「ハァ」
「‥‥盛大なため息だな。どうした、大将!?」
エドはチラッとハボックを見ると、また机に突っ伏した。
「おい。それ、俺の机‥」
「あんたさ、フュリー曹長とデキてるの?」
「は、あ?」
エドは上体を起こすと、反対にだらしなくイスの背もたれに体を預けた。
「相談なら<あんた>が良いって、さ!?」
「相談?なんの‥?」
胡散臭そうなハボックの顔を、エドは見上げた。
「恋愛。」
「ああ、恋愛ね。なるほど、それなら分る。俺は恋愛のエキスパートだから。」
エドは両手をズボンのポケットに突っ込むと、首を反らせた。
「お前ね、、。する気が無いならどけよ。そこ、俺の‥」
エドは首を持ち上げると、ガクっと前に倒した。
エドの瞳の先。
ポケットの膨らみを切なそうな視線が撫でる。
その様子に、今度はハボックが盛大なため息を付いた。
「お前達、落ち着いたんだろ!?何の問題が‥」
「手、繋ぐのってさ‥」
「はい?」
一瞬引いたハボックは、ガバッと机に手を付いた。
「すったもんだの挙句、同性も兄弟も鎧も吹き飛ばしてくっ付いた今頃、手を繋ぐって問題かよ!?」
「ベッドの上と街中で手を繋ぐのはわけが違うんだよ!」
負けじと怒鳴り返したエドに、ハボックの顔が引きつる。
「ベッドって、、、アル、鎧‥」
「あんたの言うとおり俺だってそ-思うさ。同じだって!俺達もうそーゆー仲なんだし、手ェぐらい繋いだって‥」
「いやその前に、鎧とどうベッドで過ごしているのか教えて欲し‥」
「なのにアルときたら、寝室の外じゃ全然俺にかまってくれないんだ!」
ハボックは普段のアルとエドの様子を思い起こした。
「いや十分かまってると思うが!?」
「前と変わらない!」
「だからそれは、前から兄弟にしちゃかまい過ぎだったって事だろ。」
「手ぇ繋げなきゃ意味ない!」
エドは立ち上がった。
「アル、可愛いーから!絶えず俺のだって見せておかないと、どんな不届き者が」
「鎧なんですけど。」
「アルが可愛くないとでも?」
詰め寄るエドの手をうんざりとハボックは振り払った。
「やっと返事をすると、それかい!いや、確かにアルは可愛いが、それは‥」
「なんだとーっあんたも害虫の仲間か。」
「お前、相談に来たんじゃないのかよ。」
エドの剣幕に後退ったハボックは、何かにぶつかった。
「手を繋げないと意味が無いなら、私が貰おうか。私にはその存在だけで意味があるからな。」
「げっ、大佐!」
「出たな、悪の権現。」
「大変興味深い話題だが、他の部下への手前もあるのでね。」
ハボックが見渡せば、皆出口を固めている。そこには済まなさそうなフュリーの姿もあった。
「仕事の放棄、また仕事の邪魔をするものは厳重に処罰すべき。」
それ、大佐に言ったホークアイ中尉の言葉なんじゃ‥
ハボックが言葉を発するより早く、ロイは指を鳴らした。
ボン
焼煙の中、普段とは逆の立場を大いに楽しむロイがいた。
「ハァ」
「‥盛大なため息だな。そこ、俺の机だから、他でやってくれ。」
「あんたさ、ブレダ少尉ともできてるの?」
机に突っ伏したままのエドの発言に、ハボックは咥えていた煙草を落とした。
「俺を紹介する相手と、俺を結び付けないでくれ。」
「だってさ、恋愛相談の相手にあんたを紹介するなんて‥」
「だからそれは俺が恋愛の‥‥‥っていうか、まだ悩みがあるのか!?アル、生身に戻ったんだろーが。」
「そーなんだ!元に戻って、もう、,心おきなく愛し合えると思ってたのに!アルのヤツ‥」
「俺としては鎧の時に、その、、、どうやってベッドで愛を奏でたかの方が聞きたいんだが‥」
「手を組むのってさ」
「答える気、無いわけっすね。まーいいどけ。」
ハボックは落とした煙草を消すと、灰皿に捨てた。そうしなければ後が恐いからだ。
「あ〜今度はソレね。前進してんじゃん。」
そしておもむろに、アルとエドの様子を思い起こした。
「そーいや元に戻ってからのアル、活発になったか?」
「そーなんだ。感覚を取り戻して珍しいらしくてさ。なんでも触ったり匂いとかかいだり音を聞いたりしたいらしくて、
<兄さん、手を繋いでも良い?>
は、いーんだけど、向かいからウィンリィとか来ればソイツのところに行って同じ事言うし。
<兄さん、抱き締めても良い?>
ってギュっとしてくれるのはいーんだ。本当にいーんだけど、アームストロング少佐とか来れば、少佐にもするし。
あーもー、俺、どーしたら‥」
「説明はいいとして、アルのセリフのとこだけ裏声使うのは止めろ。」
ハボックの疲れも無視して頭をかきむしるエドは、ドアの開閉音に遅れながら気付いた。
「?」
「大佐が出かけたみたいだな。」
「!!!!」
新記録樹立の勢いで追っかけていったエドを見送り、ハボックは仲間を振り返った。
「どーでも良いが、面倒事は俺に振るなよ。」
「いやー部外者の立場は楽しいからなぁ。」
「どうでも良いなら諦めて下さい。」
「そんな事より大佐とエドワード君は大丈夫でしょうか?」
「昔俺に振ったお前が言うなよ、フュリー。」
「あぁ、こんな時にホークアイ中尉がいてくれたら、、、」
リザ・ホークアイ。
キングブラッドレイが倒れアメストリスには新軍部が発足したが、混乱が沈静化するまで軍人の昇級は見送られていた。
その能力・功績にもかかわらずいまだ中尉に甘んじている彼女は、フュリーがロイとエドを心配しているその頃、ロイとエドの前でアルフォンスと抱き合っていた。
「アルフォンス君なら遠慮なく抱き付いてくれてかまわないのよ。嬉しい。こんな弟が欲しかったの。」
錬成陣を使わなくとも二人が燃え尽きたのは言うまでも無い。
リライトが終わるのを待ってるとどんどん忘れるので、書く事にしました。お手軽お気軽なヤツです(笑)。こーゆーのは早いんだよなぁ(爆)。2005/07/09
7月竜