還元

(エドside)

7月竜

夢を見る。
心踊る夢。
俺の魂を使い、アルの魂を俺の身体に錬成定着する、夢。
アルが俺となる。
俺の魂の存在などその時意味は無い。
だって俺とアルは死ぬまで別つことが無いのだから。
俺の身体にアルの魂が入り、アルと俺はひとつになる。
永遠に
永劫に
俺となったアルが誰かを好きになろうが、誰かと結婚しようが、それも問題じゃない。
誰も俺からアルを引き離す事はできない。誰も俺からアルを取り上げる事はできないのだ。
アルでさえもだ。
見て触れて、言葉を交し愛を囁きあえたとしても
手を繋ぎかいなに捕え、唇を奪いその体を組み敷いたとしても
絶対の融合は得られない。
永遠の融合は得られない。
ずっと見ていたい。触れていたい。抱締めてその口から俺の名前だけを呼ばせ続けたい。
俺は俺を知っている。
欲望が尽きる事は無く、やがてアルを蝕んで俺から奪い去っていくだろう。
ならば
俺の身体にアルが生きる
それは至上の喜び
俺の魂が還元されるその、ひとつになる一瞬が永遠となる
こんなに胸が踊る想像は無い。この夢に欲情すらする。
そのあとのアルの嘆きも苦しみも憎しみも知らなくて済む。
ひとつになる歓喜を最後に俺の魂は還元され消えていくのだから。
アルフォンスを俺の身体に閉じ込めて、俺は真理の扉をくぐり
ひとつになる記憶だけが永久となる。



「おはよう、兄さん。夕べは良い夢でも見たの?」
気だるげにベッドに半身を起こし、伸びた髪をかきあげると、アルフォンスがコーヒーを手に入ってきた。
「………カフェオレ?」
マグに顔を寄せれば、液体は琥珀色だった。
「牛乳じゃないだけマシでしょ!?」
マグをサイドテーブルに置いて、アルはカーテンを開けた。広がる朝の日差しに目を細める。
「俺…笑ってたか?」
「楽しそうって感じじゃないけど、嬉しそうな感じだったよ。夢、見たの?」
眠る事ができないアルが、無邪気に聞いてくる。
「ああ……、見た」
「どんな夢?」
俺の機嫌が良いと思ったのだろう、アルは話を促しながらマグを再び差し出す。
「そうだな、大総統になって軍のヤツらを扱き使う夢かな」
俺がカフェオレを飲むのを嬉しそうに見ながらアルは、なんだよソレ、と合いの手を入れた。
俺を心配して少しでも牛乳を飲ませようとする優しい弟
その弟を裏切る夢を見る、俺

俺達二人へ変わりなくに訪れる朝に、殺意と感謝を込めて俺はベッドをあとにした

成できるかとか、自分は消滅するかとか、全て関係無く、エドの望みはアルに還元する事、という行っちゃってる話でした。済みません〜
ギャグしか書けなかったのに、鋼は暗い話の方が早く出来る、不思議(っていうより7月竜の思考回路が不可思議;涙笑)2004/01/06