秘密を作る事が目的でもなく、秘密を見つけるのが目的でもない。
クラブの存在が秘密なだけの、安直なネーミング。
「クラブ、始めようか」
彼の一言で部活は唐突に始まる。場所や時間は関係ない。男同士だからムードもない。お互いにかける言葉も無く、事は過ぎていく。
行為自体はあまり覚えていない。熱中しているのか?と問われれば難しいっていうか、思い出すと心臓に悪いからパス。
覚えているのは星の光とか虫の音だとか、風や草の匂い。そういえば布団は元より家の中ですらした事が無いような。
『あ、でも教室は家の中みたいなものか』
無量君といると、まるで自然に溶け込むようで、街のざわめきもグランドの声も罪悪感も無い。
『実際、悪い事なのかな?』
ある日、突然このクラブが終わっても、僕達は、日常は変わらない。
抱き合っている存在より、隣にいる体温の方がずっと大きい。
絡み合った足とか、背中を滑り落ちていく手のひらより、測ったタイミングで目が合う事の方がずっと近い。
では、何故するのか。
やっぱ秘密って事で。
「何、考えてるの?」
言葉にできなくて曖昧に笑う。無量君も笑っているからきっと解ってる。
お互いを引き寄せる為に伸ばした腕に、今日最後のオレンジをこぼして、夕日は沈んでいった。

秘密クラブ

7月竜

「こら、逃げない。逃げてたら上手くなれないだろ」
「うっ」
確かに。下手よりは上手い方が良い。しかし、練習とはいえこれは男相手にするものだろうか?あ、でも女の子相手なら練習じゃなくて、本番になるのか。
答え等元より求めていない文字列がグルグルまわる。
統原無量に捉ってからはや30分。無量の腕の中で、何回Kissをしただろう。
『〃した〃というより、されているよな、これじゃあ』
それはそれで情けないかも
でもさ
『無量君から逃げ出すなんて、僕じゃなくても無理なんじゃ』
見上げた先の瞳には、からかう色は欠片も無い。いつもの笑みに隠していても、真摯な気持ちは伝わってくる。

いまだ繰り返される口付けに、腕から逃げ出せないのは、相手が強いからではなく。
本当は逃げ出さない自分が居る事も村田始は知っていた。

練習

7月竜

「無量君、これ。双葉から。味の保証は致しかねます」
 ピンクのチーフで包まれたお弁当。右手で差し出す
「手作りのお弁当かぁ。ありがとう。見た目は…いいんじゃない?」
 複雑な表情。卵焼き・たこさんウィンナー・アスパラベーコン・ミックスベジタブルだが形は崩れがち。デザートにうさぎリンゴ。ご飯の上には海苔のハート付
「いいよ、本当の事言って。」
「ははっ。まだこれからだしね。………。」
 始のお弁当は卵焼き・アスパラ・ウィンナーの残骸・ミックスベジタブル・リンゴの残骸。海苔の残骸
「残り物?悪かったかな」
「それ食わされるよりマシかも」
「でも卵焼きはキレイだね」
「あぁ…、双葉が何度やっても失敗するから横で笑ってたらさ。お兄ちゃんもやってみろって怒りだしてさ」
「じゃあその卵焼きは村田君のお手製なんだ」
「そ。村田始の力作〜」
 摘み上げた物を無量がパクリ。
「あ」
 驚いてところへ更にキス」
「ごちそうさま」
「な・な・な…」
「僕は双葉ちゃんの甘い卵焼きより村田君の塩味の方が好きかな」

焼き

7月竜