ウィルスメール

7月竜

「‥の書類は明日朝までにご決裁頂きますよう。あ、大佐。それと手紙が。」
仕事のスケジュールに明後日を見ていたロイは、ホークアイの差し出した手紙に目を向けた。
「ん?」
東部勤務の頃はファンレターや差し入れの類は事欠かなかった。しかし中央異動になってからまだ数日。初めての手紙である。裏返しても差出人名は無かった。
「お、さすがは大佐ですねェ。もうファンレターですかい?ハボック少尉にもその早業を‥」
ホークアイとハボック双方に睨まれ、ブレダはそそくさと席へ戻った。
「読まないんですか?大佐。」
横向きの白い封筒をポケットに仕舞い込んだロイに、ハボックがくわえタバコで問い掛けた。ツマンナソウだなぁとフュリーが苦笑いを噛み殺している中、ロイは悠然と答えた。
「個人宛の手紙だからな。勤務時間外に読むとするよ。」
「いつも、それぐらい勤勉だと助かるんですが。」
冷めた口調でホークアイが締め、朝の出来事は幕を閉じた。
その午後。
「どうかしましたか?大佐。お顔の色が少し‥」
「いや、何でも‥ない」
歯切れの悪いロイにホークアイが眉を顰める。
「そういや、手紙、読みましたか?何でした?」
「あぁ、アレか。手紙の変わりに僅かな白い粉が入っていた。念の為、鑑識に回しておいたが。」
「あ!悪戯。」
「嫌がらせじゃないのか!?」
「手紙の入れ忘れじゃ無いんでしょうか?」
「じゃ、白い粉はなんだよ!?」
「それは‥」
「まるでTVドラマのテロのようですね。生物兵器を手紙で郵送する。」
ファルマンの発言に、それまで井戸端していた3人がガバッと席を引いた。ホークアイもロイを見つめる。
「ウィルスメール、か‥」
「いえ、アレは炭素菌でした。細菌兵器です。」
「どーでもいいよ。ンな事。」
何言ってるんです!原因の究明こそが細菌兵器に対する有効な手段‥」
「お前達‥楽しんですだろう!?」
その日、ハボック・ブレダ・ファルマンは残業を仰せ付けられた。

「なんだ!?これは。」
翌朝、出勤するとロイの机上にはダンボールに入った手紙の山が。
「私が出勤した時にはもうこの状態でした。」
ホークアイが言うと思い当たったようにハボックが手を打った。
「そういや、残業帰りに庶務課の連中が何か置いとくって言ってたな。」
色取り取りの封筒。
「差出人はいかがですか?」
「あるものもあれば、無いものもある。」
「とりあえず無い物は鑑識に回しましょう。できればあるものも回された方が。」
「あぁ、しかしせっかくの気持ちだしな。特に体調も変わり無いし。」
「‥ですが、昨日と打って変って顔が赤いように思えますが!?」
昨日の午後、ロイの顔色が心持ち青白かったのでホークアイは声をかけたのだ。
「やっぱり、ウィルス!?」
馬鹿者と叱咤する声も心無し力が無い。
「わかりました。」
徐にホークアイは受話器を取った。
「ホークアイ中尉?」
隔離、しましょう!」
有無を言わさぬ提言に、ロイとハボックは冷や汗を浮かべた。

