2月15日の日記「ごめんなさい」

悪い事をして注意されてるときのひなさんってのはとにかく素直じゃないんですよ。
話している相手の顔をまともに見ようとしないし、「ゴメンナサイ」も言えません。それどころかまともに返事さえせずに拗ねた態度をとります。

一方の僕は、子どもの頃から末っ子でぼんやり育ってきたせいか、よほどの事がない限り腹を立てることがありません。だから、ひなさんに注意するときは、冷静に語り合うというスタイルになるのですが・・・。


「失敗してもごめんなさいって言える子はいい子なんだよ」
「・・・・」
「ホラ。ごめんなさいって言えるでしょう?」
「・・・・」
「ひなくんは、いい子じゃないの?」
「・・・・」
「横向いてないでこっち向いて話をききなよ」
「・・・・」

謝れない拗ねた息子と、怒りを忘れた叱れない父親。
いつまでも、かみ合わないふたり。

「お父さんらしく時には怒ったりすることも必要なんだよ!」
業を煮やしてみきさんはそう言うけどさ。本当は怒ってなんかないのに、形だけ怒ってるフリをするのもウソついてるみたいで嫌じゃん。そもそもそんな芝居がかったことができるほど器用じゃないんだよ。

みきさんは自分の感情をストレートに表現できるものなあ。ああ、羨ましい、羨ましい。でも、悪いことをしたときに「謝らない」「人の話を聞かない」「違う事をしてごまかす」ってのは、明らかに君からの遺伝だぞ。

◆       ◆       ◆

さて先月のとある日曜日、例によってハウジングセンターの「ウルトラマンショー」を見に行った僕たち。ところがショー後の恒例の握手会の行列の途中でひなさんに睡魔が襲ってきたようです。本当のところ叱られてるときの態度よりも、眠いときのひなさんの方がぐずる、暴れる、わめくで理不尽にタチが悪いのです。
この日も「だっこ、だっこ!」と始末に負えません。

「ウルトラマンの前でそんな格好悪くていいの?」
「だっこ!」
「ホラ、いつものウルトラのお姉さんだって待ってるよ」
「だっこぉ!」
「もう大きいんだから抱っこなんてできないよ」
「だぁっこぉ!」
「強くて優しい子はウルトラマンになれるってお姉さんも言ってたでしょ!
 このままだと、ウルトラマンになれないよ。いいの?」
「・・・・」
「・・・じゃあ、もう握手もしなくてもいいんだね!」
「あくしゅ しない!!」

でも結局握手はした。

しかし、握手会が終るとまた機嫌が悪くなり、泣きわめきながらもようやく帰りの車に乗せたけれど状況は変らず、ついには暴れた勢いでひなさんの頭が僕の顔を直撃して唇から出血。さすがに一瞬「まずい」という顔をしたものの、結局最後まで謝ることなく泣き寝入り。

さすがに、これはこのままにしておく事はできません。

◆       ◆       ◆

とりあえず家に連れて帰って、相変わらず怒ってないけれど、今回は妥協はしなという覚悟を胸に目を覚ましたひなさんと向かい合います。

「ひなくんは、さっき何をしたか憶えてる?」
「・・・・」
「怒ってないから、ちゃんと謝ってくれるかな?」
「・・・・」
「・・・もうウルトラマンショーには行かないからね」
「!」
「だって、さっき『握手したくない』って言ってたじゃん」
「・・・・」
「もうウルトラマンの話はしないし、テレビもみないから」
「やだ!!」
「だって、好きじゃないんでしょ? 握手もしたくないんだし」
「いやだ!!」
「ゴメンなさいって思ってるの?」
「・・・
(無言でうなずく)
「じゃあ、ちゃんと謝らなきゃ」
「ゴメンナサイ」
「誰に何をゴメンナサイなの?」
「・・・」
「じゃあ、『ゴメンなさい』のお手紙を書いてください」
「!」
「お手紙は3つ書くんだよ」
「!?」
「一枚は僕に、もう一枚は車を運転して連れて行ってくれたお母さん(妊婦)に
 もう一枚は『握手したくない』って言っちゃったウルトラマンに」
「・・・・」
「お手紙書ける?」
「・・・うん」


こうして書かれた3通の手紙

「何て書いたか読んでみて?」

『おとうさんへ わがまましないから またあそぼうね ごめんね』

『ままへ きょうはごめんなさい またつれてってね』

『ウルトラマンへ ごめんなさい いいこになって またショーにいきます』


「ハイ、これでちゃんと謝ることができたね」

「うん!」

重苦しい雰囲気から開放された瞬間から、いきなり元気を取り戻すわが子よ。
「こんどのショーは2月10日だって!!」

時間をかけて納得させたつもりなのに、続かない反省。なんかムカつく(←あっ、怒ってる)。結局はウルトラマンを人質に謝らせた訳だから反省が薄いのは仕方がないのかもしれないけど、このあたりの切り替えの早さも間違いなくみきさんの遺伝だよな。


で、結局2月10日のショーにも出かけてしまったりするのだ。
でも、反省文書かされたのがちゃんと効いてるらしく、この日は最初から最後までいい子でいました。

◆       ◆       ◆

ところでひなさん、反省文のママの絵すごく上手に描けたね。

うん、丸っこくてとってもそっくりに描けてるよ。