7月竜

どういう計算か知らないけど、あと4年もしたら
兄さんは身長が170cmになると夢見ている。
父さんは知らない、けど母さんは背が高い方だ
ったと思うから、伸びる可能性も無いとはいえない。

4年…4年かぁ……
4年後と言えば兄さんにも恋人が居て可笑しくな
い年齢だ。
その時にまだ戻れなかったとしても
ずっと…戻れなかったとしても
ウィンリィなら兄さんを解ってるし、メンテもできる
し、何が起こっても師匠みたいに幸せを築いて
いけるだろう

                                  「君はどうするのかね?」
僕?僕は死なないから
そうだなぁ。兄さんに子供が出来たら、
そうなったら兄さんの子供達を見守って、
そのまた子供達を……
あぁ、でも。それは出来ないね
僕が居たら兄さんはたぶん結婚しない
兄さんは本当に優しいから
優しすぎるから
たとえウィンリィが泣いて頼んでも

                                  「ベッドにもぐり込んでも!?」
……うん
きっと……
兄さんは目を伏せるだけだと思う
自意識過剰かな

                                  「真実を得ている。さすがに兄の事は
                                  よく、解ってるではないか」
僕がそれとなく話を振ってみても、
未だ兄さんにはピンと来ないようだけど
兄さんが意識するようになったら
そのときは…、そうだなぁ

海へ行くよ

                                  「海?」
うん
修行の時、見た。おだやかで、きびしくて、
凄かった!
温かくても、冷たくても 僕には関係無いから
ただ、光がよく透る海がいい
はるか昔
生命が生まれたその水は
やがて血印をぼかして、溶かして、洗い流すだろう
そして、僕は海へ還えるのだ
やがて鎧も錆びて
海の生物の棲家になるだろう

                                  「美しい夢にみえるが
                                  鋼は納得するかね!?」
はは自己満足、です…ね
                                  「では、私のところへ来るといい」
大佐?
                                  「後向きな夢だが、諦める気は無い
                                  のだろう?
                                  だったら仕方ない。
                                  鋼が色気付いてきたら
                                  〃私の方がいい〃と宣言して
                                  私のところへ来ればいい」
それは!申し訳無いです
                                  「なに、気にする事は無いさ。
                                  私は、自分が結婚したいと思えば
                                  君に気兼ねなくするし、
                                  鋼より現実を見ている。
                                  君の言う通り戻れなければ、
                                  いや、戻ったとしても君が幸せに
                                  ならなければ、ヤツも幸せには
                                  なれまい。私のところが幸せだと
                                  解れば、ヤツも納得するだろう。
                                  最初はごねても、
                                  やがて新しい家族をつくっていくさ…」
…そう、ですね
うん
上手い考えですね
大佐にはご迷惑をおかけしますが  

                                  「たいした事ではないさ。
                                  私は君を気に入っているのでね。
                                  私のところへ来て、
                                  そしてそれでも君が海へ
                                  還えりたいというのなら
                                  頃合をみて、行くがいい
                                  鋼には錬金の旅に出たとでも
                                  言っておこう」
ありがとう ございます


「で?」
「立ち聞きは感心せんな、鋼の」
振りかえると兄さんがが入り口で仁王立ちしていた。
「るせーっ!人の弟に何吹き込んでんだよ!アルも誘導されてんじゃねェ!」
「兄さん…何時から聞いてたの?」
「大佐が<私のところへ来ればいい>とおっしゃったあたりからです」
兄さんのの後ろに控えていたホークアイ中尉がドアを閉めた。どうやら兄さんがが飛びかかるのを静かに(だからこそ逆らえないほど恐ろしい)抑えていたらしい。
「俺が現実を見てないだと?」
「事実だろう」
飛びかかりそうな勢いで近づいて、でも兄さんは机に手をついただけで、やがて背を向けた。
「いくぞ!アル」
僕を促してドアを開けた、そのままで
「現実見てなくたって良いんだよ、アルがいれば」
呟きを残し足早に歩き出した。
『ごめんね、兄さん』
一瞬立ち止まって、僕は大佐を振りかえった。
【秘密】
大佐は頷いただけだったけど、それで充分だと思った。
「待ってよ兄さん」
小さな兄の背に、瞬間光の海が輝いて 消えた


血文字って消えると思うんですが、錬成陣だと消えないんでしょうか?(いい加減で済みません)
自分を知る・自分が知る人や物や世界が移り変わった世界で独り生き続ける事は厳しいんじゃないかと、死はそれがもたらされる時間を別として、あらゆる物に平等に与えられていて死ねないと言う事は、全てのものから置き去りにされる孤独ではないかと、浅慮の私は思うのです。
エドの血脈を見守っていきたいけど、それが彼らの重荷になるんじゃないか。アルフォンスは自殺するタイプでは無いと思うのですが、大切な人の重荷にはなりたくないんじゃないかなぁとか、エドワードもたとえ自分の命が尽きても、何らかの形で弟へ思いを残すのじゃないかとか考えたら、アルは自殺ではなく自然淘汰への還元(他力任せ)の道を選ぶんじゃないかと、決別について考えたときにこんなくだらないブツができてしまいました。しかし、暗ッ。