7月竜

俺は、お前を元に戻さなきゃいけない。

その中には僕には想像もつかないぐらいたくさんの想いが込められてるのだろう。
そう、たとえば
兄としての
人体錬成をしてしまった事への
錬金術師としての

あぁ、だけど兄さん
それでは僕はどうすればいい?
弟だから、兄さんの庇護に甘えてればいいの?
人体錬成は二人の罪でしょ?それとも、僕は罪を背負えるほどの役割も果たせなかったの?
国家錬金術師じゃないけど、兄さんの才能には手が届かないけど、でも!僕だって錬金術師なんだよ?僕だって研究すれば元に戻る手がかりを掴めるかもしれないよ!?

【俺が、お前を元に戻してやる!】
うん、その時は兄さんも一緒だよ。
【俺は、お前を元に戻さなきゃ行けない。】
ううん。もしそうなら、僕は意志を持ってる必要も無い。ただの鎧で、兄さんが戻してくれるのを待ってるだけでいい。
これを酷いと、哀しいと思うのは、僕が恩知らずだからだろうか

「何見てんだ?アル。」
「今日のニュース。長男が両親と妹を殺したんだって」
「ひでぇなぁ。昨日もそんなの無かったか?」
「昨日は、妹が双子のお姉さんを殺して家に火をつけたってヤツと‥」
「もう、いい。ウンザリだぜ。よく殺せるよなぁ、まったく‥」
殺せるのなら未だいい。
「ん?何か言ったか?」
「ううん」
心が凍って何も感じない。痛みも、哀しみもしない‥
「TV、消せよ。気分悪くなる。」
「うん」
責任に押し潰されそうになっても、きっと兄さんは僕を殺さない。切り捨てたりしない。
「アル?」
首を振る。
でもね、兄さん。
「あの‥さ、兄さん。僕、少しでも兄さんの役に立ってるのかな?」
兄さんの感じる責任の中で、僕は生きてるのかな?兄さんは僕が見えてる?
「何言ってんだよ。お前はそんなの気にしなくていいんだ。」
『だったら、兄さんだって責任とか気にしなくていいんだよ!?』
もう僕は、返す言葉すら持てない。
優しい兄さんは、その優しさで、僕を消す。
氷点

当初と話が違ってしまいました。むむー(- -;)。
エドの感じる責任はあくまでエド自身のもので、その中にアルの意志も存在も幸せも無いと、言いたかったんですが、貧才は困りモンです(涙)2004/04/17