殺した
 殺してしまったんだな‥

夜のはずなのに、月明かりが室内を照らしている。
いち錬金術師として、錬金術師の犯した過ちを、正す決意は有った。
しかし、なんて浅はかな決意だったんだろう
「命を奪うという事‥」
動かない体。口は悪態を吐く事も無く。瞳に悪戯な輝きも灯らない。
もう、決して、生きかえらない。
それがホムンクルスであっても。
死。それは命あるもの全ての正しい在り方で
だけど。
ただ殺すのは食べる為に殺したウサギと違って、何も残らない。

いつしか昇った陽が窓から射し込み、室内は弾劾を受ける被告席の様相を醸し出している。
「兄さん?」
室内の惨状を見て息を詰めても何も言葉にはせず、アルは俺の側に来た。
「兄さん。」
アルの冷たく硬い腕が、俺を抱締める。
俺を守るように
グリードの死を悼むように
この腕があるから俺は前に進める。

想いを込めてアルの腕を軽く叩くと
「ごめん、苦しかった?」
そう言って、腕が緩んだ。
それはたぶん、色々な意味で。
この優しい弟はそれでもその上に立っているのだ。ラースを目にした時から。
「アルフォンス」
この苦しみを分かち合える唯一無二の名を呼ぶ。
「生きていこう!」
アルは頷いて、俺の顔色を確かめてから、屋敷を出ていく。

「‥‥アル」
庭の、手入れの行き届いた花の綺麗な場所を掘っていた。ふたつ。
「人が好いな」
「グリードさんにも言われちゃったよ。それってバカって事かな。」
「そうだな‥バカだな。」
俺も一緒に墓穴を掘る。
「でも、バカがいい。」
「うん‥‥」
「そのままでいてくれ!アルフォンス。」
この先、幾多の命が消えて手が血に汚れても、悲しみが産まれても
どうかそのままで

君を想う

TV34話

エドversion

7月竜

グリードさんと愉快な中間達。openingで活躍してたので、違う展開を期待していたんですが‥カッコイイけど、もっと出張って欲しかったのも事実なので複雑です。死を前面で扱ってくれたので、考えるには良かったのではないのかなぁ。これがエドのグリードの死に対する、死を与えた事に対する気持ちの話(のつもりです;汗)、アルversionが奇しくもマーテルに対するアルの気持ちで書いてあるので、番にしました。 2004/06/13