5月18日の日記「モノつくる人に」

「わだばゴッホになる」と名言を叫んで(叫んでない)、ひなさんが将来の夢をウルトラマンから「絵描き」と改めたのは今年の3月のこと。だからと言ってそれからデッサンや水彩、油彩のレッスンに励む訳ではなく、あいかわらず好きな怪獣やウルトラマンの絵を気まぐれに描きつづける毎日。絵描きへの道はまだ遥か遠そうですが、いいじゃん、まだ5歳なんだし。

そんな折のことです。
僕たちが住んでいるのは陶磁器生産が地場産業という伝統工芸のまち。毎年春にはやきものにまつわる恒例のお祭りが開かれます。そこで、わが家3.5人でいそいそと出かけてまいりました。メイン会場となったのは、3月にひなさんが「絵描きになる」という決意を強くした、絵本のワークショップが開かれた例の市民ホール。

この日は超一流のやきもの職人さんたちを招いての実演会が行われていました。

一人目は「いい仕事してますねえ」でおなじみのあの有名鑑定士さんが「これぞ神の手!」と絶賛したろくろ名人です。彼の手にかかれば椰子の実ほどの大きさの粘土の塊から、あっという間に茶碗や大皿、酒徳利に急須など、ありとあらゆる器がすごいスピードで次々と生み出されていきます。まさに神の手!

 

次の職人さんは「狛犬づくり」名人。ろくろ名人に比べるとゆっくりと、しかし着実に高さ1mもの大きさのまるで生きているかのような狛犬を作り上げてしまいます。これまた素晴らしい技です。その迫力にひなさんすっかり興味を惹きつけられた様子です(怪獣っぽいしね)。

実は、この狛犬名人さん、みきさんの実家のご近所の方で、しかも昔から家族づきあいしてきた親しい間柄だとか。休憩時間に挨拶に行くと、狛犬を見つめるひなさんに、

「どうだ、夏休みにオジサンのところで狛犬つくりにくるか?」

なんと、名人から直々にスカウトしていただいたのです(スカウトか?)。このありがたいお誘いに即答を避けたひなさんですが(初対面の人に弱いし)、帰り際にポツリと語りました。

「ひなくん、ろくろの人か、こまいぬの人になる」

絵描きはどうしたんだ? もういいの? そう。

「いつもはネンドつくってて、かいじゅうがでてきたら
 ウルトラマンにへんしんするんだよ」

職人ウルトラマン!? それはまた斬新な設定だねえ!

陶芸にしろ絵描きにしろ、自己表現の手段としてモノづくりに興味を持つことはいい事です。上手い下手は二の次でいいから、ひなさんにはこのまま「創造する喜び」を知る人になって欲しいものです。きっと人生がひとつ豊かになるから。密かにウルトラマンになるという夢が復活してるけど、それはまあ、いいや。5歳だし。

そんな、ささやかな親の願いとは直接関係なく、時間があまったので会場の隅で別の陶芸家さんの指導により行われていた狛犬づくりコーナーに参加するひなさん。

途中、隣国で話題の遊園地にいそうな何かによく似たキャラクターにみたいになっていた時にはどうなることかと思いましたが、おお、最後までつくって焼いてもらったらそれなりのものになったじゃないか。

 

あと、別のイベント会場でお皿の絵付けにもチャレンジ。

 

やはり、自由に任せるとウルトラマンになってしまうんだね。

こうやって見ると、絵描きを目指すにしろ、職人を目指すにしろ、ウチのまちはモノづくりの文化の長い伝統がある恵まれた土地だという事を実感します。

イベントやお祭りの日でなくても、こうした体験ができる場所は結構たくさんあります。ご興味のある方、お近くにお立ち寄りの方はぜひ遊びにきて楽しんでいってください。


イベントの日の夜に書いたひなさんの絵日記。

「こまいぬめいじん すごーい!」
だって。
そんなに感動してたんだったら、名人とお話したときにもっと愛想よくしてくれればいいのに。