「原因は分ったんですかい?」
ロイを送り届けてから鑑識によって来たホークアイにブレダが尋ねた。
「ただのインフルエンザ菌。毒性は少ないようよ。特に空気感染はしないようだから。」
「インフルエンザウィルスって‥危険じゃないッスか?」
「ハボック少尉。インフルエンザ菌とインフルエンザウィルスは違うの。だから大丈夫よ。」
いや心配はしてないッスけどね、とハボックは煙草を取り出した。
『どっちかっていうと、俺達にも移る危険性が心配って言うか、病気で死ぬような儚い大佐じゃない事はヒューズ准将の御墨付きだし』
数人の心の中で呟かれた言葉。
「しかし、空気感染しないなら、どうして大佐は感染したんです?」
「封筒をあけると飛散する仕組みになっていたんじゃないかしら?詳しくは教えてもらえなかったの。私は大丈夫って‥」
「それはどういう‥」
「失礼します!」
ノックとともに現れた士官。
大佐が病気になったと
テロの対象になったとか
死にそうなんですか?
青ざめた顔で兵士達が次々と入れ替わり立ち代りやって来るのに、ホークアイは顔が綻んだ。
なんのかんのと言っても、大佐は慕われている。
ホークアイはロイの仕事でせめて彼女が出来る分を処理し、ロイの病室を見舞った。
「大佐、皆心配しています。早く良くなって下さい。仕事の方は出来る限りですが片付けておきますので。」
「ありがとう、中尉。有能な部下を持って私は運が良い。それに答えられるよう、健康を取り戻すよう精進するよ。」
ところが翌日、ロイの病状は悪化していた。
「どうしたんですか?大佐!?」
「あぁ‥ホークアイ、中尉にハボック少尉、か。移るといけないから、ここには‥」
ロイは点滴をつけられ苦しそうに息を荒くしていた。そこへ、担当医が巡回に現れる。
「どう言う事です!ドクター。昨日は大丈夫だと。」
「ええ、昨日は大丈夫でした。あの時点ではね。」
医師の視線にロイは、咳をして誤魔化した。
「ドクター!?」
「悪化の原因はコレです。」
ロイが止める間も無く、医師はポケットから透明ピニールに保管された手紙を取り出した。その手紙には
「アルフォンス・エルリック!?」
差出人名をハボックが半音高く読み上げた。
「……… 」
「………。大佐?念の為確認しますが、この手紙、アルフォンス君が書いたものと思ったわけじゃ無いですよね!?」
ホークアイの声が低く漏れる。
「…… 」
「仮に大佐が入院したと聞いたとして、よく気の付くあの子がウィルスメールが原因で入院している大佐≠ノ手紙見舞うような真似、すると思いますか?」
「…… 」
まさかと思いますが。最初の手紙も?
「あの手紙は開封した内側にアルフォンスと小さい文字で書かれていたんですよ。それで顔を近づけて粉を吸込んだわけです。」
医師の説明に、ホークアイも黙り込む。
『なるほど、ホークアイ中尉には感染する確率が低いわけだ。』
「……。」
「…… 」
「今日も手紙が?」
ハボックが問い掛けると医師は首を捻った。
「昨日も着た手紙はすべて鑑識に回したはずですが、どうやってかこの手紙を大佐は持っていました。今日も処分したんですが、この分だと大佐が持っている可能性は大いにあるかと」
ホークアイはロイに近付くと
「失礼!」
短く言い捨て、ベッドを探し始めた。
「中尉、移ると危ない‥」
既に、ロイの説得は真実味が無かった。程なくホークアイはロイの袖口から手紙を見つけた。そこには
アルフォンス・エルリックの生写真在中
とあった。
「手紙を選んで、どーでもいいのだけ、私達に処理させてたんですねェ。」
しみじみ言う医師の声にホークアイは肩を震わせた。
「死にたいんですか、あんた‥」
上司という事も忘れ、ハボックは呟いた。
「こんなアホな理由で死んだら、ミニスカ夢見て見舞ってる兵士達が大佐の墓に何するか分りませんよ!?」
「ちょっと待って、ハボック少尉。ミニスカって!?」
バカっとロイが目配せするのに、しまったとハボックも口を抑えた。
「落ち着くんだ、ホークアイ中尉。手紙は看護師が運んでくるんだ。だから検査済みだと思って‥」
ロイの言葉にホークアイが医師を振り向くと、彼は首を振った。
「ここまで来ると、健気としか言い様ありませんな。あ、病室での発砲は禁止になっておりますから。」
銃を構えたホークアイに医師は軽く笑うと、風雲取り巻く病室を後にした。

「あれ?ハボック少尉はお休みですか?」
フュリーの質問に顔も上げず、ホークアイは答えた。
「ハボック少尉には昨日よりウィルスメール撲滅作戦を任せてあります。しばらくここには来れないでしょう。」
ホークアイから吹きつける吹雪にフュリーの陰でブレダとファルマンが目配せを交す。
『バレたな。』
『どの件ですかねぇ?多すぎて見当が‥』
背後でコソつく二人に気付かず、フュリーは尋ねた。
「大佐の様態はどうなんでしょうか?さっきアルフォンス君が訪ねて来たんですけど」
「アルフォンス君が!?何か用事だったのかしら?」
「なんでもエドワード君が入院したそうですよ。」
「!」
「それって‥」
「やっぱり手紙!?」
指差すブレダにフュリーは小首を傾げた。
「エドワード君曰く、原因は手紙らしいんですが、病気は大佐と違い‥」
フュリーはチラっとホークアイを見ると少し頬を赤らめて俯いた。
「その‥性病菌も、検出されたとか‥」
「やるじゃん、鋼の錬金術師。」
ブレダが口笛を吹くのに対しホークアイは溜息をついた。
「写真、舐めたのかしら‥」
「は?」
キョトンとする3人に、ひとりホークアイはこめかみを押えた。

