7月竜
今日はとても大切な日だったりするから。気合は十分、うん。
「気合負けって言うのよ、ソレ。緊張してるんじゃないの?」
緊張?俺が!?
「じゃあ、な〜んで時間ぎりぎりになっちゃうわけかなぁ〜」
抜かり無いよう準備万端にしておかないと、大事な時に邪魔が入っても困るからね
「やさしいお姉様としては、そういう事にして置いてあげるわ」
両手を広げてみせてるけど、あとで借り返せとか言うんだろうなぁ
「そのお礼と言っちゃあ何だけど」
そら来た
「何よ」
うわっ。横目で睨まないでくれるかなぁ。腰に手を当てて頬を膨らます仕草は本質知らなければ魅力的なんだろうけど。
「とにかく!2日目はあんたに譲るけど、今日の組み合わせはわたしが決めるからね」
「え〜っ」
物で集ってくれた方が良いよ。かくれさとに居る時間は短いんだから。って、駄目だ、あの目は。絶対譲歩してくれない。目で含み笑いを表現できるのは姉ちゃんぐらいなもんだよ。はぁ
「項垂れない項垂れない。大事な日でしょ。始めが肝心」
肝心も何も、時間ぎりぎりにした俺も悪いけど、更にオーバーさせてるのは姉ちゃんだよ。まったく
今日、これから向かう先は長野、ほしふるさと。
旅行とは名ばかりのレベルアップだったりする。勿論守山さんや瞬君のもだけど、俺と村田君のステップアップが最大目標。
「何妄想に力入れてるのよ」
「妄想じゃなくて人生設計」
「はは〜ん!?でも今日はわたしに決定権があるからね」
姉ちゃんの視線の先にはかくれさとへ続く道がある。まぁ、おまけも付いて来てるからここは大人しく従うよ。レベルアップ前の関門に、心の準備も必要だしね。
じいちゃん、手紙読んでくれたかなぁ。なんだかビデオだけ見てそうな気が…。いや、もう後には引けない。全員揃ったところで、いざ出陣。
扉を開ければ案の定守山さんのビデオがぁ!
じいちゃん、そこがポイントじゃない!大事な人を連れて来るって書いただろ。
守山さんも俺に怒らない!怒りたいのは俺の方だよ。
姉ちゃんもじいちゃんも確信犯だな、これは。
でも、ま、言いかえれば紹介は済んだ訳だし、明日は‥きっと…
「那由ちゃんは?」
「台所」
「始君も?………、やける?」
「少し妬けるね」
「実はわたしも」
「じいちゃんは散歩へいったよ」
「ったく、好きだなぁ………、で?スッテプアップ出来たの?」
話題の変え方は少し強引だったけど、姉ちゃんも色々頑張ってるから。感謝も含めて気付かない振りでのってみる。
「ハッピーエンドへの道程は未だ長いけど、いいんじゃない?」
「ふぅ〜ん!?ごちそうさま」
何をガサゴソと、…花火買ってきたのか。さすが姉ちゃん、遊びに手は抜かない。水音も止んだし、片付けも終わるようだ。呼びにいくつもりか姉ちゃんが立つ気配がする。
本当はさ、姉ちゃん。余裕なんて全然無い。でも、大切だから寛大にもなれるんだよ。
「次は手を繋げると良いな」
「……それって、全然前進してないんじゃない!?」
帰郷
7月竜
―学園が戦場の、ある戦いの記録―
7月竜