルリと風が吹き抜ける。

以後、仕事をサボる面子はいなくなったという

2004/02/01

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