「エンヴィー、あなたお父様の薬品庫から細菌キメラを持ち出した?」
「あ〜〜〜、うん。要らないようなヤツら。」
バレバレと見て取ったエンヴィーは素直に認めた。
「勝手は困るわよ!?」
「死人が出ない程度の悪戯微生物≠わざわざ選んだんだし、大事になったのは向うが懲りないからさ。」
ラストは業とらしく溜息をつくと、エンヴィーの方へ身を乗り出した。
「で、どうだったの?」
あー白いように引っ掛かるよどういつもどーしようもないバカだね。」
エンヴィーはアルフォンスとサインされたピンクの封筒を取り出すと、看護師の格好をしてみせた。
「人間は煩悩に弱い生物よね、ホント。」
「人間相関図バッチリv父様にはレポートとして提出しておくよ。」
そういうとエンヴィーは少年の姿に戻った。
「他の地域でもやってみよっと。誰の名で、誰に送ろっかな〜ウィルスメール楽しみだなぁ。」
エンヴィーは目の前にガラス瓶をかかげた。
瓶の中の液体に灯りが反射してエンヴィーの顔を妖しく照らした。
ロイ達が退院できる日は遠いようだ。










【兄さん?どうしたの?】
「兄さんの、兄の異変に気付いたのは、3日前でした。」
「最初に大佐に手紙がきた日と同じね。」
フュリーからエドが入院したと聞いたホークアイの行動は素早かった。ブレダ・ファルマ・フュリーに仕事を分担し、エドの入院部屋をロイの特別室と同室にすると、特別室の隣りに陣取りアルを呼んだのだ。
「そこに座ってくれる?アルフォンス君。確かめておきたい事があるの。」
「はい。」
机を挿んで向かい合う。もう1つ、ハボックの為にもイスが用意されているが、聞き込みの為市中に出ていてまだここには着ていない。
「ウィルスメールですか‥。僕がもっと兄さ、、兄の行動に注意しておけばこんなに酷くは…」
「アルフォンス君のせいじゃないわ。それと、呼びにくかったら兄さんで構わないのよ!?」
「ありがとうございます、中尉。兄さんの事も、マスタング大佐と同室にしてもらって‥。きっと早く良くなると思います!」
「確かに。お互い早く良くなって退院したくなるでしょうね。」
「はい?」
「あぁ何でも無いのよ。同室なのは類友だから対策が立て易いからなの。気にしなくて良いわ。」
「対策?治療じゃなくて!?」
「ええ。これ以上悪化させない為の対策がね。治療自体は簡単だから、悪化さえしなければすぐ退院できるはずよ。さ、続きを話してくれる!?」
「あ、済みません。えっと、あの日、兄さんは白い封筒を手に宿屋のカウンターで佇んでいました…… 」

【兄さん?】
兄さんは僕に気付くと顔を見て何か言いたそうに口を開きましたが、結局何も言いませんでした。
封筒と僕を交互に見て
【なんでもない】
はにかんだように笑うと、兄さんは封筒を持って部屋へ行きました。
【読んで、来るから。】
僅かに頬を高潮させて、兄さんは扉の向うに消えました。

「暗に入ってくるなという意味だと思って、僕は言伝を宿屋の主人に頼むとその日の予定通り図書館へ行きました。」
閉館時間になっても兄さんは現れず、僕は途中瑞々しい果物があったので兄さんにイイなと買って、宿屋へ戻りました。
【兄さん?居る?】
寝てるかもしれないと思って小声で呼びかけてから部屋に入ると

