7月7日の日記「おまじない」

『私たちに最も身近な「呪(しゅ=まじない)」「名前」である』
というセリフが、映画「陰陽師」中にあるそうです。なるほど、どんな種類のモノであれ「名前」には、「こうありますように」という名付ける者のさまざまな「願い」が必ずそこには込められている、まさに「おまじない」です。


お店の名前:「お客さんがたくさん来ますように」
食品の名前:「いかにも美味しそうに感じてもらえますように」
怪獣の名前:「強敵らしい迫力あるイメージが伝わりますように」



これが「わが子の名付け」となると親の「願い」「夢」「人間性」「人生観」などなど、さまざまなものを託して、それを一生背負わせる事になる、実に重い重い「おまじない」となる訳です。

わが家の場合、生まれてきた子どもと実際に顔を合わせ、その印象から名前を考えはじめるという流儀ですから、「おまじない」を考える時間は出生届の提出期限である2週間しかありません。また、日本語の「語感」を生かした名前にしたいというのも、ウチの名付けの「ルール」です。

5年前は、生まれてきた子がまとっている、何やら「のほほん」とした柔らかい雰囲気から「ひなた」という名前にすぐに到達することができました。そして今のところ、「ひなた」はその「おまじない」に込めた「願い」の通りに育ってくれていますから、今回もまあ大丈夫でしょうと根拠もなく思っておりました。

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そして6月26日、午後3時8分。
待望の第2子、ザクロさんとの対面の時を迎えました。

   ザクロさん(生後1時間)

第一印象で感じたのは「生命力」
ウチの家族に「強そうな」子どもが生まれてくるとはビックリじゃないか。

このいかにも強そうな子に、男女共同社会の到来を見据えて、あえて「男らしさ」を排除した名前の「ひなた」と兄弟らしいバランスの取れた名前をつけねばなりません。極論ですが兄が「ひなた」で、例えば弟が「剛蔵」だなんて選択はあり得ないでしょう。このバランス取りが、第2子の名付けの最大のハードルとなったのです。

思いついた名前をみきさん(入院→実家)にメールで送るたびに「女の子みたいで、しっくり来ない」とダメ出しが返信されてくることの繰り返し。そうだよなあ。ザクロさん強そうだもんなあ。でも、柔らかい語感の名前をつけたいんだよなあ。そんなやり取りをしているうちに日にちは刻々と過ぎていきます。

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やがて生後10日目を迎え、いよいよ追い詰められつつある状況の中で、これまでに考えついた名前をリストにして眺めていました。すると中にひとつ、何やら「力」を感じる名前があることに気がつきました。その名前を心の中で繰り返して読むたびに、本人の持つ「雰囲気」「名前」がいろいろな角度から結びついていき、そこからいろいろなイメージが湧き上がってきました。

これは5年前、「ひなた」という名前が降ってきたときと同じ感覚です。
その「ひなた」とのバランスもいい感じです。

「これだったんだ!」と、さっそく、みきさんに電話をすると、
「いいんじゃない?」ってどうしてこんな大事な決断をそんなに軽く。
「だって、決めたらもう変えるつもりないんでしょ」

・・・ はい。そのとおりですね。

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みきさんに共感してもらえた所で、次は両家のじいちゃん、ばあちゃんへの報告です。
ひなさんの時は「もっと普通の名前がいい」とウチの父ちゃんから難色を示されたので、その対策として名付けの由来を紹介するプレゼンテーションシートを作成しました。これが効を奏したのか、「ひなた」で免疫が出来ていたのか、今回は意外なほどスンナリとOKを貰うことができました。ところが・・・!

「ちょっとまって!」
いよいよ赤ちゃんの名前が決まりそうだという話をしていたところ、思わぬところから異議申し立ての声があがりました。

「ちゃんと みんなではなしをしてから きめるの!」

発言の主はなんとひなさんです

今回の名付けはみきさんとメールや電話のやりとりで進めてきました。しかし、同じ家族なのだから、自分も新しい家族の名付け作業に加わる権利があるというのが、ひなさんの意見です。実に正論です。

そこで非礼を詫びながら、「弟」の名前の意味をごく簡単に説明したところ、

「じゃ、それでいいよ」
と、実にあっさり納得してくれました。スジさえ通せば文句は言わない。ひなさん、実に見事なアニキっぷりです。アニキの意味が微妙に違う気もしますが。ともあれ、これで本当にすべての障壁がなくなりました。

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こうして、皆の祝福とともに決めることができたわが家の第2子の名前。
じいちゃん、ばあちゃん用プレゼンシートに記載した「おまじない」の内容とともに、皆様にもご報告させていただきます。

名付け・プレゼンシート
名づけの狙い 耳にしただけでその「意味」をイメージすることができ、誰にでもすぐに覚えてもらえるような「個性ある名前」をめざしました。
名前に込めた想い たくましく「生きる力」を持つ人に育つようにとの願いを込めています。また、「柔らかな響き」の呼び名とすることで、親しみやすく協調性のある人柄となるようにとの思いも表しています。
漢字の意味 漢字としてあてた「生来」という言葉には、「生まれ持った性質」、「生まれてから今まで」の意味があります。本人が持つ能力、魅力、才能をそのまま素直に伸ばしていくことと、生まれてから経験を日々、積み上げていきながら生きていく様子を象徴しています。
呼び方・愛称 ・ いく
・ いくちゃん 
・ いっくん など、呼びかけやすい愛称が想定できます。


「生来(いくる)」

それが、わが家の新しい家族の名前です。

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7月7日の七夕の日。退院以来みきさんの実家でお世話になっていた「いくるさん」が、初めてわが家にやってきました。

「いくるさん」は、どんな環境でも実によく眠ることができる落ち着いた赤子で、早くもそこはかとなく「大物感」を漂わせています(親馬鹿的解釈)。ひなさんは待ち焦がれていたのに、一日中ほとんど目を覚ますことのない「弟」に、ちょっぴり拍子抜けしながらも、やはり嬉しくてたまらないらしく、

「いくるく〜ん、おにいちゃんダヨ〜♪」 と、

手を握ったりしながら、楽しそうに「いくるさん」に話しかけています。

  

みきさんは相変わらず、マイペースの本能育児。
そしてそんな家族の様子をこうして記録し続けていく僕。

そんな風に、三者三様に相変わらずのわが家に、新たに加わった今は眠れる「いくるさん」が、どんな変化を呼び込んでくれるのでしょうか。

ひなさんならずとも本当に楽しみであります。