泣いたり笑ったりいろんな季節二人で超えて来た。
俺が落ち込めばそばで黙っていてくれた。
がむしゃらに石だけ追いかける日々、お前がいなきゃ出来ないだろう。
俺よりも俺の事知ってる世界で唯一望む人。
愛してるなんかじゃ足りない想い。お前だけに、お前だけに。
証にしたくて誓いにしたくて。


「アル〜っ急げ!出かけるぞ!」
昨夜も遅くまで調べ物をしていた為、起ききらない頭でぼへ〜とベッドで寝転びながらTVを見ていたエドは、いきなり立ち上がると外套を手にした。
「はぁ?急に何を…」
エドに朝のコーヒーを用意していたアルは驚いて振り向いた。
「あ〜、どうでもいいから早く来い!」
アルの腕と靴を掴むとエドは表へ走り出す。
「に・兄さんどうしたの?どこへ行くつもりなんだよ。」
「"さんふらんしすこ"だ!」
「さんふらんしすこ?どこ?、そこ!?」
「ニュース、見なかったのか?」
「ニュースってどんな…。それより先ず靴を履きなよ」
アルの呆れ声も何のその、エドは上機嫌でアルを引っ張って走った。
挨拶もそこそこ中央図書館に雪崩込む。
「兄さん!?」
「"さんふらんしすこ"の場所、片っ端から調べろ!行き方もだ!」
それを最後に本へと埋没するエドに、アルはひとつ溜息をつくと、同じように本を探し始めた。
全ての出来事に、存在に。意味の無いものは無い。
母の錬成も。身体を失った事も。悲しみから愛しみを、苦しみから強さを学べたように。
今の自分達が、ある。この先の希望が、ある。
没頭するエドの横顔に優しい眼差しを止めると、気を取りなおしてアルも本の世界へ入っていった。

サンフランシスコ市 2004/2/12 米カリフォルニア州サンフランシスコ市当局が12日、同性のカップルの結婚を許可した。行政当局が同性同士の結婚を認めたのは全米で初めて。米東部マサチューセッツ州最高裁が最近、同性間での結婚を認める判断を示したのをきっかけにニューソム市長は11日、同性同士への婚姻差別を撤廃するとの声明を発表。これを受け、同性カップルが12日朝から市庁舎に集まった。

無理してでもくれる笑顔に、どれだけ癒され守られているか。
ありがとうなんかじゃ足りない気持ち。カタチにしたくて約束したくて。


「っかーッ。どーして見つからん!?」
「兄さん‥その〃さんふらんしつこ〃って地名なんだよね。そこへ行くの?何があるの?」
「さ・さんふらんしすこは‥」
「さんふらんしすこは?」
「さんふらんしすこでは結婚できるんだ!」
頬を赤らめるエドを、アルはどこか遠くで見ている気分になった。
「兄さん…、適齢期になればここでだって結婚できるよ!?そんな分らない場所じゃなくても‥」
「違うっ!」
大きな叫び。
「兄さん、会議室貰ってるけど、ここ一応図書館‥」
アルが声を扉を気にして振り向こうとするのを許さず、エドはその冑を両手で包んだ。
「"さんふらんしすこ"でアルと結婚できる。さんふらんしすこで俺はアルと結婚する!」
ぎゅっと抱きつかれても、アルはしばらく動けなかった。
『兄さんは‥何を言ってる?さんふらんしつこ?今朝のニュース!?』
以前、アルは彼に費やすエドの時間が切なくて、離れようとした事がある。エドに自分を省みてもらいたくて‥
『そんな僕を兄さんは連れ戻しに来てくれた。あの時も結婚してくれと言った。』
お前が俺以外のものになるのは嫌だ
まるで逃がさないように、しがみ付いて叫ばれた言葉。
あの時の瞳と同じ輝きで
「TVで言ってた。あめりかで昨日、かりふぉるにあ州さんふらんしすこ市長が同性同士の結婚を認める声明を発表したんだ。今朝から市庁舎に同性カップルが集まってるって‥。行こう、アル。行って、俺と結婚してくれ!」
ずっとずっと、兄は本気だったのだ。あの時も、今も‥
「アル、俺の‥」

お前をこの手で抱締め守りたい。もっとも、守りたいなんて言ったら殴られるだろうけど。

「‥好きなんだ。失くせないんだ。俺の、、アルフォンスになってくれ‥」
『もうとっくにそうなんだけどな』
心の中でアルは苦笑した。鎧姿じゃなかったら、泣き出しそうだった。
兄の将来を思って、決して答えはしなかったけど
アルは泣き声にならないよう息を整えると、エドの背に手をまわした。
「ウェディングドレスは誰が着るの?」
おどけたアルに、エドは真面目な顔して指をさした。
「誰って‥お前」
ポコンと頭を殴られるエド。
「この姿じゃ着れるわけ無いでしょ。兄さん、着てくれるんだよね!?僕の事好きなら」
アルの言葉に、エドは一瞬詰ったが、すぐ力強く頷いた。
「お前がそれで俺と結婚してくれるなら。」
見栄も矜持も無い。アルだけが全て。
『ほんと、兄さんには敵わない』
「僕が兄さんのものなら、兄さんも僕のものになってくれるんだね。」
「勿論!」
「じゃ、簡単」
笑った声のアルにエドは小首を傾げた。
「対等だから、ふたりともタキシード、着ようよ。堂々と。」
「ああ!!」

やさしい母の思いにも、理や世間の常識に背いても
貴方といられるなら、貴方を愛し愛されるのなら、そこが天国。お前と俺の。貴方と僕の。

い道程をやがて辿り着いたら


『ウェディングドレス、着せてみたいなぁ。綺麗だろうなぁv可愛いだろうなぁvV』
着せるのは叶わぬとも、抱締めるその日を夢見て、エドは今日も印にくちびるを寄せる。

propose

7月竜

エドアルスタンプラリー開催おめでとうございます〜vそして昨日、newsで同性結婚を(一時的でも)市政が認めたのを見て作ってしまいました(^^;)さて、誰の曲捩でしょう!?(爆) 2004/02/21
消せない恋が似たお話になった為(涙)こちらをその続きとして修正しました。なんてこったい(閃きと文才が欲しい;切望)2004/04/11