「赤い顔をして兄さんがぐったりしてたんです。」

「それで病院へ!?」
「はい。軍病院には夕診が無かったので救急外来にかかったんですが、すぐに検査をしてくれて、そうしたら…」

【インフルエンザ菌とクラミジアと思われる病原体の基本情報が見つかりました。】
【それって、酷いんですか?】
【病原菌自体はどうって事無いんですが。そのカタチがどうも自然界に無いような‥。そうだ!新種かも!大発見】
当直のドクターが興奮しちゃって、専門用語話し出して困ったところへ
【ドクター、ウィルスメールの新患着たって!?って、アルフォンス?】
【ハボック少尉!?え?ウィルスメールって‥!?】
ハボック少尉がおみえになりました。
【病気を手紙で送る悪質なのが流行っててな。お前さんはどうして?】
【急患で着たエドワード・エルリックさんがどうやらその感染者のようです。それで検出されたインフルエンザ菌とクラミジアと思われる基本情報が凄くて!】
僕が口を開く前に当直のドクターが喋り出して
クラミジア〜〜!?性病が何で?あ、もしかしてエドワード!隅に置けねぇガキだったわけかぁ。】
でも、ハボック少尉はクラミジアの名を聞いた途端、ドクターを無視して僕の肩を叩くと
【まぁ、兄ちゃん生身だしな。だったら分ってやれ。】
【それって!だって、兄さん‥。そんな……、ウィンリィは‥】
【誰を好きになるかは様々だ。そのウィンリィちゃんには気の毒だが、エドワードが別に好きな女が出来ても仕方ないし、あるいはウィンリィちゃんへの思いが募ってとりあえず手近なところで手を打ったのかも。】
【手近なって、それじゃウィンリィにもその女の人にも失礼だよ!】
【お子ちゃまだねぇ〜。そんなこっちゃ立派な大人にはなれないぞ!?いいか?そういう商売をして必至に生計を立てている女神の御手伝いをするんだぜ!?悪いこっちゃないさ。エドワードも男だったって事なんだよ。】

「少尉は指を立てて力説して下さったんですが、僕、なんか納得しきれなくて‥。兄さんにも、聞けなくて‥。心が狭いのかな!?あぁ‥単に鎧の僕ではそんな感覚が無いからなのかも」
淋しそうに呟いたアルにホークアイは席を立って近付くと、屈んで顔を覗きこんだ。
「納得されても女としては困るんだけど。」
ホークアイが優しく笑ったので、アルも顔を上げた。
「それを理解する事が大人なんでも男なんでも無い。それらに対し目を背ける事無く考える事が大切だと思う。たしかに売春でしか生計をたてられ無い人も居るけど、病気の蔓延を考慮するとそれは経済政策が悪い事になる。売春を手助けする事が助ける事ではなく、売春しなくて良い社会を作る事が本当の意味での大人じゃないのかしら。」
ホークアイは姿勢を正すと、撃鉄を起こした。
ガシャンと冷たい音が響く。
「あの、中尉?」
アルが少し椅子を引いたそこへ、ノック音に続いてドアが開いた。
「遅くなりました〜あ?」
「ハボック少尉、クラミジアは今でこそ性病の1つに上げられますが、昔は目の病気で有名な原虫です。軽はずみな事は言わないように。」
ホークアイの銃口が額に当てられる。その冷たさに、ハボックは竦みあがった。
「それから、浮気が男の甲斐性なんて、いかにも男の理性は感情に負けてますとと言うような情けない事を堂々と言わないよう。貴方がそのような人で無いと知っていますが、冗談でも口にする事では無いでしょう!?浮気の許容は個々の管理問題であって、男性・女性といった大きな枠組みに適用する事は侮辱と同じです!」
「はい、済みません。以後気をつけます!」
「それから、アルフォンス君。」
二人の緊迫感溢れるやり取りに眺めてるしかなかったアルも、急に声をかけられて直立した。
「はい、中尉。」
「君の場合まわりに危うい人が多いので、丁度良い機会だから人に戻った時の為にも性感染症について学びましょう。いいわね。」
直立不動の二人は、言葉無く頷くだけだった。


