何をしているのか
                              きかれたら 「分らない」 としか答えられない
                              目の前の扉が開くのを待ってる
                              僕を呼びに来るのを待ってる

                              待ってる


                              何も無い
                                          それはどういう事?
                              淋しい
                                          それはなんなの?



                             ≪!≫

                              音がする      音?
                              声がする      後ろ
                              扉、  別の
                              誰かが ここに、来た

                              誰?


                        「アル!」

                              伸ばされる手

                  「来い!早く!!」

                             必死で呼ぶ、ヒト
            ≪ダメだよ  君は僕の魂じゃない  一緒に行けない≫
                             泣きそうな顔を、悔しさでねじ伏せて

「いつか、、、必ず迎えに来るぞ!待ってろ!!」

                             閉じていく扉から言葉だけ残して、消えた

                             なんだろう  この気持ち
                                               嬉しい?
                             なんだろう  この空間
                                               淋しい?

                             残ってるのは、扉
                             僕の罪
                             僕の希望
                             空っぽの身体









「兄さん!」
エンヴィーから引っ張り出したエドの身体はボロボロで、血まみれで
「ケガ!血が!!」
アルは、彼とは思えないほど取り乱した。
「大丈夫だ。俺の血じゃない。ちょっと骨折してるけど、心配無ぇよ。」
「兄さん!よかった!!無事だった‥良かった、兄さん、兄さん、兄さん!!!」
冷静なアルが、我を忘れて叫ぶ。
「お前、大げさなんだよ!心配し過ぎ!!」
「良かった、、、生きてた。生きてた‥」
大きな鎧が震える様に、エドはアルの恐怖を知る。
「悪ィ、心配かけた。」
「兄さん‥無事で‥‥」
「うん‥‥、そうだ、帰って来る時、お前の身体にあった。」
「僕の‥身体‥!?」
アルの震えがとまったのに、エドも一息つく。
「扉の前で待ってる。必ず、迎えに行く!」
冑を撫でるエドの手が、鎧が強張るのを感じた。
「アル?」
「‥嫌だ」
「アル‥!?」
「嫌だ、嫌だ、嫌だ!」
「ア‥‥」
アルはエドの肩をがしっと掴んだ。
「兄さんが門を開けるのは嫌だ!兄さんが死ぬのは嫌だ!!」
「いや、なにも死ぬわけじゃ‥。ちゃんと錬成陣を組めば今のように無事に」
「全然無事じゃない!」
「アル‥」
「死ななくても、危ないのは嫌なんだ!それなら戻れなくて良い!!」
「ア、、ル‥」
「淋しくても空っぽでも良いから‥」
『扉の前で、待ち続けているお前』
エドは力の抜けたアルの腕を潜ると、膝をついてアルの冑を胸に抱いた。
『ここで、寂しさを抱えているお前』
ひとりの夜より俺のいない方が怖い?
「アルフォンス‥」
愛しい弟 恋しい半身
「それは無理だ。だって俺は、お前の全てが欲しいから。」
音を立てて、エドは冑に口付ける。
「兄さ‥」
顔を上げたアルをエドは優しく覗き込む。
「お前を泣かしても、お前を迎えに行く。連れ戻す、俺のところへ!」
エドはアルの手を取ると、鎧を立たせた。見下ろしていたアルを、今度は目を細めて見上げる。
「それが出来ないなら、お前のところに俺の一部を置いて来る。」
「そんなっ、、もう、貰ってるじゃない、右手‥」
アルがエドの機械鎧を握る。
エドは首を振った。
「あれは門の中で、扉の向こうで待つお前のところに無い。俺はお前の‥」
泣けない顔じゃなく 我慢してる顔じゃなく
「笑った顔が見たいんだ!!だから、俺は何度でも行く!何度でも門を開く!!お前を連れ戻せる日まで。」

笑ってよ

ガンガン12月号・第53’ エドアル編成話  7月竜

ひとり扉の前に残されたアルの諦静観が痛くて美しいと思いました。
行けないといえる事、連れて行ってと言わない事。残されたアルフォンスの体は兄を分ったのでしょうか?今を分ってるのでしょうか‥。
それに対し、魂のアルの諦めない強さ、想いの深さ。そして本当は淋しくて怖い気持ち。10巻あたりからこっち、ヒシヒシと感じてたりします。
ひとり、取り残される恐怖。ホラーでも失恋でも同じ。だからこそ自分が先に逝きたいのかもしれません。うちのバカ兄弟(爆)。でも離れませんが(そんな事は7月竜のエドは、絶対許さないらしい;笑)2005/11/20