9月30日の日記「奇跡のバースデープレゼント」

今年になってから、「えかきになる」「こまいぬつくるひとになる」「ろくろの人になる」「まんがをかく」などなど、なんだかインドア方向に創造意欲を燃やしているひなさんでしたが、9月下旬のおばあちゃん(みきさんのお母さん)の誕生日に「ケーキをつくりたい」と言い出しました。

「くだものとクリームいっぱいのせて…」などと早くから構想を練りはじめるひなさんでしたが、みきさんとしてはケーキつくるのが面倒だし、おばあちゃんはおばあちゃんで、「来年が節目の年だから、そこで盛大に祝ってもらうので今年はお祝い無しでいいよ」という、それぞれの思惑が重なって今年はパーティは控えめに、ケーキは市販のもので、という方針が大人の間で決定されました。

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「えぇ〜! ケーキつくりたい!」と、諦めきれないひなさんに、
「今年はおばあちゃんにありがとうの絵を描こうよ!」と提案しました。
「それも、幼稚園で描く絵と違って切り絵にチャレンジしてみよう!」
 

「チャレンジ」という言葉に前向きに反応したひなさん。さっそく日曜日に近所のスーパーでベースとなる画用紙と、色紙を各種買い揃えました。

 画材の数々


そして次の日の午後、仕事中にみきさんから「ひなくんが切り絵を始めたがって仕方がないの。でもどうやってつくればいいの?」と電話。「いきなり切りはじめるんじゃなくてまずは、下書きを書かせなさい」と返事。そしてその晩、家に帰るとひなさんはもう寝ていましたがテーブルの上にはもう下書きができていました。

おばあちゃんに花束を渡すひなさんの絵。デザインや構図も自分で考えたのだそうです。まわりにハートやお花を散りばめ、そしてひなさんの後ろにあるのはリンゴの木だそうです。なんで? まあ、おばあちゃんの顔はそんなに似てないけど、これなら何とか形になりそうだね。

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そして次の日、またみきさんから電話。「切り絵ってどうすればいいのよ?」 だから、顔や身体は適当に下書き書いて切ればいいでしょう? 問題は髪の毛だからね。お母さんはパーマかけてるから、黒い紙を適当な大きさで丸く切ってバランスを見ながらペタペタと貼り付ける。ひなさんの髪は同じく黒い紙を「バナナ」の形に切って貼り付けること。以上。


ラジャー!

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そんな、いい加減な説明だったのですが、また、ひなさんは寝ているであろう時間に帰宅すると、昨日と同じテーブルの上におとぼけ親子が作った「奇跡の作品」が輝きを放っていました。

この日記をご覧の方は、ほとんどおばあちゃんに会ったことがない方ばかりでしょうから、この絵を見た時の感動を伝えられないのが残念でなりません。なにしろ、ここに描かれているおばあちゃんがこの上なくシンプルな造形ながら、ビックリするほどソックリに出来上がっているではないですか。ひなさんの自画像もなかなかのものだね。

そして、この絵を受け取ったおばあちゃんは、「うわあ! そっくり!」と、それはもう期待以上に喜んでくれました。「でも、お肌つるつるで30年前の私だわね」って照れくさそうにおっしゃいますが、30年前からそのパーマだったんですね。そして、額に入れて部屋に飾ってくれました。いや、おばあちゃんの写真をまともに載せられないのが、かえすがえす残念だなあ。

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その反応に満足したひなさん。

「あまった いろがみで また なにかつくっていい?」

と、またまた内向きに創作意欲を燃やすのでした。
まあ、そうやってモノづくりを楽しんでくれるのは嬉しいけど、「絵描き」でも「こま犬の人」でも「ろくろ師」でも「漫画家」でも「切り絵師」でも何でもいいから、一つでも本格的にモノにしてくれたらと願わずにはいられません。