その頃、隣りの部屋では
ぐそ〜、アルに゛会わせろ〜
ベッドに縛り付けられた鋼の錬金術師が、掠れた声をあげていた。
「うるさい!静かに寝とらんか。」
その横では焔の錬金術師が眉を顰め半眼状態で横になっていた。
アル〜、誤解だ〜。兄ちゃんは疚しい事など1つも
「どうだかな。」
ギロリと金眼が危ない色を湛えて、横を向く。
どう言う意味だ。
「そのままの意味だが?不純交友はしていなくとも、アルフォンス君に対し、疚しい行動をしたんじゃないのかね?鋼の。」
疚しいって、俺はただッ‥、ただ手紙にアルの署名があったから。アルから手紙を貰うの、初めてだったし、口で言えない想いとか、書いてあるかと思って‥
「だが、実際には書いてなかったのだろうが。」
ムッとした声でロイが切り込むのに対し、エドは消え入りそうな声で呟いた。
アルの手紙だと思ったら、俺‥
そこで、誰に話しているか我を取り戻したエドは口を噤んだ。
『胸がいっぱいになって、跪いて感謝の接吻を手紙にしたなんて‥勿体無くて言えるか!』
アルの事になると恥より独占が先に立ってしまう、一途なエド兄ちゃんである。
その様子をチラリと眺め
『道を踏み外さないよう、大人である私が指導してやらねば!』
ロイが拳を握るそこへ颯爽と現れた看護師が、二人の前に手紙を差し出した。
差し入れ御持ちしましたぁv
「「」」
途端、童心に戻るふたり。揃って手を差し出した。
バンッ
手を伸ばす二人が手紙を受け取るその前に、病室の扉がぶっ壊れる。
何してるの?兄さん!?
「え?いやこれは‥」
懲りませんね、大佐。
「違ッ、この・この看護師が怪しいから捕まえようと‥本当だ!だから銃を下して‥」
ホークアイの銃口はどう見ても看護師じゃなくロイを向いていて、身を起こすとロイは両手を振った。弾みで点滴の管が外れる。
「え〜どうして分っちゃったのさ」
看護師が小首を傾げる。
「大佐が看護師から手紙を渡された≠ニ言ってみえたので、念の為盗聴器を付けていたのよ。」
「信じてくれてたのか、中尉。だったら銃を下してくれ」
信じた、というより看護師がウィルスメールを配達した場合、その誘惑に負けると思っていたホークアイは冷ややかにロイを見据えると銃口向けたままで、後方に向かって叫んだ。
「ハボック少尉、何してるの?早く捕まえて!
「いけね。」
呆気に取られるハボックが我に返るより早く、看護師は逃げ去った。


「で、結局何をして感染したの?兄さんは。」
根性で退院したエドを迎えた言葉。
誤解だ!アルッ。俺はただ、手紙にkissをだな。」
「誰からの手紙?」
「そ・それはだな‥」
赤くなって口篭もるエドに、アルは溜息をついた。
「純愛だね、兄さん。」
おまっそれっ‥」
沸騰した様子で言葉と詰らせるエドに、アルの空気が優しさを纏う。
「兄さんはさ、母さん、よく見てたから、女の人泣かしたりしないって信じてる。それならそれで良いよ!?誰を好きになるかは仕方ない事だもん。ウィンリィだって分ってくれるよ。」
アルはウィンリィの事を言っているのだが、もちろん兄ちゃんは自分に好いように取る事にした。
「そっか、いいんだな!?」
「うん。‥‥、って兄さん?顔、緩んでるよ!?この手は何?兄さんッ?」
「だから、良いんだろ!?
「良いって‥、兄さん?兄さんっ!!

その頃軍の片隅では
「おや?これは‥」
アームストロングが手紙を片手にヒゲを捻っていた。

worm(ワーム)。かつて映画にもなった足を持たないニョロンとした彼ら。ミミズ君は土を耕し、蛭どんは他生物の生血を吸ってくれる(中国発症の医療にあるし)。それがいまじゃ検索するとnetwork上によく出現するご迷惑なヤツらの総称に‥。
一方virus(ウィルス)はnet上より3次元の方が怖いらしく、検索では一発で出ます。4類感染症のインフルエンザと違い、インフルエンザ菌の方は常在菌ですがウロボロス組みによってキメラ化している、それを鑑識が気付かぬはずは無く、ロイ達はモルモットにされてるんでしょうねぇ、きっと。お気の毒な(笑)。

さて、ではエルリック兄弟の騒動へ(笑)

不純交友しているか、エドの私生活は不明です(笑)。兄さんが鎧の弟に何したかも不明です(爆)。2004/04/25