愛情一本(Love Milk)なんて(エド編)





「‥いつまでも、だらだらと続けていても、いいもんじゃない、、、」
「兄さ、、ん」
繋いでいた指が離れる。
「もう、終わりにしよう!アル。」
問いかけではなく断定な口調に、アルは苦しげに目を伏せた。
「そうだぞ、アルフォンス。冷めた相手と関係を続けても寂しいだけだよ。」
どっから出たーっとエドが指差すのも気にせず、ロイはアルの肩を抱くと、彼の顔を覗き込んだ。
「そうだな、今から私と新しい関係を創るというのはどうかね!?」
エドが離した指先を、ロイは手に取ると口元へと運んだ。
パッとアルの顔が明るくなる。
「ホントですか?大佐。あ、でも‥良いんですか?」
「君となら、本望だよ。」
ロイがアルへと口唇を寄せる間へ、エドは黒い物体を差し出した。
「ほらよ。」
黒い物体は緑の瞳を開くと不器用にびみゃぁと鳴いた。
「‥‥、なんだね、コレは。」
「捨て猫なんです。」「あんたの新しい関係とやら。」
兄弟二人の重なった声から、ロイはおおよそを理解した。
『どうりで。エドらしくない態度なわけだ。』
しかしエドの予想を裏切って、ロイは猫を受け取ると、艶然とアルに笑いかけた。
「君の頼みなら喜んで預かろう。その代わりといっては何だが‥」
「ありがとうございます、大佐。僕に出来る事ならおっしゃって下さい。」
「それは駄目!」
「なんでだよ、兄さん。大佐は猫を預かってくれるんだよ。ご迷惑をかけるんだから、僕‥」
「無理難題言われたらどうするんだ!」
アルは少し不安な様子を漂わせてロイを見た。それにロイはにっこり笑い返す。
「なに、毎朝猫にミルクをやりに来てくれると助かるのだが。」
「わかりました。お伺いします!」「ちょっと待て!それって‥」

   毎朝、ロイを起こす事になるんじゃ‥

【お早うございます、大佐。大佐?まだお休みですか!?もう、起きないと‥】
【君がキスしてくれたら起きるよ。】
ベッドに横たわりながら、アルにウィンクを送る‥
   あるいは
【お早うアル。】
【お早うございます、大佐。お口に合うかどうか分りませんけど、朝食の用意をしてあります。】

【ありがとう。】
ロイはアルの後ろから腕をまわすと、アルを引き寄せた。
【美味そうな香りだ。】
アルの髪に寄せていた口唇を滑らせると、ロイはアルの滑らかな頬に口付け‥

駄目だだめだ、絶対ダメぇ〜っ
「兄さん?」
「朝、起こしたり、朝食作るなんて許さ〜ん!
「何言ってるの、兄さん。預かってもらう猫の世話にお邪魔するんだよ!?その時に出来る事があれば‥」
「何かあったらどうする?」
「何かって、、、僕、そんなにとろい?大佐に迷惑かけちゃうかな‥」
「全然!君が来てくれたら大喜び、、いやその、大助かりだよ。」
「そのなにか≠カゃない!大佐がお前に何するか分らないって方の何か≠セ!」
思わず本音を言いそうになり、口籠ったロイと反対に怒鳴るエドに、アルは首を傾げた。
「大佐が僕に何をするの?僕、鎧だから。何があっても大概の事は大丈夫だよ!?」
鎧である事を忘れさせるような可愛い仕草に、エドとロイはぐぅ〜vと心の中で親指を立てる。
ふたりの妄想が分らなくて、アルは不安げにロイを伺った。そんなアルに、ロイはすぐさま顔を引き締めると人の良い微笑で大丈夫だと頷いた。大人の貫禄に、アルはやっと安心する。
「大佐にご迷惑かけるんだもん。上手くできるかわからないけど、僕、頑張ります。」
「待て、アル。鎧だって危ない事に変わりない‥」
「こちらこそ、よろしく頼むよ、アルフォンスv」
「勝手に話を進めるな!アル、早まっちゃダメだ。鎧だって兄ちゃんはムラムラするぞ!?男は狼なん‥」
「じゃ、早速明日から。」
「なんなら今から連れて来ないか?必要なものを見繕ってもらいたいしな。」
「お願い、兄ちゃんの話も聞いて‥」
にこやかな雰囲気のふたりに、エドは墓穴を掘ったことに、遅まきながら気付いた。


「バカね〜、そんなの、ちょっと考えれば分るじゃない。あんただって、猫拾ってきた時には味わえたんじゃないの?」
鎧だからって気をつけなきゃ などとウィンリィが心の中で決意しているのにも気付かず、エドは作業机に突っ伏している。
「猫がいなくてもアルは俺を起こしてくれたし、朝食だって交代だけど作ってくれてたから‥」
「有り難味に気付かなかったのね。それにしても、追い出す事なかったんじゃない?アルの性格からして、猫に付いてきそうじゃない。」
「‥‥‥。俺ん時は、猫と一緒に俺にもミルク出すんだもん。」
エドが恨めしげに顔だけ上げた。
「は?」
「う〜〜〜」
「それってさぁ、、、、いや、止めとく。バカバカしい。」
「なんだよっ」
「わかんない訳ぇ!?ホント、大馬鹿ね。」
ウィンリィは冷たく切り捨てた。

飼えないのに猫を拾う。理由の一番は猫好きだからか、エドに牛乳を飲ませる手段からか‥
7月竜のアルはエドが思う以上に、エドを大事に・愛しちゃってるようです(笑)。そしてエドは(ロイも可愛いものを愛でるという意味で)鎧でもベッドに連れ込むようです(爆)2005/08/22